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自分らしさ・感性を守るために大事なこと。

先日「エコスピ」マガジンのこちらの記事で触れたレイチェル・カーソン著書の後書き部分で、為になる、皆さんにもご紹介したい内容がありましたので、今日は「メタスピ」観点で取り上げてみたいと思います。

新装版(2021)「センスオブワンダー」レイチェル・カーソン
上遠恵子訳 新潮文庫

世界的ベストセラーでもあり、日本でも愛読されてきたこの本を、詩的な文章にマッチする美しい写真を添え、4人の先生方の解説を加えた新装版。その中で、大隈典子教授(東北大学/神経科学者)による後書きに以下のようなお話がありました。

『スマホ脳』という著書のある神経学者 A. ハンセン博士との会談から。スマホの小さな画面から得られる様々な刺激により、脳の中では大量のドーパミンが放出されるそうですが、

自然界の美しさを感じて放出されるドーパミンと、スマホやタブレットから得られる刺激によって放出されるドーパミン自体に物質的な違いはない。だが、真っ直ぐな線分にのみ反応する神経細胞が存在することから推察されるように、私たちの脳は自然界に存在する曖昧な形象よりも、人工的でくっきりとした輪郭を見た時に、より強く刺激される性質がある。したがって、デジタル端末の小さなモニタで人の心を惹きつけようと様々に工夫された情報は、脳の神経系に強烈に働きかけ、放出される多量のドーパミンによって、むしろ私たちの注意を散漫にする側面があるのだ。

p133「センスオブワンダー」レイチェル・カーソン 新潮文庫

この性質、現象ゆえに、小さな画面からの強い刺激に強烈に惹きつけられる。けれど、それにより私たちの脳は、その手の刺激を見ている時以外は、ぼんやりする、散漫になる、ということのよう。すると自己防衛力が低下するので、簡単に脳が「ハックされる」とのこと。洗脳などを受けやすくなる、自分自身の考える力や感性が鈍っていく、という。

R.カーソンが幼い甥っ子との触れ合いを通じて自然界の営みを感じる心や感性、自然のメカニズムの素晴らしさについて綴っているこの本に寄せて、特に小さな子供はその手の刺激に晒さないほうが良い、というハンセン博士の見解が紹介されています。

同じような事を、数十年前にテレビが普及した時から、そしてネットに依存する社会になってから、ずっと人々は薄々感じてきたことだろうとは思いますが、それがさらに小さなデバイスに発展し、それでいてコンテンツが編集され刺激的に作り込まれた動画が中心となっていることから、ますます、脳への深刻さが増しているということなのでしょう。

うちの子供はシュタイナー学校でお世話になりましたが、通常の公教育からの転校だったので(4年生の時)、学校、先生たち、保護者の方々の徹底した姿勢には驚かされ、恥ずかしくなることも度々でした..普通にデジタルコンテンツ(教材やアニメなど)に触れてそれまでは育っていましたが、シュタイナー教育では幼いうちは自分で(漫画やアニメどころではなく)本を読むことも推奨せず、親や先生が読み聞かせをする。

自然の中でたくさんの生命に触れて、要するにアナログや手作り、手仕事に徹底した環境の中で、ふんわりとした幼い魂の状態に相応しい優しい刺激だけを与える。シュタイナー教育ができた当時にまだパソコンは存在しませんが、霊視能力があり、意識体で宇宙まで行ってしまうような哲学者、シュタイナーが考えたことなので、人の本質をよく知り得ていたのでしょう。

そういう私も機械オンチでありながら必要に迫られPCの手を借りて仕事をしてきた20年。私の世代は子供の頃にパソコンは存在していなかったので、30年前かな、初めてその前に座った時は、「こんな小さな箱に、自分の集中力を注いで時間が過ぎていくのは、嫌だな」と思ったものです。何やら怖くも感じました。

実際には、ネット社会もテクノロジーも情報収集は出来るし世界が広がるわけだけど、あの日に感じた淡い恐怖心のようなものの意味が、上の解説を読んでいて、理解できました。便利な新しいものに出会うと人間は抵抗するところはあるけれど。それ以上の何かがあったのかも、と。

便利だけど、失うものが大きい。それはこの本のタイトル通り、「センスオブワンダー」、自然や世界に対してワクワクする、無邪気で無垢な心と感性。そしてきっと、産業革命以来、重機械がコンピュータに、それがネットでつながり合い、さらに小型化して小さな端末になり、そこから絶えず強い刺激がやってくるようになった時代。よほど気をつけていないと、大隈先生の仰るように「脳が危ない」「いとも簡単にハックされる」そしてきっと、自分ではそれに気づくこともないのでしょう。

もちろん悪いことばかりではない。テクノロジーの進化に反対というわけではないけれど。愛のある使い方をしていくことが大事だし、製造者はヒューマニズムに基づいていないと、人類をダメにしてしまう流れに加担してしまう。やはりこれからの時代、いかにして自分の「脳」を守るか、が、重要なテーマになっていきそう。

話は変わりますが、
また違った理由で、「皆さん、大きな画面でネット閲覧しましょう」といつも思っています。画面いっぱいを使ってデザインしているので、スマホで見るとただ縦一列に情報が並ぶという結果になってしまうのが、デザインしている立場ではとても残念。

機械オンチを自分なりに乗り越えて、空間デザインと同じようにエネルギー、波長などを意識しながら大きな画面をキャンバスと感じてコンテンツを配置している(自分なりに)つもりだから..

そしてスマホ誕生前に仕事を始めていたため、ページ作りにレスポンシブ対応を自分ができず(笑)かなり苦労しました。元々苦手なところ、必死で何とか見よう見まねでやってきたので(今でも..)タブレットやスマホ視点でサイトを作るのが大変です。文章は長いし。動画は苦手だし。時代に着いて行けていない感じ。いっそウェブ無しで出来る仕事の仕方をしようかな、と考えることも。

アナログ回帰が自分自身のために大事と(スピ界隈では)言われてもいるし… 色々と考えさせられますが、人間としての心と感性を、大事にしたいですね。センス・オブ・ワンダーです。

長くなりましたが、このくらいで。
Love and Grace
Amari