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【ライブレポ】人類の進化の可能性に関する試論

※ただのライブレポです。


1. 「導入」という名の蛇足

さて、大好きなグループのライブに行きました。
「私立恵比寿中学」というグループ。
20歳くらいの頃から8、9年くらい追いかけてるので、私の人生の20代はこのグループ抜きでは語れない、と言っても過言ではない。そんなもの、誰も語らないけども。

今回行ったのは4月〜7月にかけて行われるツアーの2公演目・東京公演。場所は東京ドームシティホール。
毎年だいたい同じ時期にツアーをしていて、このグループ界隈ではこの時期のツアーは「春ツアー」と呼ばれる。夏までまたがるけども。

ネタバレを喰らわないように細心の注意を払う、という経験をしたのも人生で初めて。
今までツアーの初日の公演に行ったことがなかったが、セットリストや初日公演の様子の写真はたいていグループのファンクラブか音楽ナタリーに掲載されていた。しかし、今回の春ツアーはなんとなく事前に内容を知ってはいけない気がしたのだ(メンバーのインスタグラムに終演後の自撮りが上がってしまうけど、これはノーカウント)。

ちなみに、昨年12/16と12/17に同グループの節目となるライブが開催されたのだけど、両日行った。両日めちゃくちゃ泣いた。
2〜4月頃に行われた低学年メンバーのフリーライブも行った。これもめちゃくちゃ泣いた。
自分はこの子達を一生好きでいるんだろうなと思った。

そんな矢先の春ツアー。

2. セットリスト

2.1 これまでのライブの構成

このグループの特徴の1つとしてよく挙げられるのが、楽曲の幅の広さ。私は他のアイドルの楽曲をあまり聞いていないから比較はできないけど。かなり幅広いと感じる。
めちゃくちゃPOPな王道応援ソング、脂ギットギトサウンドのトンチキソング、ボカロっぽく歌うの激ムズなもの、メタルよろしくヘドバン三昧なもの、ゴリゴリのダブステップ、ゴリゴリのR&B、1曲の中で目まぐるしく曲調が変わるもの、など。本当になんでもござれ。
もともと聞いたことがなかったけどこのグループの曲をきっかけに聞くようになったジャンルとかもある。
自分達で曲を書くわけではないからこそできることだろう。アイドルはプラットフォーム。

さて、このグループのライブはその幅の広さを駆使して組み立てられるが、大体の構成は以下のとおり。書いている現在の記憶と印象をもとにしているので、実際に統計をとると違うかもしれない。②〜⑦はそれぞれ3、4曲ずつぐらい。

①ebiture(登場曲)
②明るくてPOPな曲群
③より明るめな曲群
④落ち着いた感じの曲群
⑤激しめなアゲ曲群
⑥メッセージ性の強い曲群
⑦アンコール

「大学芸会」と呼ばれる年末頃にある大きめのライブや「ちゅうおん」と呼ばれるコール禁止・ペンライト禁止のライブは、メンバー数名による特別ユニットがあったりソロカバーコーナーがあったり、やや特殊な構成だが、他のライブは概ね上記の通りだと思う。

「まぁ新体制になって初めてのツアーだし、そんなにチャレンジングなことはまだしないだろうから、今回もそういういつも通りの構成だろう。低学年メンバー5人の成長と真山りかさんの復調を見守っていくことになるかな。楽しみだな。」(腕組み)

そう考えていた時期が、俺にもありました。

2.2 今回のライブ

いや・・・普通そんなことあります・・・?ほぼ全曲アゲ曲て・・・
あまりにも情報過多&ハイカロリー。平素の頭脳労働により鍛えに鍛えた脳の認知機能と平素のデスクワークによって削がれに削がれた全身の筋肉を余すことなく使い切り、ただの骨と脂肪の複合体と化したアラサーの私は、理性を失っただけでなく悟性も失ったので「ありえん」の4文字以外が発せない状態。

