感情移入、死ぬよ??
早速私は、執筆し始めていた。
①西山に経験談を聞く
②小田が文字にする
③西山に校閲してもらう
これを延々と繰り返した。
西山は生まれてすぐ、右足が曲がっていたこと。
西山は中学校で人見知りを卒業したこと。
そして、起立性調節障害になったこと。
こいつの16年間は濃いなあ。そんなことを思いながらも、私は書き進めた。
しかし、途中で、自分に違和感を感じた
書きながら、涙がボロボロと止まらなくなっていたのだ。
西山が病気にかかってから、彼女の心が、闇へと進んでいくところを書いているときだった。
いつもは学校で明るく振る舞う西山。
そんな彼女からは想像もできないような暗い過去。
書いている私。
それはもう、小田実里ではなく、
西山夏実だった。
病気を理解されない孤独さ、
そして治らない病気が、心を蝕む様子。
私は書けないと思った。
無理だ。
キツすぎる。
感受性が強い私には、難易度が高かったようだ。
やばい。
涙が止まらなくなっている。
やめようかな
やっぱりきついかもしれない。
そう言おうと何回も思った。
今思えば、きついかもしれない は 十分キツい ということだったのだろう。
でも今辞めたら、西山をガッカリさせる。
その気持ちが消えなかった。
しかし、もうひとつ残っていた感情があった。
それは、
西山を喜ばせたい。という気持ちだ。
私が本を書くことで西山になっていた分、人を喜ばせたいという西山にもなっていたのだ。
西山から西山への気持ちだった。
そんなことを考えていると、いつの間にか
私の指は、キーボードをバンバンと叩きはじめていた。
▶️次回 「はじめて頭が割れた」
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