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生まれ変わったら僕はウェイトレスになりたい。

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主に2000一桁年代に書いていたデラシネえ感じのポエーム群。今はもう書けないと思う不気味さがある。
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寂しさに襲われたなら

激烈な寂しさに襲われることがある。

時々、そして、コントロールできる程度の。

保育園のお迎えに、僕だけ誰も来なかったような寂しさ。

実際、そんなことはなかった。遅れても必ず誰かが来てくれた。

そういう体質なんだろう。

そう思って、何事もないフリができる。きっと周りの人は気づかない。

その程度の寂しさ。

マリリン・モンロー

小さい頃の僕の夢。

除雪車の運転手。

あるいは大きなお風呂のある家。

あったかい家庭でさ。

マリリン・モンローは古くからの友達に言ったらしい。

「平凡な人生を送ったあなたの方が幸せね」と。

そんなこと、結局誰にもわからないけど。

チャンスの神様には前髪しかないと聞いて、髪型を想像する僕は、あんまりいい予感がしない。

神様になれるかもしれない

神様になれるかもしれない

世界中の生命が全員眠りにつくまで、見守る神様がいるという。

気が合うじゃないか。

ぼくも家人が眠っている顔を見るのが好きだ。

「俺より先に死んではいけない」

昔そういう歌があったけど、ぼくはそうは思わない。

大切な人たち全員の最期に立ち会い、手を握り、眠りにつくのを見届けたら、ぼくは一人、安らかな眠りにつけるだろう。

夢の浮橋

二人なら

夢の中でまた出会えるはずさ

だから 今日はもうおやすみ

カニクリームコロッケ

名古屋のとあるファッションビルの中で、僕は夕飯を食べることにした。

ちゃちな飾りがしてある、ちっちゃいレストランで。

客は僕ひとり。

注文を取りに来たウェイトレス。

白いブラウスにグリーンのチェックスカート。

世界は何て美しいんだろう。

カニクリームコロッケ。

ウェイトレスが運んでくれる。

生まれ変わったら、僕はウェイトレスになりたい。

きのこ御飯

傘でしのげない雨が足元を濡らしている。

自分が大したことない奴だと気づいたのはいつだったろう。

秋の雨が一番冷たい。

ジャケットの背中には虫食いがあるけれど、きっと誰も気づかない。

アスファルトの路上、木の葉がクルクルと回っている。

あれ、なんて言うんだっけ。

きのこ御飯って美味しいよ。

それ以上の幸せって、一体何があるって言うの。

チョコレート

タクシーに乗り込むと、ふっとメロンの香りがした。

したような気がした。

メロン。夢の果物。

外は激しく雨が降っている。

洗濯物はもう濡れてしまっているだろう。

運転手はやたらと飛ばすが、たぶん警察だって多目に見てくれるさ。

段ボールってチョコレートの匂いがする。

そんなこと考えながら、僕は寝入っていた。

宝くじ

宝くじを買った。

当選発表はないらしい。

「絶対当たる」って、おばちゃんは言ってた。

いいだろ。

決して当たることのない宝くじ。

宇宙の話

眠れない?

じゃあ、宇宙の話をしようか。

宇宙って膨張し続けてるらしいよ。

どこへ向かって?

外側。

宇宙の外ってどうなってるんだろうね。

ささ、おやすみ。

今度は南極の話をするから。

冷たい風の噴き出すところを探して、地下鉄のホームをちょろちょろと歩く。

実家の猫を思い出していた。

忠誠心なんかないぜ。

ただ頭を撫でてくれる人がいれば。

餌を恵んでくれる人がいれば。

僕はついていくだけなのさ。

ただそれだけの話なのさ。

闇の中、僕の眼は煌々と光る。

RR

人のルールに従う君は、飛び切りのロマンチスト。

自然のルールに従う君は、飛び切りのリアリスト。

彗星

彗星が夜空に明るい線を引く。

それを見てみんな願いなんてかけたりして。

あれはただの石ころなんだよね。

重力に引かれて、摩擦を起こして、削れて、光っている。

それを見てみんな願いなんてかけたりして。

闇に一筋描いて、燃え尽きるのかな。

南極の話

南極ってどこの国のものでもないんだって。

ロマンチックだね。

シロクマ、ペンギン。

写真で見たことあるけど、真っ白で真っ青さ。

南極ってどこの国のものでもないんだって。

先進国がそう決めてるらしい。

悲しいね、タロー、ジロー。

電車

真っ黒な高校球児が、隣り合って座ってる。

それでいて、別々、携帯電話の小さな画面に見入ってる。

青春ってこんなだっけ。

案外こんなだったかもしれない。

禿げ上がったサラリーマンが少年漫画を読み耽ってる。

子供が大声で泣いて、みんな嫌な視線を投げかける。

イヤホンから漏れる音がうるさいと、違う女の子に怒ってる中年。

みんな、どうしちゃったんだろう。

ドアには転職を勧めるチラシが貼って

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