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地方公共団体を債権者とする抵当権抹消の登記嘱託

おはようございます。こんにちは。こんばんは。磯谷です。

1.事案概要

 相続登記のご依頼を受けた際に、登記情報を確認すると乙区に抵当権が、、、しかも、「抵当権者○○県」、、、
抹消されていない抵当権が登記簿に残っていることはよくありますし、税務署が徴税を担保するために抵当権を設定することもありますが、地方公共団体名義の抵当権は初めて見たので驚きました。こんなこともあるんですね。

 ただ、抵当権設定は昭和○○年であったので、完済されている可能性は高く、完済されていなくとも時効消滅していることも考えられます。

【不動産登記簿】はこんな感じです(簡略化してます)

2.ポイント

〇登記申請ではなく、登記嘱託になるということ
官庁又は公署が権利者又は義務者となるときは、「申請」ではなく「嘱託」といいます。

〇登記義務者の登記識別情報(登記済証)の添付を要しないということ
不動産登記法第22条本文(登記識別情報の提供)の適用がないので、登記識別情報の添付は要りません。

〇登記権利者の委任状は不要ということ
登記権利者は、官庁又は公署に対して「登記嘱託してほしい」と請求するのみで足り、登記申請人になりません。

 この点、当職も勘違いしていた部分があり、官庁に対して、「登記嘱託してください。」と伝えれば登記手続きをすべて官庁でしてもらえるものと思っていました。条文上はそう読み取れます。しかし、そうは行きませんでした。結局は、当職(権利者側)で委任状と解除証書を作成し、それらに官庁の印鑑を押印してもらい、当職側で登記嘱託する、というものでした。聞けば、これまでそのように運用してきたということでしたので、今回は委任状と解除証書を頂き、当職で登記嘱託することにしました。

不動産登記法
(官庁又は公署の嘱託による登記)
第116条 国又は地方公共団体が登記権利者となって権利に関する登記をするときは、官庁又は公署は、遅滞なく、登記義務者の承諾を得て、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。
2 国又は地方公共団体が登記義務者となる権利に関する登記について登記権利者の請求があったときは、官庁又は公署は、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123_20240401_505AC0000000063

3.登記申請書記載例

4.そもそも…

 抵当権が昭和時代で古く、登記簿には「○○県」と書いているのみで、どこの部署で取扱いされていたのか不明でした。相続人にも確認をしましたが知っている人はいませんでした。そこで、県HPの県民相談フォームに問い合わせしたところ、どこの部署かをお調べしてもらえました。判明するのに若干の日数はかかりましたが、その後は迅速に対応してもらえました。

なかなか経験の無い業務だったので、備忘録として残しておきます。

最後に、抵当権などの担保権は、返済し終わっていても、申請しないと抹消されずずっと残ります。100年以上残っている抵当権も珍しくありません。それを今、抹消しようと思うと権利が複雑化していたりして、抹消するのに時間と費用がとても高くなる可能性があります。(今回はすんなり出来ましたが…)

抹消登記は返済終わったらすぐにしましょう。

まあ、すぐにする必要性は無いかもしれないけど、後回しにしても特にメリットはありません。知らぬうちに権利が複雑化している場合もあります。この辺のことも、相談時によく話してるけど、次回まとめてみようかな、と思います。時間があるときに。

大雨の海の日にカタカタと書きました。
明日からお仕事頑張りましょう。

おわり。


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