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所属部門の解体と越境的お仕事

この度、私の所属する部門が解体された。私自身は周期的な寄り戻しがあるかもねと思っている話。それから、解体の居残り組に課せられた「皆の役に立つ仕事」に対して、どのようにアプローチするかという話。

職能組織と事業組織の一長一短

前職のメーカーで、主力製品の組込みソフトウェアを10年ほど開発していた。配属当初はソフトウェア技術者ばかりを集めたグループに属していて、他にも機構技術者ばかりのグループや、電気技術者ばかりのグループなどがある、いわゆる職能組織だった。技術者のグループの中から、製品開発へのプロジェクトへと投入される。

何年目かに組織変革があり、技術分野ではなく事業単位で組織を分けるようになった。いわゆる事業組織へと変わった。私にとっては初めてのことで戸惑ったけれど、先輩社員は「歴史は繰り返す」と話していた。

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職能組織を続けていると技術に対する感度は高まる一方で、コストかけて機能追加した採算が取れるというビジネス視点が弱くなる。事業組織を続けているとビジネス視点を1人1人が意識するようになる一方で、技術視点が疎かになって開発が難航する。どちらに振り切っても不足が出てくるバランスの問題だった。

両方を取り入れたマトリックス組織なんかもあるけれど、末端の担当者が2通りの上司から板挟みにあいやすい欠点もあり、上手くやるのは難しい。ともかく前職メーカーでは5~10年の周期で、職能組織と事業組織を行き来することでバランスを取っていた。

部門解散も歴史のウネリかもね

そんな昔話を蒸し返したのは、今月に入って所属部門が解体される事件があったからである。発足から10年となる職能組織だったのが、メンバーが各事業部へと合流することとなった。↓ここら辺の話と近い。

「事業視点が弱い」みたいな前職の事例とは違って、組織のスリム化という大人の事情だとすると、個人的に悔しい想いはある。とは言え前向きに捉えれば、人が動くことで組織の澱をかき混ぜて新しい反応が起こるならば、素敵なことだ。

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解体されたのではなく、長い周期の中でバランスを取るためのウネリだと私は捉えている。また将来的に職能が見直されて、一通り大きくなったメンバーで集まって仕事ができれば素敵ではある。デザイン経営が浸透するくらいの変革が必要になるけれど、この組織にいる限りは目指したい。

何にでも役立ちそうな仕事は何の役にも立たない

先ほど「各事業部に合流する」と書いたけれど、私はどこの事業部にも旅立たない居残り組である。居残り組は特定の事業部のために仕事をするのではなく、全社の役に立つ仕事をしなければならない。これがまた難しい。

おそらく、特定の事業部に寄り添った仕事をしていると、「それはお前の仕事ではない」と指摘されることが予想できる。では逆に「幅広くいろんな事業部に役立つ仕事」なんてできるのか?

基礎研究や要素技術の成果が、開発まで降りてきても引き取り手がいない事例は幾度となく見てきた。トップダウンで発破をかけられようと、現場には摩擦がおきる。一見して何にでも役立ちそうな仕事は、何の役にも立たないのだ。

越境的お仕事のメカニズム

転用が効く能力に関して、「越境的学習のメカニズム」という本で示唆に富んだことが述べられていた。

乱暴に要約するなら、既にどっぷり漬かっている現場を抜け出して、アウェーな現場に飛び込んで、両方を行き来しながら苦労するうちにようやく転用のきくスキルが得られるという話。これを仕組みとして取り入れるため、プロボノや副業を推奨したり、計画的にジョブローテしたりする企業もあるのだとか。

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転用が効く成果の話をすべきところ、転用が効くスキルで摩り替えているのは承知ながら、本質的には同じだと考えている。皆の役に立つ仕事を進めるには、以下のようにどっぷり現場に入るしかない。

Step1: まずはどこかの事業部にどっぷり漬かってお仕事する
Step2: また別の事業部にどっぷり漬かってお仕事をする
Step3: 両方を越境するうちに浮かんでくる共通項を追及する

Step1の時点で「それはお前の仕事ではない」指摘が来ることが容易に想像できるけれど、虚無から皆の役に立つ仕事なんて出来る筈がない。脳に汗して抽象化したもの同士の共通項を探るしかない。そう信じて私はやるぞという表明まで。

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