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ウクライナ戦争は世界をどう変えたか 「独裁者の論理」と試される「日本の論理」(前編)

著者の豊島さんはテレビ東京のニュースキャスター。
歴史について面白く解説してくれるラジオ「コテンラジオ」のウクライナ戦争回に出演されており、非常に勉強になったので本の方も読んでみた。
昨年の2月に始まったウクライナ戦争について、関係各国の視点がわかりやすく解説されており、オススメの本。
2022年の8月に出版されているため、最新の情報を知ることはできないものの、ロシアとウクライナ、周辺国の歴史や、開戦に至った経緯がよくわかる。

特に2014年のクリミア併合についての記述は読んでいて胸が苦しくなる。

そもそもなぜ、戦闘もしないまま簡単にクリミアを奪われたのか。単純に言えば、ウクライナ兵がロシア軍に機関銃を向けられたとき、抵抗しなかったからだ。ウクライナ人にとってロシア人はいわば兄弟という認識もあった。兄から銃口を向けられ、全く抵抗できなかったのだという。

Kindle版117/282ページ

この記事の冒頭でも書いたコテンラジオのウクライナ戦争回でも、前線で殺し合っているウクライナ兵とロシア兵について、「例えば2人が戦場ではなく、日本に観光に来てたまたま雷門の前で出会っていたとしたら、言葉もほぼ一緒なので『ちょっと写真でも撮ろうよ』と言い合っていたかもしれない。戦争というのはこの世で最大の理不尽なのだ」という内容のことをおっしゃっていたのが印象的だった。

この本を読み終わった後続けて読み始めた本が、逢坂冬馬の「同志少女よ、敵を撃て」という小説だ。この本は第二次世界大戦中、ナチスドイツと戦ったロシアの少女、セラフィマを主人公とする物語である。
セラフィマはロシアの小さい村で母と一緒に猟師をしているが、あるとき畑を荒らす鹿を撃とうとして一瞬フリーズする。鹿の隣に小さい子鹿がいたためだ。
あらすじとして、主人公はロシア軍に入りスナイパーとして前線で戦うことになると知っていたため冒頭のこのシーンだけでもう辛くなってしまった。
戦争が始まると、子鹿を見て狩りを戸惑う少女でも銃を持って人を殺さなければならないのだ。

30歳にして戦争の理不尽さ、辛さを改めて感じることができたが、同時に戦争の複雑さについても学ぶことができた。
例えば今回のロシアによるウクライナへの侵攻について、ロシア国内では81%が賛成している。
また、国連での会合においても、ロシア軍の撤退を求める決議に「賛成しなかった国(棄権も含む)」は、中国、インド、パキスタンなど思っている以上に多くあり、そうした国々の人口を合計すると、世界人口のほぼ半数になるという。

強引に言えば、世界人口の半分はロシアを非難していないのである。

Kindle版163/282ページ

また、遠く離れたウクライナだけでなく、日本の近くでも戦争が起こるリスクが高まっているという。具体的には中国による「台湾統一」だ。
長くなったので記事を分割し、後半で台湾統一について書きたい。

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