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雨音を聞くと思い出す感覚

よもやま話をひとつ。

今朝、私が住んでいる地域では雨がザーザー降っていた。
強い雨音を聞くと必ず思い出す風景がある。
フィリピン・バギオで半年ほど過ごした部屋だ。

若かりし頃にフィリピンに留学していて、後半は現地でできた彼氏の部屋に転がりこんでいた。
山の上に建てられた古い長屋で、まさに吹けば飛ぶような掘っ立て小屋。
「トムとジェリー」のジェリーがよく出没し、
最初のころは悲鳴を上げては彼に、
「マイフレンドだから仲良くして」と笑われていた。
帰国するまで慣れることはなかったが、ジェリーの気配を察知して、
見ないようにするという今後一生使うことのないであろう技術は会得した。
薄暗い部屋で1人過ごすのは心細くて、ずっとテレビをつけていた。
テレビの電波はよくなくて、DVDを再生していた。
英語でもストーリーがわかりやすくて、音楽代わりにもなるミュージカル映画「ヘアスプレー」はこのとき200回以上観たと思う。

こんな親が聞いたら何しにフィリピンに行っていたんだと叱られそうな数か月は雨期で、本当によく雨が降っていた。
トタン屋根に落ちる雨は大きな雨音を立てるので、それ以外なにも聞こえなくなる。
その部屋だけがポツンと世界から切り離されたような、そんな不思議な感覚になる。
今でも部屋で雨音を聞くと、そんな感覚が蘇り、
私は少しのあいだその感覚に浸る。

フィリピン人と付き合ったのが良かったのか、ヘアスプレーを200回観たのが功を奏したのかはわからないが、帰国後にTOEICで高得点を取れたことだけは、親のために言っておきたいと思う。



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