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占いブックレビュー『日本俗信辞典 動物編』(鈴木 棠三)

著者について

鈴木 棠三:1911年静岡県生まれ。
1929年國學院大學予科入学。郷土研究会に入り折口信夫の講義をきく。同年6月ごろ柳田国男の書斎に出入りし始める。1934年國學院大學研究科卒業。1987年國學院大學研究科修了。社団法人更生協会月刊機関紙「村」の編集及び調査報告書担当、雑誌「民謡研究」の刊行、國學院大學講師、著述業などを行う。1992年没。

『日本俗信辞典 動物編』
著者プロフィール欄より

読みどころ

本書は1982年に角川書店から刊行された『日本俗信辞典』が底本となっています。同書の中で紹介されている多くの俗信の中から動物に関するものを集め一冊にまとめたのがこの『日本俗信辞典 動物編』です。
広辞苑に依れば、俗信とは「民衆の間で行われる宗教的な慣行・風習・呪術・うらない・まじない・幽霊・妖怪の観念など」を指しますが、本書で紹介されている動物の多くはまさに「うらない・まじない」と深く関係があります。
人間に馴染みの深い犬や猫などの愛玩動物や馬・牛などの家畜はもちろん、魚介類や爬虫類、ゴキブリや虱といった害虫の類まで、日本に生息するほぼ全ての生き物の俗信が本書に収録されていますが、やはり、普段から人間にとって馴染みの深い動物が占いに登場することが多いようです。占いといっても様々ですが、動物たちは特に夢占いに登場することが多く、例えば、「馬の夢はお金が入る」(富山県)、「初夢に牛の夢を見ると、その年は骨折りが多い」(山口県)、「蛇に咬まれる夢を見ると病気が治る」(滋賀県)、「魚が多くとれる夢は不吉」(兵庫県・広島県・山口県)等等。その他にも、スズメやカラスは年占いに、キツネや雉など鳴き声が特徴的な動物は天気占いに登場します。また、蝶や蜻蛉などの昆虫類も天気占いに関わりがあります。
本書は辞典であるという性質上、ページ数が743頁とかなり多いので通読することは難しいかもしれませんが、自分が好きな動物に関する項目だけを拾い読みしても十分楽しめます。特に、犬や猫などのメジャーな動物に関しては数ページにわたって様々な俗信の例が紹介されておりかなり読み応えがあります。また、本書で紹介されているほぼ全ての動物が日本全国のどこかの地方の俗信に関わっているので、自分の出身地の俗信に関わる動物を探してみるのも楽しいかもしれません。占いが好きな方や動物が好きな方、或いは私のように動物と占いの関わりについて研究している方(あまりいないと思いますが…笑)に是非おすすめしたい一冊です。

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