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日銀利上げのメリット②

二つ目。
これからも「国債の安定入札」ができる。

みなさん、「利金のつかない債権」って買いますか?
買わないですよね。だってお金を貸してるのに「一銭」ももらえないんですよ。
いやあ、ボクなら絶対に買わない。

もちろんボクも債権は持っていますよ。「生債権」も「債権ETF」も。
すべて米国債と米社債関連のモノですけど。
最低でも3.5%以上の利率。
0%なんて絶対買わない。

でも、日本政府って国債を大量発行してますよね。
じゃあ、あれ、誰が買ってるんですか。

日銀です。(本当は法律上ダメです)※1

その日銀がその「国債買い入れ」を「減額」すると言いました。

ほう。じゃあ「日銀が買わずに余った国債」を誰が買うんですか。

それを植田総裁は「民間」の金融機関にお願いにまわっていたのです
「コミュニケーションをとる」というのは、そういうこと。

かつて日本の民間金融機関は国債の半分くらいを保有していました。

でも、今は10%くらいまで減っています。(知ってました?)
じゃあ残りの40%をもう一度金融機関に買ってもらうんですか。

いやあ、買わないでしょ。

民間の金融機関には「株主」がいます。
「利金のない国債」なんて買ったら、「株主」に叱られてしまいます。
(ボクも怒ります💢)
だって、例えば「30年」モノの「超長期国債」だとしたら、その分の資金が30年もの間「塩漬け」になってしまいます。
そうしたらその間、その資金は全く運用できない💧

民間の金融機関がこんなことやったら、預・貯金者や投資家は激怒して、すぐ自分の資産を引き上げてしまうでしょうね。


だからこその「利上げ」です。

金利が上がれば、金融機関も購入に前向きになります。それで植田総裁はコミュニケーションをとったわけです。

ただ、民間金融機関も0.25%では低すぎる。
そこで短期国債(すぐ償還される)と変動利付債(これから金利は上がるので絶対儲かる)の発行を希望しました。※2
財務省はその希望に沿った国債発行にシフトしていくと言ってます。6月末に各社報道していますけど、覚えていますか?

金融機関にとっては「国債」はもともと「安全資産」
絶対「元本割れ」せず、ちゃんと年に2回「利金」ももらえる。※3
確実に資産を守りつつ「運用益」も出せるわけだから、ちょっとくらいなら協力してもいいかなって思えますよね。

よかった、これで国債の安定的入札が継続されますよ。

日本の財政運営の要は「国債」です。
日本の財政は「借金」で成り立っています。

つまり、私も含めてみなさんの生活は「借金」で成り立っているわけだから、「国債の安定入札」って必須なんです。
これが不調に終わるようになったら…
怖くてこの続きはしゃべれません😅


ほら、「利上げ」に反対する理由なんてないですよね。

というか、できない。

でもね、これ、いつまでもはできません。

今まで日銀が買っていたレベルは凄まじい。
今、「日銀当座預金」に「600兆円」あります。※4
こんなにも日銀は国債を買っていたんです。
このレベルの国債引き受けは民間の金融機関ではとてもできません

だから、ここからが本題になるわけですが、

「利上げ」国債安定入札」
     
=「日銀の引受減&民間の引受増」
     =「財政健全化」

「ん? 最後のは何?」

そうです。
実は民間の国債引き受けには限度があります。
600兆円なんてムリムリ💦

ということは、自動的にこうなります。
日銀も引き受けない。
民間も限度あり。
国債の発行額を減らす(もしくはこれ以上増やさない。)

誰が?
そりゃ政府でしょ。

そうです、今回の「利上げ」は「財政健全化」の狼煙でもあるわけです。
それなしではこの国は持続可能ではありません。


これってかなり大きなことじゃないですか。

ずーっと続いてきた日本の金満財政を辞めますっていう宣言なんだから。

政府が利上げを認めたということは、植田日銀と財務省が描いたこのシナリオを政府が認めたということです。

ようやく始まった「日本の未来」のための第一歩です。

今回の「0.25%」って、そのぐらい大きな決断だったんですよ。

これは大きな「構造改革」です。
具体的で魅力的な案が政府から示されれば、マーケットにも好感されるでしょう。
そうすれば「円安」とか「円高」とかに左右されない、強い日本株式市場が産声を上げることになります。(「東証の改革」はその前段階です。)ようやく世界から日本に投資が集まることになります。

ほら、メリットあったでしょ。


※1 一旦、民間の金融機関が市場で買って、その後、日銀にちょっと高めで買ってもらう。いわゆる「日銀トレード」です。こんなことしたら本当はダメなんですけどね。

※2 政策金利と短期国債の金利は連動します。そして期間が長くなればなるほど、金利が上がる。黒田日銀はこれをむりやり抑え込む政策を取っていました。いわゆるこれがYCC〔イールド・カーブ・コントロール〕です。

長期国債をどうやって抑え込むかって? そりゃ長期国債買うしかないでしょ。国債が買われれば、金利は下がる。国債が売られれば、金利は上がる。

まずいのは黒田日銀は長期国債を大量に買ってしまったので、償還にとても長い時間がかかるんです。つまり日本の財政はとても長い期間国債償還費に縛られることになります。これは未来の子どもたちに悪影響です。彼らが国策として将来のために何かに投資したい、何か事業を起こしたいと思っても、多くの国債償還費が予算内に占められているので、最初からアイデアに制限がかかってしまうのです。ホント、ごめんなさい😢

ちなみに金利が上がると債権の価値は下がります。だからこれからも金利を上げていくつもりなら、金融機関にとっては短期のモノの方が都合が良いわけですね。

※3 ストリップス債(割引債)の場合は利金は出ません。

※4 日銀は「銀行の銀行」です。「日銀当座預金」は「民間金融機関」の「預金」ですから。当然利子を払わなければいけません。その利率は政策金利と連動します。一方、日銀が民間から買い入れた国債はゼロ金利時代のものですから、ほぼ元本のみです。つまり、日銀の資産は増えないのに、民間銀行には多額の利払をしなければいけません。単純に考えて600兆円×0.25%=1.5兆円(このうちの一部は税金として財務省へ還流)出ていくことになります。このままだと「債務超過」になってしまう可能性があります。だから、植田総裁は債務を圧縮するために、購入額を減額すると言っているのです。


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