HR Technology Conference&Expo2023視察レポート①
オデッセイ秋葉です。今年もHR Technology Conference&Expoの視察レポートを作成してみました。2回に分けて掲載したいと思います。1回目はJosh Bersinの講演内容についてレポートします。
今年も、この時期がやってきた。
HR Technology Conference&Expoが今年もラスベガスで開催される。
(10/9~10/13)
私は2022年に続き、2年連続4回目の参加だ。
今年は、弊社社員2名を加え3名で参加することにした。
視察内容に入るまえに、1年ぶりのラスベガスで感じたことから紹介したい。
1.1年ぶりのラスベガス
★今年11月にF1ラスベガスGPが開催されるらしい
現地の方から、40年ぶりにラスベガスでF1が開催されることになったと聞いた。(11月18日開催済)
以前から、ラスベガスでは来訪者を増やすことに注力しているとの話は聞いていた。
今回私が参加するような各種コンベンションの開催もその一環だが、それ以外にも、2020年にNFLオークランド・レイダース(現ラスベガス・レイダース)を誘致したり、更にはMLBのオークランド・アスレチックスを誘致するために、3万人収容可能なスタジアムを2027年オープンの予定で建設中との情報もある。(2023年11月17日 移転決定との報道があり)
とにかく、ラスベガスへ来てもらって、カジノでお金を使ってもらうことを目論んでいるようだ。
なんでも、ラスベガスのあるネバダ州では一般税収の約半分をカジノ税収が占めているらしく、その恩恵を受けてラスベガスの住民は、日本でいう「住民税」が免除されるメリットがあるらしい。(現地の方談)
それはともかくとして、今回のラスベガスでは、私たちもF1開催の影響を少なからず受けた。
今年11月の開催にもかかわらず、まだ道路を含め至るところで工事をしているためだ。移動にタクシーを利用することが多かったが、工事の影響で車の渋滞が激しく、空いていれば15分程度で到着する場所が30分以上かかることもしばしばだった。私たちには直接関係なかったが、ストリップのメインストリートであるLas Vegas BlvdがF1のコースになるらしく、観光名所であるホテルベラッジオの噴水ショーを行う池の前を含めて、F1用の観客席を作っていた。噴水ショーを目当てに観光に来られた方には、さぞ不便な状態だったと思う。
★謎の巨大な球体が出現
昨年はなかったが、ラスベガスのストリップの中心に、表面に映像が映る強大な球体が出現した。(下記写真)
動画が載せられないので分かりにくいが、表面の映像は動いていて、いろいろなパターンを映し出している。
調べてみると今年9月にオープンしたばかりのMSG Sphereというコンサートホールでのようだ。
またひとつ、ラスベガスに新たな名所ができた。
2.HRTechnology Conference&Expo2023の全体所感
「先に結論」という訳でもないが、今回全体を通じて感じたことを先にお伝えしたいと思う。
(1)生成型AIの急速な普及/浸透
今回参加して強く感じたのは、生成型AIの急速な普及だ。
ある程度は予想していたものの、ここまであらゆるシステムに活用されて
いるとは想像していなかった。
昨年参加した時点でも、AIを活用したシステムは多数出ていたが、検索
や分析の一部にAIを使っているものが多く、AIを活用しているとの実感がわかないものが多かった。しかし、今年は、生成型のAIを活用しているので、AIを活用した結果が、その場で文章等になって表現されるため、非常にわかりやすい。昨年のAI活用とは、次元の違いを感じた。
特に私が個人的に気に入ったのは、タレントマネジメントシステムに組み込まれた、スキル定義やジョブディスクリプションを自動的に生成するAIだ。作成するには、それなりの情報を与える必要はあると思うが、特に日本においては、なかなか進まなかった部分でもあるので、これを契機にスキルやジョブを明確に定義していく方向に進んでくれるのではないかと期待している。
(2) ジョブ定義やスキル定義の重要性の高まり
生成型AIの普及に伴って、なにかとAIを活用するシーンが増えるようになっていく。採用、配置、評価、異動、後継者計画等人事の中核となる業務にも当然関わってくる。これらの業務においてAIを活用して仕事の精度を上げていくためには、データの整備が必要になるのは当然だ。なかでも、ジョブやスキルに関する情報が重要になってくる。これらの情報がなくては、AIを十分に活用できないからだ。日本は、欧米諸国に比べジョブやスキルの定義を整備する進み方が遅いので、ここらへんで、変わらなくていけないタイミングかも知れない。
ジョブやスキルに関する情報がある程度のレベルで整備されていないと、AIを活用したタレントマネジメント等のシステムの新しい機能を活用しきれない。最新のタレントマネジメントの機能が使えないということは、現在のレベルからあまり進化しないということだ。それを避けるうえでも、ジョブやスキルに関する情報の整備は今まで以上に必要になると感じた。
3.Conferenceレポート
いろいろConferenceには参加したが、今年はJosh Bersinの講演について紹介する。
「How AI Will Transform The Market Forever」
(AIはどのようにマーケットを永遠に変革するのか)
Josh Bersin
① アメリカにおける経済的な背景
ここ数年、Josh Bersinの講演は、経済的な背景として、労働人口の減少や、従業員のストレス状況の変化を確認するところから始まっている。
今年は、最初に企業のCEO達が懸念している問題が紹介された。世の中の変化を受けてCEO達が懸念している問題は「ビジネス」「人」両面あるが、なかでも人に関する問題への関心が高く、特に「人材不足」や「これから求められるスキル(未来のスキル)」への対応、「従業員の燃え尽き症候群」の対策、そして、それら踏まえた「組織の再設計」や「組織の生産性」に関して懸念しているCEOが多い。
そんなCEOの懸念を裏付けるように、従業員の44%が「毎日高いレベルのストレス」を感じていて、「心身の健康状態がかつてないほど低下している」と答えている従業員も33%に上るという調査結果が続いて紹介された。また、出生率も大幅に低下しており、出生数と死亡者数の差が徐々に少なくなってきていると指摘。さらには、人手不足のため、企業の従業員が心身ともに負担を感じながら、なんとか仕事をやりくりしていることもあって、スターバックス、アマゾン、フォード等では従業員がストライキを起こす事態にまで発展しているとのこと。
このような状況から、「私たちは、より少ない人数で会社を経営し、より高いレベルの生産性を生み出し、仕事の柔軟性を高め、権限を与え、スキルを高める方法を学ばなければなりません。」
「人事部門を含め、すべての従業員がスーパーパワーを持つ必要があるでしょう。」
とJosh Bersinは語っている。
そのスーパーパワーを持つためには、AIの活用が必要だということのようだ。
② 人事領域においてAIは今後どのように活用されるのか?
