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【イベントレポート】シェアリングエコノミーMeetup!In福島 を開催いたしました。

こんにちは!
小高パイオニアヴィレッジのコミュニティマネジャー野口です。
さる12月12日 一般社団法人シェアリングエコノミー協会東北支部様とタイアップし、トークイベントを開催いたしました。
5月に石巻にて開催された、東北支部第1回ミートアップイベントに続き、第2回として、今回の開催です。

この地域の現在地を「シェア」を通じて捉え直しつつ、新たな活動につながる機会となりました。

会のイベントレポートを簡単ながらに共有いたします。

開催の背景:日常動作について、捉え直す。

このエリアを語る上で、どうしても東日本大震災は避けては通れません。
東北エリア一帯を襲った巨大地震、大津波は人命、まち、文化、多くのものを奪っていきました。
中でも福島県の相双地域においては原子力災害も相まって、人々の暮らしと経済活動、そのどちらも苦境に立たされた過去があります。

その一方、日本社会を渦巻く変えられない「構造」すらもリセットされたため、21世紀や22世紀すら見据えた、新しい経済や暮らし、文化を生み出せるフロンティアという見方をする「開拓者」が集い始めました。
先人が繋いだバトンを受け、地域を前進させる次世代が活躍する地域として生まれ変わりつつあります。

特に面白いことは、「シェア」の文化が日常に根ざしていること。
お野菜やお米の分け合いに始まり、行きがけに一緒に車に乗せてもらったり、移住した手の人には余った家具をあげたり、若者がシェアハウスをしていることが日常的に起こっているのです。
それも見返りを求めるのではなく、ごく普通のこととしてやるので、なおのこと不思議なのです。
世間で見れば普通ではないシェア/贈与/利他について議論して何か発見してみよう、という催しを開催することに致しました。

開催にあたっては一般社団法人シェアリングエコノミー協会さまに全面的にご協力いただき、代表理事の石山アンジュさん、協会東北支部長の渡邉亨子さん、東海支部長の岡本ナオトさんをゲストにお招き致しました。
シェアエコ協会東北支部第1回イベントで登壇された高橋大就さんも共同ホストとしてご尽力いただきました。
改めて、ありがとうございます。

第一部:希望も厳しい現実も、希望も、きちんと受け止める。

ゲストの皆様を日中はご案内いたしました。
車窓から見えるのは、崩れた家屋、張り巡らされるフェンス、いまだに生活の痕跡を残す看板など。

あれからもうすぐ13年。
日々の暮らしが続く一方でこのエリアはまさしく時が止まったようです。
車内には沈黙が流れ、各々目の当たりにする光景に目を凝らしていたことが印象的でした。

一気に南下し、大熊町へ。
避難指示が解除されてからわずか4年の地域に、若者や企業が集結している様相をお伝えすべく、大熊インキュベーションセンターにお邪魔しました。
大熊町の大野小学校跡地をリノベーションし、コワーキングスペース/シェアオフィスの機能を有した拠点です。
日中ということも相まって多くの話し声や笑い声に包まれています。

学校の教室らしいお部屋もあり、思わずこんな微笑ましい一枚も。

双葉町では、FUTABA Art Districtをご案内。

2022年8月に避難指示が解除された駅周辺は主だった復興拠点・産業団地が先んじて整備されています。
一方で人々の流れや文化が紡がれるのはこれから。

地域を後押ししようと、街で紡がれてきたストーリーをウォールアートに落とし込み、未来に向けた希望で塗り替えていくという取り組みです。

時と共に一つずつ建物は壊されていきますが、それも地域が前進している証。目を引く絵の一つ一つから、力強いメッセージを受け取れます。

その後もいくつかの拠点を巡りながら、本日のメインイベントである小高へと到着。
改めて、私たちの拠点から車で20分ほどで、まだ復旧のフェーズにあることに衝撃をうけます。