一口にアゲ曲といっても、個人的な分類では大まかに、

①体がじっくりと熱を帯びていく感じの曲
②ポップで楽しげな普通にテンションが上がる曲
③問答無用でブチ上がらせる曲

の3種類があるが、今回の春ツアーは「8割方②と③!!!残りの2割も①!!」みたいな感じ。
前述のとおり、従前のライブは概ね3、4曲を連続で披露して数分MCを挟むというのを交互に繰り返すスタイルだった。しかし今回はMCも極端に短い。そのうえ激しい曲が多い。しかもメドレーで8曲連続くらいでやってるところもある。

「オイオイオイ」
「トぶわアイツ」
「ほう、しっとり曲抜きセトリですか...たいしたものですね」

いや本当に、正直に言って「これ、3ヶ月も続けられるの・・・?」とメンバーの体調が心配になった。あれをやり切れるエビ中メンバーは流石に体力が無尽蔵すぎる・・・。
こんな体力のラスボスが出てきたら、FFTのウィーグラフ戦かKH1のアンセム戦並みに絶望すると思う。

私は熱量あるレポなんてものが書ける人間ではないので、セトリの詳細とヤバさは他の方のレポを参照されたい。圧倒的熱量で引き込まれます。


2.3 感想(と脱線)

さて、私のレポが他の方のそれを超えることはないので、もはやこの記事を書く意味は皆無。しかし、この記事はもとよりただの自己満足。

そこで、私個人の感想を述べるとすれば、

これだけアゲ曲ばかりを詰め込んでも私立恵比寿中学のライブは「ただただ楽しいという感情だけでは済まされない」

ということ。

エビ中には、メジャーデビューから一気にさいたまスーパーアリーナまで駆け上がった栄光と、そこからの緩やかな(商業面の)下降、反比例するように洗練されていくパフォーマンスと、あるメンバーの不幸など、一言では語り尽くせないほどの波瀾万丈な歴史がある(あまりにも乱暴に過ぎるとの謗りを免れないほど簡略化していますが、ご容赦ください)。
その波の起伏の数と高低差に応じて周囲の環境や反応も、大きく変わったことだろう。
その時々に各人が感じた想いや経験したことが蓄積されている。単なるいちファンでしかない私なんかが察するには余りあるが、その想いや経験がライブの中で昇華される様が垣間見える。
そういう背景を知らない人でも、心を震わされる何かを感じるライブだと思う。

普段のライブであればしっとりした曲やメッセージ性の強い曲もセットリストに入っている。そういう瞬間があることもごく自然。
しかし、アゲ曲ばかりのセトリでこういう瞬間が訪れるということは、単に曲の力だけではなく、メンバーひとりひとりが観客ひとりひとりに想いを届かせ、伝え、その心を震わせる力をもっていることを証している。

個人的にはライブは損得を考えて見るものではないと思っているのであまりこういう表現は好きではないが、エビ中のライブは間違いなく、見て損はない、いや、「見とかなきゃ損」だと思う。
ただただ楽しいだけのライブは他にもたくさんあるだろう。感動するライブも他にもあるだろう。でも、「心が震える」という感覚は、私は彼女達のライブでしか感じたことがない。試しにぜひ一度見てみてほしい。

誤解を恐れずに言えば、おそらくメンバー構成が大きく変わり、新たな目標を掲げている今が1番見ていて面白い時期かもしれない。
過去と現在を引き受け、変化を受け入れ、未来に向けて力を溜めている段階、こんなにワクワクする時期はない。

「最新の私立恵比寿中学が最強の私立恵比寿中学。」

これは昨年末にグループを脱退した柏木ひなたさんが残した名言として、ファンの間でも語り継がれている。
グループの入り口的役割を担っていた廣田あいかさんが脱退した直後、2018年1月4日に6人体制で初めて行ったライブが「伝説」と呼ばれ、以後それを超えることを周囲から期待されるも、なかなか超えることができなかった。メンバー自身の呪縛となった過去。
しかし、それでも最新の私達が最強の私達であると、柏木ひなたさんは涙ながらに語った。
今回のツアーを見て、今のグループがこれを体現しているという声もよく聞く。

残念ながら私はこれに同意できない。無論、過去の特定の時期が1番良かったという意味ではない。
月並みな表現だけれど、全ての時代が「最高」なのだ。過去のどの時代をとっても他の時代に代え難い魅力がある。
ここで全てを語ることはできないので、これを読んだ方は、できれば今からでもグループの歴史を遡ってみてほしい。