講演の中では「Why AI Will Transform The Market(AIがマーケットを変革する理由)」と題したセクションで触れられていた。
Josh Bersinは、来年2024年には、あらゆる人事業務においてAIが活用されるようになり、その中核のシステムはAIを活用した「タレント・インテリジェンス」になると予想している。
「タレント・インテリジェンス」とは社内外を問わず人事に必要なデータを各システムから自動収集し、他社とのベンチマークを含めた人事の各業務や分析に利用できるシステムと私は理解している。この「タレント・インテリジェンス」が急速に普及するだろうということだ。ただ一方で、30人以上の人事部門の責任者やAIリーダーと意見交換した結果においては、生成型AI(の活用)は最も簡単だが、タレント・インテリジェンス(の構築)は最も難しいとの意見もあるそうなので、そう簡単にはいかないのかしれない。
余談だが「タレント・インテリジェンス」については、昨年もJosh Bersinの講演で取り上げられていたので、弊社としてもあるシステムを検討したことがある。その時は、ISO30414で規定された項目の分析をはじめ、様々なデータの参照や分析が可能になる仕組みという印象だった。特に印象的だったのはベンチマークの部分で、企業の人事部の人たちにとって関心が高そうな分析も含まれていた。(EX.地域や企業別に報酬等の採用条件のデータを元に自社条件との比較をする分析等)しかし日本においては、そのベースとなる地域や他社に関するデータを入手することが困難(米国では比較的簡単に購入できるらしい)であることから、時期尚早と判断した経緯がある。
なので、日本においてタレント・インテリジェンスを活用する場合は、利用範囲を限定する等、米国とは違ったアプローチになる部分もあると思っている。
そしてこのセクションの最後に、AIを先進的に活用しているプラットフォームとして「SAP SuccessFactors」「workday」「ORACLE」の3つが簡単に紹介された。
SAP SuccessFactorsについては、AIを活用したcopilotとして「Joule」が今後搭載される点を評価しているようだ。
③ スキルについては今後どのように考えるのか?
AIの活用に続いてスキルの今後ということだが、最初からショッキングな話があった。
古くからアメリカでは単一の仕事を担当し専門性を高める「ジョブ型人事」を採用してきたが、昨今の人材不足を受けて、これからは一人の人間が複数のジョブを担当できるようにして、少人数で仕事をこなせるように変わっていかなければならないとの話が「The Big Shift」と題してあった。従来のジョブに人が紐づく考え方は、人材が潤沢にいる時は良かったが、スキルも人材も不足している現在では、人単位でスキルやWork(ジョブの組合わせ)を管理していく必要があるとしている。また、人間あたりの生産性を高めるためには「人」「スキル」「Work」に関する情報を従来以上に活用して、ジョブ定義やスキル定義を見直す必要がある。しかしその作業は複雑性も高いため、ここでもAIの活用が重要になるという意味だと私は受け取った。
冒頭のセクションで紹介されていた「従業員がスーパーパワーを持つ必要がある」とは、どうもこのことを指していたようだ。
そして、企業として生産性の向上等の実現に向けてスキル情報を更に役立てていくためには、従来よりも広い範囲で情報を収集し、自社としてのスキルモデル等を検討して構築していく必要があるとしている。具体的には、既存の業務で必要とされるスキルモデルに加え、コンテンツベンダー(Linkedin、Skillsoft、Udemy)が提供するスキルモデルやLXPやLMS(EdCast、Cornerstone On Demand)のスキルモデル、採用やATSのスキルモデル(Eightfold、Avature、iCims)それらに加えて、社外から購入できる情報(EMSI、BurningGlass、NASSCOM)等を収集/分類し、自社としてのスキルやジョブ、組織を再検討する必要がある。AIが普及し活用が促進されるなか、AIから精度の高い有効な情報を得るためには、スキル定義やジョブ定義の幅を広げ、進化させていく必要があるということだろう。この点に関しては、日本企業は欧米企業に比べ周回遅れの状況なので、今後意識して進めていく必要がある部分だと思う。
※調べたところ「EMSI」と「BurningGlass」は一緒になり「Lightcast」として、現在は労働市場分析用のビックデータの提供や分析サービスを行っているらしい。
その他、「タレントアクイジション」、「タレント・マーケットプレイス」、「エンプロイー・リスニング」「ピープル・アナリティクス」等のソリューションが紹介されたが、ここでは割愛する。
今年のJosh Bersinの講演の最後は、「先駆者たち」として以下の15社が紹介された。
資料に記載されていた一言コメント(ほぼ直訳です)も含めすべて紹介します。
今回はここまです。次回はExpo中心のレポートをお届けする予定です。
最後までご覧いただき有難うございました。
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