浪江町 請戸漁港から望む原子力発電所

私たちがフロントランナーとして何ができるのだろうか?
疑問を持ちながらトークセッションに突入です。

ここからはトークセッションの内容をダイジェストでお送りいたします。

第2部:地域づくりも、トークセッションも、巻き込んでいく。

まずは石山アンジュさんに開会のご挨拶をいただきました。
シェアの概念や、シェアリングエコノミー協会の取り組みをご紹介くださいます。
昔から暮らしに根付いていたお醤油の貸し借りのような「共助」が近年の技術発展のおかげでより広がりつつあること、そしてそれが新たな経済活動につながっていること、この2点がポイントです。

一社シェアリングエコノミー協会 石山アンジュさん
各地を飛び回りながら活動される、大変エネルギッシュなお方です。
最近の出版著書『多拠点ライフ』も面白い本なのでぜひ。

開会のご挨拶は、弊社代表和田が務めました。
小高パイオニアヴィレッジも、コワーキングスペースということで、まさにシェアリングエコノミーです。

連携する多拠点コミュニティサービス”ADDress”は東北第一号の連携拠点です。
そんな話も紹介いただきました。

セッション1:利他の精神が生み出す循環のモデルとは?〜災害からの再生を超えて〜

災害の復興期から、小高では民間の動きが非常に活発だったことを高橋さんから触れていただき、和田が応答。
南相馬市も全土的に大変だった中、一つの区域である小高だけをケアすることもできない。「なら仕方ない、自分たちでできることからやるか」という、案外後ろ向きな背景もあったそうです。

自分が中心になりすぎたり、強い力を持つのは望まない、と話していたことが印象的です。

民間発の取り組み繋がりということで、小高パイオニアヴィレッジの設立・共同運営をする一般社団法人パイオニズム但野さんによる、協会立ち上げの背景を共有いただきます。

インバウンド領域のベンチャー企業の立ち上げに参画された但野さんは、当時、ビジネスとして法律の壁と向き合う必要があり、公共政策等、「ルールメイキング」の領域から変化を起こす必要に駆られたのです。

そこで、仲間と共に業界団体を立ち上げ、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が2015年12月に発足いたしました。
多数の人と調整をかけながら、非常に短期間で立ち上たので、非常に胆力のいるお仕事だったかと思います。そのお話もまた聞いてみたいですね。

本題である「循環」「自律」という領域についてもゲストスピーカーから次々に意見や見解が発せられていきます。
小高が一人に依存するワンマン地域ではなく自律している、という話題が上がると、当事者から話を聞いた方が良いだろうということで、観客の方からも生の声をいただきました。

避難指示解除後、まだ時間が長く経ってはいないタイミングで飛び込んだ時の話。
最近地域にいらした方から見える小高の景色もお話しいただきました。

なぜ自律しているのか?については、この短い時間ではまだまだ解き明かすには全く時間が足りません。

それでも確かにわかったことは、「コモンズの悲劇」と言われる現象に陥らず、皆が地域を少しずつ良くするという精神性が深く根付いていること。
そう頷ける、皆様の「シェア」に対する理解が一歩深まるするセッションだったのではないでしょうか。

一社 SOMA 共同代表 高橋さん
CAVA缶(サヴァ缶)をプロデュース等、東北の食産業にコミットされてきました。
直近は移住された浪江町を中心に、産業・文化両方から仕掛けています。
自律分散型まちづくりコミュニティ「驫の谷」立ち上げ中。

セッション2:自律的な地域はどうすれば育めるのか?〜シェアをめぐる地域の胎動〜

ここからは少し具体の話に近づけるべく、名古屋を中心とする東海支部長の岡本ナオトさん、石巻で活動される東北支部長の渡邉亨子さんにご登壇をいただき、二つ目のセッションに移ります。

株式会社R-pro 代表岡本さん。
廃校のインキュベーション施設 なごのキャンパスの運営に参画されるだけでなく、デザイン、防災事業など、多彩な活動をされています。
座右の銘は「人生のレギュラーになれ!」

