ベトナムの盲人按摩
tẩm quất という言葉がある。
辞書をひくと意味は「マッサージ」とある。
しかしハノイには「massage」と看板書きされた店舗が数多くあり、なぜ固有語彙があるのにわざわざ英語から引っ張ってきている店が多いのか疑問だった。が、しかしその謎は「tẩm quất」と共に書かれている単語を見ると速やかに溶ける。
người mù
người khiếm thị
người は「人」であり、người mù は「盲人」、khiếm thị は「欠視」という漢字があたるので意味は明らかであろう。
盲目の人によるマッサージは、日本語でも「盲人マッサージ」という言い方が決してされず「按摩」が結びつきやすいように、恐らくはベトナム語の tẩm quất も連想させる物は按摩のそれと等しいものと思う。
下品な話だが、外国でマッサージと言うと性的なサービスが紐付くことが多く、逆にその手のマッサージを避けたければ盲人按摩に行け、と言うアドバイスをクーロン黒沢氏の「倍速紀行」で観た。
そのことを思い出しながら、一度 Googlemap で西湖にほど近い盲人按摩屋を探し行ってみた。
客の案内をする男性も施術氏も当たり前だが盲人で、これまではっきり目の不自由な方と接したことがなかった私は少したじろいだ。
折しもサッカーアジアカップスズキ杯のベトナム日本戦が始まったばかりで、薄暗い部屋に流れるラジオから日本人の名前が時々聞こえてきた。
マッサージ屋と言うものはどうして背中の上に立って思い切り力を加える奴をやりたがるのか、などと思ったりもしたがマッサージはそれなりに巧く、しかも90分で15万ドン程度と安かった。会計の際、盲人でない子供がじーっと私の払う金を見ていたのが印象的だった。
驚いたのは、 tẩm quất という言葉を知ってからハノイにおける私の生活圏内にそれが本当に多いのに気が付いたことだ。見分け方を知ってから街にやくざが多いのに気付いて驚くようなものだ。
ベトナムと言えばアオザイ美女、ハノイと言えばバイク、という定説の裏に盲人按摩の世界がある、と気付けたことは収穫だった。
機会があれば別の店も挑戦してみる。
TẨM QUẤT NGƯỜI MÙ HOÀNG KIM
Ngõ 639 Hoàng Hoa Thám, Vĩnh Phú, Ba Đình, Hà Nội
096 877 85 58
https://maps.app.goo.gl/ygAMx
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