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死を全うする 環境で心のケア 凋落の人生

人々よ。


山谷というと何を思い浮かべるだろうか。
朝から飲んだくれてる日雇人達が蠢く街だろうか?
世代によっては明日のジョーか。

本書では、山谷のドヤ街にある、行き場のない人たちが寄り添うホスピス「希望のいえ」で日々を送る人々のノンフィクション。

中には元731部隊員、元ヤクザ、元板前、年収数億を稼いでいた経営者など。

皆、誰一人として望んできたわけではなく、止むに止まれず辿り着いた先がこのホスピス。

元は順風満帆に家庭も仕事も持っていたのに、天災や人災、事故により、凋落する。
いつ誰にでも起こり得ることだ。

このホスピスはあくまでボランティア団体なので、高度医療施設が完備されているわけではないが、住民達は伸び伸びしているという。

病院は治療をするところだが、ここは環境で心をケアしてゆくそうです。むしろそういった多少無骨ながらも、互いに手探りで過ごしてゆくことが良いのやもしれない。

本文中にも、延命措置か安楽死を選ぶかについて触れられていたが、個人的にはとても同意出来る内容が記されていた。

最後の時間をどう過ごすか、他人に看取られながらどのように旅立ってゆくのか。命を救うのではなく、死を全うさせる。

死を全うするってのは、簡単なようで難しいテーマだな。

超高齢化社会になり、これはモデルケースになって欲しいと思う。億ション並の超高額介護施設ではなく、こういった「希望のいえ」のような施設が民間でなく公立で出来たら良いね。

しかし、こうして読み終えると、かつての昭和時代の住む街に商店街だけと、回覧板が回ってるような時代ってのは、ある意味、孤独死ってのはなかったんだな。誰それさんちの爺さんとこ今日は新聞取ってないから、倒れてるかもしれないから見てこい!なんて具合に。

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