その上でなお、今のエビ中が見ていて1番ワクワクする時期であり、その意味で「最高」であると言っておく。
見始めるなら今だ。

3. 個の成長

駄文を連ねている間にかなり脱線したので、今回のライブの話に戻る。
正直なところ、セトリのヤバさに心を持っていかれすぎて、個々のパフォーマンスを具に見る余裕はなかった。
しかし、それでも特に気になったメンバーについてだけ触れたい。
勝手にエモいストーリーを押し付ける悪い癖が出ている。これ以下は最後まで本当に読むに値しない個人的な備忘が続くので、この記事を見た人はここで閉じていただくことを推奨する。

小林歌穂

私自身は、音楽は部活と趣味で齧った程度なので特段耳が良いわけではないが、彼女は全体的に音を外すことがかなり少なくなったように感じた。

これまでは、「この1音だけ音を外す」とかではなくて、「そもそもこのフレーズ全体をキーがズレた状態で歌ってしまっている」ということがたまにあり、非常にもったいなく感じていた。

もしかするとまだ若干ピッチが甘い面はあるかもしれない。
しかし、パーーーーーーーーーーーンと無限に広がる空のようなハイトーンボイス(cf. 今回のセトリにはないが、『感情電車』の2サビ後のブロックの「その空」の部分)と、柔らかく豊かな声による微細なニュアンスの差異を伴ったテクスチャーの感じられる表現が、もとより小林さんの持ち味。少なくとも私はそう思ってる。
後者に関しては、ピッチが若干ファジーでもかえって味になることも多いので、あまり問題ではない(好例の中でも1番好きなのは「ちちんぷい」の2サビ「きーかーないよー」の部分)。
前者に関しても、キーズレ自体がなくなり、天性のハイトーンボイスで綺麗に音を当てて歌い上げる。気持ち良すぎ。

あまつさえ表現力にも磨きがかかっており、中でも「さよなら秘密基地」の最後のパートは白眉の出来。
「女優・小林歌穂」と称されることも多い彼女。彼女の表情(特に目線)は、観客に何か重要な物語の一幕を読み取らせずにはおかない。

桜木心菜

パフォーマンスの迫力がこれまでより1段も2段も上だった。
圧倒的な自信と覚悟というか、迷いのなさ。
もともと歌に苦手意識を持っていた彼女だが、今回の公演では、その迷いのなさが歌にも現れており、かなり良い方向に作用したと思う。

これが何に由来するか考えてみたが、おそらく「武者修行フリーライブ」全5公演を通じて、低学年メンバーの中でリーダーシップを発揮したこと、そして青年誌の表紙グラビアを飾ったことではないか。
これらは、グループを多くの人に知ってもらえるよう、好きになってもらえるよう、先頭に立つ経験という経験である。個人的には、10代の女性タレントに水着グラビアをさせることはあまり良しとしないのだが、こういうところでも活きてくるのだなと勝手に納得した。

昨年9/16の生誕ソロライブ。エビ中の看板があるとはいえ、自分1人でライブを成立させ、観客を満足させることが、当時16歳の女の子にとって相当な困難であったことは想像に難くない。
昨年12/16の柏木ひなたさんの脱退。桜木さんの師とも呼べる存在が欠けることで、彼女にどれほどの不安と、あるいは責任感と向上心を与えたかは計り知れない。
翌12/17、10人でさいたまスーパーアリーナに立つという目標を発表。そこに立ったことがない彼女にとっても、かつて立った彼の地を今のグループの目標として定立することがどういう意味を持つかは理解できていただろう。そのために自分ができることは何か、思いを巡らす日々かもしれない。

それらを経て今年2月〜4月に開催された5本のフリーライブ。低学年メンバーだけで行うこのライブの目的は、グループにとってプラスになるものを5人全員が持って帰ることにあったのではないか。
そこでリーダー的存在にあったのは、5人の中で年長の彼女。各自がこの目的を達成できるよう先頭に立って導くという経験が、彼女にもたらしたものは、彼女個人のパフォーマンスに現れるほど大きかったと思われる。

