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遺贈による所有権移転

こんばんは。
あっという間に12月となりました。
1か月ぶりとなってしまいました。

遺贈の登記、初めてしたのですが、試験で学んだところが頭からすっぽり抜けておりました。
初めて知ったような感覚(?)となりましたので、書き留めます。

1.ケース


 被相続人Aが残した遺言には、「全財産をBに対し包括して遺贈する。遺言執行者は、司法書士Cとする」旨の定めがある。この遺言にしたがって、遺贈による所有権移転の登記を申請する。なお、Bは相続人以外の者である。

2.遺贈とは


民法第964条
 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

 遺贈は、遺言によって自己の財産を無償で他人に与えること。
 遺贈を受ける者は、相続人でも相続人以外でもよい。

・包括遺贈と特定遺贈
包括遺贈:遺産の全部または一部を一定の割合(例えば、持分3分の1や50%など)で示してするもの。
特定遺贈:特定の具体的な財産を与えるもの。(例えば、不動産甲をBに遺贈するなど)

包括遺贈の場合、相続人と同一の権利義務を有する(民法9904条)とされるため、包括受遺者は相続人と同じように扱われる部分がある。
(これは、また改めて取り扱いと思います。)


3.相続登記との違い


 (1)共同申請であること
 相続登記の場合は、相続人が単独で登記申請をすることができるが、遺贈を登記原因とする場合は、受遺者と遺言執行者(遺言執行者がいない場合は相続人の全員)の共同申請となる。

 ※改正(不動産登記法第63条3項・令和5年4月28日までに施行予定)
 ただし、相続人に対する遺贈の場合に限って、受遺者が単独で申請することができる。

共同申請となるため、次の書類が必要となる。
・亡登記名義人の登記識別情報(権利書)
・遺言執行者又は相続人全員(登記義務者)の印鑑証明書

今回は、権利書を紛失していたため、代わりに事前通知制度を利用しました。事前通知は、遺言執行者あてに行われます。

 (2)登録免許税率
 相続登記のときの税率は、1000分の4であるが、遺贈の登記のときの税率は、1000分の20となる。
 ただし、相続人に対する遺贈の場合は、1000分の4となる。


4.登記申請書


登記の目的 所有権移転
登記の原因 令和4年11月1日遺贈
権 利 者 B
義 務 者 (亡)A
      登記識別情報の提供の有無:無し
      登記識別情報を提供できない理由:
      失念のため、事前通知を希望する。
添付情報  登記原因証明情報
      印鑑証明書
      住所証明情報
      代理権限証明情報
課税価格  金10,000,000円
登録免許税 金200,000円
その他事項 事前通知は、遺言執行者の事務所住所宛てを希望する。

※事前通知は、遺言執行者の自宅住所ではなく事務所住所に郵送してもらうよう記載しておく。

5.登記原因証明情報は何か


 以下のものを添付して申請しました。(過分なものがあるかもしれないです。)
 ・遺言公正証書正本
  自筆証書遺言の場合は、検認したものが必要となる。(法務局の遺言書保管制度を利用した場合を除く。)
 ・遺言者の除籍謄本
 ・遺言者の戸籍の附票又は住民票の除票(同一性証明のため)
 ・受遺者の戸籍


6.添付書類


(1)登記原因証明情報
 前記のとおりです。

(2)登記識別情報(権利書)
 共同申請のため、遺言者が有していた登記識別情報が必要となる。失くしている場合や探しても見つからない場合は、事前通知制度を利用することになる。

(3)住所証明情報
 受遺者の住民票の写しが必要となる。

(4)印鑑証明情報
  遺言執行者個人の印鑑証明書が必要となる。司法書士会が発行する印鑑証明書ではなく、市町村で取得する印鑑証明書が必要である。

(5)代理権限証明情報
 受遺者および遺言執行者から司法書士への委任状が必要である。
遺言執行者に関しては、個人の実印の押印が必要となる。
 遺言執行者の選任を証明するため、遺言書または家庭裁判所の選任審判書が必要となる。


 事前通知は、登記完了まで通常よりも日数がかかります。急ぎの登記完了を希望する場合は要注意です。

 ただ、故人の権利書など書類を探すのは一苦労ですし、同居していなかったりしたらもっと大変です。

 権利書の確認は可能であれば生前に行うのがいいなと思います。


お わ り




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