高橋さんも先ほどのモデレーターから立場を変え、彼自身も取り組んでいる驫の谷プロジェクトをご紹介いただきました。

石巻にて、新たな技術も活用しながら空き家活用に取り組まれる
株式会社巻組渡邉さん。
今回、経済的側面と利他文化の両輪をどう作るか?の問いに対して一石を投じてくださいました。

会も後半に差し掛かり、だんだんと登壇者のボルテージも上がってきます。
前半のセッションと違い、地域でのそれぞれの苦労の話なども腹を割って話し始め、時には意見をぶつけ合うことも。

特に「利他」を続けることが難しいというお話は印象的でした。
高橋さんの「個人として自律していることから始まる」と最初に口火を切ったことと深い関係があるかと思います。

利他とは本来他人に強制されず、余剰を渡せるもの。
震災後の非常事態だからこそできた義勇心は決して永続的なものではなく、数年もすると疲れ果ててしまう。

綺麗事では済ませない、シェアがいつしか構造的搾取になる危険性も孕んでいること。
地域の復興が遅れてやってくるこの相双地域には、非常にクリティカルな意見だったと思います。

その一方で、岡本さんの「防災」に対する取り組みは、永続性や持続性に対する新たな一手になるのではと考え、プロデュースされた防災ボードゲーム「いえまですごろく」に関してお話いただきました。

https://iemadesugoroku.jp/

私たちはついつい、防災や災害・復興の領域に真面目に、肩肘はって取り組まないといけないというバイアスを持っているのではないでしょうか。

それこそが、向き合うのに膨大なエネルギーが要する要因ではないのか?
ならば、ゲーム化させて「楽しみながら」もしもの時への備えが体感できたらいいだろう、という取り組みです。
特にこのボードゲームを対象とする子供世代は、災害を体感したことがない子も多いので、真面目な話をしても伝わりにくいですものね。

翻って、ここで活動する人々も「自分がそうしたいから」「楽しいから」という、内から湧き上がるエネルギーを動機に取り組んでいる人が集まってきます。
その取り組みで溢れでた余剰が、結果地域を豊かにしてくれていると日々肌で感じています。

これこそが、「利他疲れ」に陥らず、主体性を持って取り組む人が集まり続け、やがて地域自律につながる。
セッション1にも並び、シェアに対する理解の解像度を上げてくれる、有意義なセッションでした。

わかるようで、まだまだわからないシェアという概念。
正解もない領域だからこそ違う意見も歓迎し、止揚されたことを肌で感じました。まだまだ議論やアイディアがつきませんね!

シェアの輪、地域に広げていきましょう!

今回はご登壇の皆様もさることながら、お集まりくださった皆様も普段から地域でシェア/利他/贈与が身近にあり、関心のあるトピックだったからこそ非常に濃密なイベントとなったかと思います。

そんな熱量の高い皆様が集まったからこそ、何か地域に実際のインパクトを生み出せるのではないかと考えています。
例えば個人がシェアサービスにホスト側で登録してみること。
(このページでピンとくるもの、ぜひチェックしてみてください!)

例えば地域で自分たちの持っている資源を活用し、事業として立ち上げること。
このエリアは震災の影響でまだまだ経済規模としては大きくなく、暮らしには多少の不便さが伴います。
ただ、文化としてシェアの概念は深く根付いている。お金やサービスではなくとも、資源/資本の循環そのものの渦は存在しています。
それが善意の搾取で途切れてしまうのではなく、健全に経済としての側面も両立することができるのではないでしょうか。

それこそが、地域の経済と暮らしをなめらかに、そして心を軽やかにしてくれると信じて。
何か私たちにできることや共創機会のご相談は、お問合せフォームまでお願いいたします。


末尾に、年末のお忙しい中ご来訪くださったゲストの皆様、足を運んでくださった参加者の皆様、企画に協力いただいた 高橋さん、協会東北支部の 渡邉さん、事務局長角田さん、協会本部の高田さん をはじめとする皆様、本当にありがとうございました。

引き続きよろしくお願いします!

文章:野口福太郎
写真:角田尭史 /広川誠

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