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尾田わらば
2021年4月1日 21:11
「実は、あなたのことが好きではなかった」と彼女は電話口で告げた。「申し訳ないけれど」と言う。そのまま電話は切れた。その時僕は柔軟剤入り洗剤を目盛りで測ろうとしていて、カップを左手で握った状態だった。電話の不通音は、開いた窓から忍び込む秋の虫の鳴き声に驚くほど馴染んでいた。二年後。「君のことが本当は好きではなかったんだ」と、僕は別の彼女に言った。「申し訳ないけれど」と間を置いて付け足した。「い