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タイの世界タイトルマッチ事情とノックアウト対大平戦回想~

サワディーカップ👊👊(2021年7月16日に某サイトに掲載)

タイ在住のオダサイと言います。ボクシング・格闘技のプロ選手経験はありませんが、ファン目線で、タイのボクシング・格闘技情報や、これまでの観戦エピソードなどを発信していきたいと思っています。

僕の初めての投稿は、「辰吉丈一郎が世界王座に返り咲いた日!」でした。

これは、かつて友人に「シリモンコン対辰吉戦の時、何してましたか?」と聞かれた際に、つたない記憶を細部まで辿って、話したことそのままです。辰吉さんは、僕がボクシングを見始めた切っ掛けにもなったレジェンドで、彼については説明するまでもないですね。

最近、友人のインスタで、辰吉さんよりもっと古いレジェンドである元世界フライ級チャンピオンの花形会長の写真がアップされていました。僕は一度だけ、タイで花形会長に遭遇したことがあるのです。何かしらタイムリーな気もしますので、その時のエピソードを紹介します。

花形ジムの大平剛選手がタイでWBA王者のノックアウトCPフレッシュマートに挑戦したのは、ちょうど4年前の2017年でした。大平選手は、師匠の花形会長の現役時と同様に敗戦と引き分けを繰り返しながら、世界戦線に浮上してきた選手です。

しかしながら、このWBA王者ノックアウトに挑戦するまでに世界戦に2度敗退していました。1試合はノックアウトの同僚である、WBC王者ワンヘンに、前年タイで挑んだものでした。日本人選手がタイで世界タイトルマッチを戦う際は、ほとんどの試合は応援に駆け付けるのですが、前年のワンヘン対大平は、仕事の都合がつかず、会場に行くことはできませんでした。

タイの世界タイトルマッチですが、ほとんどは無料です。主催者側のスポンサーが試合の費用などを負担します。ノックアウトやワンヘンの場合は、所属のペットインディプロモーションの大手スポンサー、タイを代表する大企業・CPフードが付いています。同じCPグループのCPRAMは、タイの9割のコンビニを占めるセブンイレブンを経営しており、今はタイ国内で12,587店舗(2021年6月現在)があります。

CPフードは鶏肉、加工食品などを販売していますが、タイの地方都市で、「CPフード感謝祭」のような試食・販売展示会を展開しています。

この試食・販売展示会の集客に利用するのがボクシング興行です。さらにトヨタ、いすゞ、などの車メーカーも試乗展示会をセットで行います。ほとんどは野外会場で、運動会の本部席で使うような大きなテントをいくつも用意して行います。

地元住人が馴染みのある、県庁や、市役所前の駐車場がベストです。

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「なんかボクシングの世界タイトルマッチが来るらしいから、行こうか」という形で、地元住民が集まりますから、ほとんどの人はボクシングファンではありません。なかには、タイ全国を回って観戦する強者もいるでしょうが、、。

ノックアウトCPフレッシュマート対大平剛戦も、この例に沿って、チョンブリー県の県庁広場で執り行われました。ちなみにこのCPフレッシュマートという名前、これはCPフードがチェーン展開する生鮮食品のお店です。

ワンヘンはワンヘンガイヤーンハーダオジム、という名前で一時期活動していましたが、このガイヤーンハーダオは「5つ星の焼き鳥」というCPフードが展開する、フランチャイズのタイ式ローストチキンの屋台です。

そして試合当日、チョンブリー県庁に行ってきました。テレビ中継の都合か、世界タイトルマッチは金曜の15時あたりに行うことが多いです。(2021年当時、、2023年現在は平日19時などが多い)

金曜日の15時は、サラリーマンの仕事してたら、なかなか観られません。

僕もサラリーマンなので、この日は有休休暇を取得して、大平選手がどんなボクシングをするのかを確かめに会場に向かいました。そして会場のトイレに行くと、花形会長がいました!思ったよりも小柄でした。それは、元々フライ級のチャンピオンですから、小柄ですよね。

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「日本人です、応援に来ました」くらいは言ったかもしれませんが、トイレのやりとりは覚えていません。そして試合時間となり、大平選手が入場してきました。後ろには花形会長です。陣営はリラックスしているように見られました。

試合は、残念な結果でしたが、大柄の白人レフェリーが、大平選手のそれほど低くないローブローを注意しながら、ノックアウトのローブローや抱え込みは注意しないのが気になりました。

3ラウンドまでは互角に見えましたが、、大平選手はタイの屋外の暑さで消耗してきたように見えました。

会場のCPフード試食会に来た地元の人たちは、応援ボランティアの指示で、ノックアウトがパンチを出すたび「オーイ!オーイ!」と大声で声を合わせます。これをやられるとパンチが当たってなくても勢いがついて見えます。ローブローだろうが、抱え込みだろうが、ボクシングに詳しくない観客は分かりません。

この勢いにやられてしまう外国人選手は多いです。よく分からないままに暑さに消耗し、大声援に押され、ラウンドやインタバールの時間もまちまち。テレビCMの時間を優先するからでしょうか、2分半だったり、3分10秒だったり。こういうことがよくあります。

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4ラウンドになると、ノックアウトは片手で大平選手を抱え込んだり、押さえつけてののボディ打ち、ローブロー攻撃が目立ってきました。片手で押さえつけて、体で推しながらのボディブローで、無理やりに大平選手からダウンを奪いました。

ダウンではなく反則、またはスリップのように見えましたが、レフェリーはカウントしました。大平選手は立ち上がり、試合は続行しますが、ノックアウトの追撃がラフすぎます。レフェリーがラウンド終わり際にようやく、ノックアウトに注意をしました。

ボディ攻撃でダメージのある大平選手、5ラウンドにきれいにワンツーを喰らいダウンし、押し切られてしまいました。ノックアウトのラフファイトが目立つようになった4ラウンドまでは、そんなに差がないように見えましたし、後楽園ホールでやったらどうだったでしょう。恐らく、もっと力を出せたのではないでしょうか。

コーナーポストに登って、勝利をPRするノックアウト。反則攻撃からのKOで、観客にPRとは、プロレスのヒールのように見えました。苦笑いするしかないです。試合後、僕は、一緒に観戦した友人と2人で、試合後、心配そうに、遠巻きに大平選手陣営を見守ってました。

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花形会長は目が合った僕らに、「まあ負けたけど、やってみないと分からないじゃないか、なあ。」と語りかけました。大平選手は世界戦2連敗ながら、再度挑戦のオファーに乗ったという、批判の意見もあったとのことでしたが、「それでもやってみないと分からないよ。勝負ごとだから」とする花形会長でした。

花形会長自身は世界戦1勝6敗、負けても負けても這い上がってきた選手。そんな敗戦や苦難からも這い上がってくる、魅力的な選手をまた見せてほしいところです。

花形会長自身もタイで世界戦をやっていたはずです。機会があれば、その時のお話も聞いてみたいものです。ネットで調べたところ、チャチャイチオノイに1973年、バンコクのフアマークスタジアムで挑戦され、判定負け。たまたま、このフアマークスタジアム前を今日(2021年6月3日)通りました。

最後に、大平選手、このタイでの試合で引退されたそうですが、この試合は本当に残念でした。異国の地で無敗の王者に真向から勝負を挑んだ、果敢なラストファイトを確かに見届けさせて頂きました。

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