仲村悠菜

もともとスターダストのアイドル部門ではないところ(女優の部門?)に所属していただけあって、オーディションの頃から発声が良かったと思う。また音を外すこともあまりなかったので耳も良いのかなという印象だった。

お披露目となった昨年12/17のライブでは、歌における声の出し方をまだ掴めていない印象はあった。それでも、初ライブであれだけ歌えれば十分すぎるほどの出来。そもそもそのライブまでの間は、発声の基礎レッスンをしていなかったらしい(今年3/1のスタコミュ配信を参照)。恐ろしい子・・・!
その後、今年2〜4月の武者修行フリーライブを見ても歌がかなり上達していることは窺えた。

それから間もない今回。フリーライブの頃とも段違いのクオリティだった。
かなり声が通る。そして言葉が潰れない。もしかしたら現メンバーの中で1番歌詞が聞き取りやすいのは彼女かもしれない。

彼女と共に加入した桜井えまさんは、グループ内でもファンの間でも既に、エビ中の歌の柱となる新たな存在として認識されつつある。
脱退した柏木ひなたさんのパートの多くを桜井さんが受け継いだこと。柏木ひなたさんのメンバーカラーであったオレンジを桜井さんが引き継いだこと。更には、柏木ひなたさんのソロパートであった『手をつなごう』の冒頭部分を、安本彩花さんと桜井えまさんの2人が受け継いだこと。
無粋な推測だが、それらが仲村さんに少なからず焦りや対抗心のようなものを抱かせていてもおかしくない。
しかし、彼女と桜井さんの仲の良さからすると、その気持ちを表に出すことはなさそうだし、オーディションの様子からしても、彼女は黙々と練習に打ち込むタイプに見える。
陰ながら(変顔だけでなく)必死に歌の練習を積んでいるのではないかと思う。

まだ若く、声も幼さが残る。表現力という部分では勿論まだまだ成長の余地があると思われる。種々の配信などを見ている限りでも、かなりいろいろな声色が出せるようなので、歌声に上手く昇華できれば表現の幅も広がるかもしれない。ゆくゆくは歌だけではなくナレーションや声優など声を使う仕事が来るかもしれない。

吉田「お前15歳の少女の成長の速さ見くびんなよ!」
小杉「何で怒られてんねん!」

4. 「あとがき」という名の蛇足

もともと私は柏木ひなたさんと安本彩花さんの2人がいわゆる「推しメン」だった(※1)。ペンライトは両手に1本ずつでオレンジと緑を灯しておき、要所要所で他の色に変える、という対応で足りた。6色(+1)や9色(+1)なら慣れた手つきで対応できた。

※1:個人的には「推す」「推し」という言葉がしっくりきていないのであまり使いたくないが、便宜的に用いる。

しかし、12/17のライブで桜井えまさんと仲村悠菜さんのパフォーマンスを見てしまったら、どうしてもこの2人を推さざるを得なくなった。そしてこの頃から小久保柚乃さんも気になり始めた。
したがって、3、16、17推し、かつ14微推しという感じなのだが(この時点で多すぎる)、そもそも他の6人もめちゃくちゃ大好きで、それぞれが輝く瞬間を見逃したくないので、どう考えても両のまなこでは絶対的に足りない。
人間の体はよくできているなと思っていたが、少なくともエビ中のライブを見るのに適していないという1点においては、まだ進化の余地がある。
近い将来、「永遠に中学生です」等と抜かしカラフルな服を着てペンラを振り回す人類がホモ・サピエンスの進むべき道を示すかもしれない(※2)。

全然締まらないけど、まぁこんなもんかな。
それでは。


※2:昔、ラジオ『エビ中⭐︎なんやねん』の「バー 魔エビの巣」というコーナーの中で、かまいたちの濱家さんが「男は、男性・女性を問わず、人の胸元が見えそうになったときに反射的にそこに視線が行ってしまう。もし6人の胸元が同時に見えそうになったら、その時だけ目が6個に分かれて全部を同時に見る。」ということを仰っていました。それと同じようなことをエビ中のライブ中にできる人類が現れるということですね。だから何なんですかね。

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