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片付く

昨年の春からの延期、その後参列者を減らして今年初めに結婚式を決行した息子夫婦。

直前に緊急事態宣言がまた出そうな雰囲気、どうしよう?と連絡がきた。


前回も、雲行きが怪しくなりだしたのは、挙式の2か月前ぐらい。
その間、グルグル変わる世の中。今まで通りでは無理。どこをどうするか。いつなら可能か。プラン変更に打ち合わせのやり直しなどなど・・・。
リモートワークをしながら、大変だったようだ。


再度延期する気力がない・・・

参列できない、すまない、行きたいのに。
謝ってくれる友人知人の対応だけでめげてくる。申し訳なくて・・・メンタルが持たないと言う。


そだよね。


本当なら一年ほど前にひと段落ついていたはず。それでもなんとか二人で歩き始めた。ただ式がまだだというだけで、洋服の裾を何かに引っかけながら歩いているような違和感。


世の中は止まったようにはなっているけど、静かに確実に時は進んでる。そんななかで何を大事にするか、これからの自分達のために。うねりに飲まれ流されているうちに大きなモノを失くしてしまうかもしれない。今しかできないことを取りこぼさないようにしないと。


式はゴールじゃない。やらなければいけないわけじゃない。だけど、花嫁姿を楽しみにされてるあちらのご両親がいらっしゃるのも確か。沢山の人に祝って貰いたい、お礼が言いたい、それもわかる。でも、そこにだけ重点を置くと、失ってしまうモノもあるかもしれない。参列の有無に関わらず、祝ってくれる人は祝ってくれる。お礼を言いたい人にはまだまだそのチャンスもある。2人が元気でさえいれば。

やるもやめるも決めるのは二人。何かを言う権利は誰にもない。


つらいなら止めれば?
やるなら行くよ
先に進まないと


とだけ伝えた。



参列者は、当初予定していた三分の一以下になった。

そのうえ生憎の雨。

それでも、同僚と思しき男性数人が、「マスクのままで失礼します」「これ以上近寄らせて頂けませんが」と、丁寧にご挨拶に来てくれた。

入社以来お世話になってますだの、いつも助けて頂いてますだの、アタシの預かり知らない社会人としても息子の姿が彼らの口から。


同僚に冷やかされて、高砂で照れ笑いをしてる息子。もう片方の息子(先に子持ちになった弟)があんなに笑ってるのを初めて見たと言っていた。確かに。どちらかと言うと、いつも冷静でバシバシぶった斬ってくるイメージしかなかった。

だが、ひとまずの区切り。




今まで進路に関して、こっちから何かを言ったことはなかった。


俺たちには興味ないんだと思ってた。

大学の合格発表の時に、ネットで受験番号を見つけた瞬間「やったぁ!」と叫んで息子に飛びついた後に言われた台詞。

かーさんに抱きつかれた…と苦笑いしながら


そか、そう見えてたんだ と。

好きにすれば良い と言うだけで、こちらから関わろうとしないのは、無関心になってしまうのか。

中途半端に情報を仕入れたら、口を挟みたくなる。誤誘導したくなかった。自分で選んだのなら諦めもつくだろうけど。それも結局こちらの逃げでしかなかったのかもしれない。


手のかからない大人しい子だった。

大きな反抗をすることもなく。


それでも

クソババアと言われた日。

勉強で分からないことがあれば、友達に聞くから良いと言われた日。

半泣きで謝って来た日。


幾度も繰り返された入学と卒業

そして就職

そして、結婚。

今までも特に何がしてやれたわけでもないけど、もうすることは何もないんだろう。

彼の横には、弾けんばかりの笑顔の女性がいる。



以前は、娘が結婚したら「片付いた」と言ったようだけど、今は逆のような気もする。夫婦別姓ではないから、こちらの姓を名乗ってはいるものの(アタシは今の姓になんの思い入れもないからどうでもいいけど)、お嫁さんを貰ったと言うよりは、お婿に行った感が満載。

子が新しい家庭を築くのは、こちらからすれば「片付いた」でいいのかもなと。嫁とか婿とか呼び名なんてどーでもいい。



最近、一人暮らしの頃に比べると連絡を寄越すようになった。

ただ

油の処理はどうするん?

コンロの油はねはいつ掃除するん?

レンジから火花が出た!ヤバいかな?


お片付け担当の彼から送られてくるメッセージは、こんなものばかり。

アタシャ、ぐーぐる先生ではない・・・




式当日、テーブルに折り畳まれたメッセージカードが置かれてあった。


コロナで式がどうなるかって時にかけてくれたさりげない言葉が嬉しかった 


とあった。


こんなことを書けるのも、結婚式マジック。


ま、母親と息子ってこんなものかもしれない。


でも、あれですね。結婚式ってやっぱり新婦が主役。

なんか。うちもそれなりではありますが、子育てしたつもりなんですけども…って。

そんなこと関係ないって話なんだけど、新郎の母を2回やってふと虚しさのようなものが。

感謝の言葉が欲しいとか、スポットライト当ててくれとか、そういうのじゃ全くなくて。新婦がヴァージンロード歩く前に母親にベールを掛けてもらうように、新郎に母親が上着を着せかけるっていうのも出来るけど?とは、聞かれたけど断った。はぁ?そういうのはいらないんだよ・・・な。

男の子の母って、なんかつまらん…ってのが正直なところ。

随分前に、息子らに口を揃えて「俺らが娘じゃなくて良かったな」と言われたことがある。

結局は、たとえ女の子の母になれていたとしても、アタシはアタシなんだから、何ら変わりはなかったのだろう。男の子とか女の子とかって話じゃなくて。


親なんてホントつまらんイキモノだ



………

ここまで長引くとは誰も予想していなかった世の中の状況。今もまだ先が見通せずに右往左往しているカップルはいるはず。

誰のせいにもできない、やり場がない思いに潰されないで欲しい。マジで。







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