保育とは、悶々(モンモン)である

2020-02-18 22:03:29

テーマ:保育・教育
昨日、ダンスをやっている女児が、ラジカセが壊れたことで自分たちで
歌を作ったと書いた。

まあ、色々ともっと盛り上がるように、共有できるように、いろいろな提案を
したが、ことごとく却下された、という旨である。

そして、今日、自分たちで発表会をする、ということで、そのためには
やはりラジカセが必要で、自分たちで他の学年に借りに行くという主体性を
見せていた。

その発表会が無事に終わった後、お弁当の前あたりだろうか、
ダンス女児たちが、「自分たちで作った歌が完成した」と言いに来た。

ん?完成した?


昨日、あれだけ、リーダー的な女児が一人で歌い続けて、う〜ん〜ん〜と
ほぼ鼻歌的な「歌詞」でとてもじゃないが、仲間と共有できるクオリティでは
なかったのに、大人の助けがなくて、「完成」したとは一体どういうことか。


さらに、皆の前で歌いたい、ときたもんだ。

こりゃ大きく出たな。と内心、ドキドキとハラハラと入り交じる。

でも、本人たちはものすごく満足げで、誇らしげな表情である。


うーん、じゃあとお願いすると・・・

「薔薇つくし、たんぽぽ〜元気ですか〜
仲間はもう、お花のつぼみに〜」と5人のメンバーが歌詞を完全におぼえ、
なんとなくメロディも合っているではないか。

後半は、う〜んん〜と鼻歌的な要素はご愛敬であるが、ここまで5人の仲間が
一致して歌えるのも、おそらく相当、息を合わせるための練習をしたのだろう。

その証拠に、強制的に「お客」にされた我がクラスの20数名の年長児は
口を真一文字に結び、真剣に聴き入っていた。


昼食後、彼女たちは、振り付けありバージョン(つまり本来のダンス)を
見せてあげる、と担任に見せてくれた。副園長も来てくれて、絶賛していた。
アンコールで、「パプリカ」を完璧なシンクロダンスと共に披露してくれた。

ここ数年、園の改革に携わり、こどもの興味からの出発を追究していく。

こども主体とか、主体性というのは、言うは易し行うは難し
つまり、大人側のアンラーンと常に必要とする。「痛み」が伴うのである。
ここ数年、保育の中においても自分の枠組の変更を余儀なくされることが
何度もあったし、むしろ最近はそういった「変化」が心地よく感じるほどになった。

しかし、計画性が高まる時期=行事になると、ますます一筋縄ではいかない。
保育者が計画した内容を、簡単には変更できないからである。

子どもに主体性があるように、保育者にも主体性はある。
今の現状の問題点は、保育者の主体性・・・厳密には主体性というよりは
主導かな。それが強すぎるあまり、こどもの声がかき消されてしまうことである。


でも、今回の彼女たちの姿から多くの未来の保育の可能性が詰まっていると感じざるをえない。

子どもは自分で進めていく力がある、ということ

遊びこむこと(ダンスはもうかれこれ3〜4ヶ月はやってる)で、自分たちで探究できる力がつくこと

ぞの際、保育者は、教育的な指導のタイミングを留意すること
ーつまり、こども自身が困っていたり、助言を求めている時ではときに、いくら
提案しても響かないこと。だから、待つことが要求される


まあ、まだまだあるかもしれない。

そして、もう一つ挙げるならば、保留状態を維持できる保育者自身の姿勢と
園文化の姿勢である。

保留状態を維持できる姿勢とは、そのままである。
保育という営みは、何かしらの援助がすぐに結果をうむこともあるし、ある程度時間が経過してから見えてくるものもある。

保育者である以上、こどもの成長に責任があり、様々な手を施しているのに結果として変化やアクションが起きないときには、やはり悶々とする。

それは当たり前である。

この子は、「こういう子である」または「こういう子でないか」と一時的にしろ
評価をした方が、安心する傾向も保育者ならばあるだろう。

ただ、たくさんの子と出会う中で、1学期を経て、2学期を経ても、
暖簾に腕押し状態よろしく、何をやっても響かない(響きづらい、もしくは
響いているのが大人に見え辛い)子もいる。

そういった子と出会ったときに、いかにすぐに結論(評価、理解、アセスメント)
を出さずに、保留状態を維持できるのか、である。

保留状態を維持するとは、繰り返し、保育者側がアクションをし続ける、という
ことが生まれる。


今回のダンスは、4ヶ月ほど継続していた。
実は、かなり担任としては、このダンスの「意味合い」をずっと探して悶々と
していたのである。

悶々は正直、苦しい。

ゼロか100かはっきりしたい、と思うのは人間の性でもある。

悶々としながらも、子どもの姿に委ねつつ、用意周到に準備しつつ、
機会を虎視眈々とうかがう。

保育とは、悶々である。


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