57小品目 十五分前の話
悪は存在しない、を観たのは産後初めての映画で実に2年と2ヶ月ぶりだった、と思っていたが、よく考えるとそれは産後の話で、前に観たのは妊娠前のミッドサマーだったから、3年以上ぶりだった。コロナだったので、妊娠中はどうも閉じた空間に行きづらかった。
なので母にこどもを預けられる日を調整して、ワックワックで万全の体制で映画館に向かったのだが、15分ほど前に映画館に着くとなんと駐車場が満車だった。満車だったというか、映画館の駐車場は6台しかなかった。
そんなことある?
映画館の「館」はやかたでしょう?たくさん人が来るでしょう?こんな田舎の駅から15分は歩く場所で。前はもっとあったのに、と思ったが以前あった駐車場は館内にあるハンバーグ店専用になっていた。
絶対、なんか揉めたやつやん
と雲行きが怪しくなる、しかも6台しかないところをある1台がへんてこな駐車をしていて2台にまたがってしまっている。ひとまずハンバーグ屋さんのとこに停めて受付の方に聞いてみると、
ここか市営駐車場に停めてもらうことになっているのですが、もうすぐ大ホールの方が終わるので、入れ替わりで停めていただけると思います
とのことだった。なんだ、そうか、じゃあ安心だ、と待ってみた。しかし6台では大ホール小ホール合わせてどう考えても6家族分しかウェルカムじゃないよな、市営駐車場遠いのに子供向けの時はどうするんだろ?などと考えていたら、大ホール終わった。しかし駐車スペースひとつもあかない。
どうしたらいいですか?
と聞くと、もうちょっと待っていただくか、市営駐車場をお願いしますと返され、
軽自動車なので、ここならなんとか停められると思うんですが……
と例のまたがり駐車の横を聞いてみると、
それはちょっと……
と言われる。では車で待ちますね、と戻ってじりじりと待っていると、やっとこさ開始10分を切って、1台空いた。おー、危ないとこやったで、といそいそ入ろうとすると、
あ、先に入られるお客様がおられますので
と言われて、さすがにプッツンする。プッツンはめったにしないし、この死語自体使うこともないけど、
え?じゃあ、とうしたらいいんすか?
ですので、市営の駐車場に停めていただきたいと
じゃあ、最初から言えよ!しかも最初からそれだけ言ってるやんみたいな顔をするなよ!である。どっちつかずの言葉を出すなよ、空きそうとか、待ってみてくださいとか、2台にまたがる駐車があるとか、そもそも6台しか駐車場がないとか、ていうか、3年ぶりの映画の前の15分を映画へのワクワクじゃなく、駐車場のこと考えて過ごさなあかんのって、
ナンセンス!
なにがショー・マスト・ゴー・オンじゃい!
と沸いて湧く言葉を飲み込んで、
映画に間に合わなかったら、払い戻しおねがいします
とだけ言って、車を飛ばして、走って帰って、まあ、間に合ったので映画も観られたわけである。
ちなみに終始、行動することなく、
前はたくさん停めるとこあったじゃない……
とぶつぶつ言うマダム2人がいたのだが、彼女たちはわたしが車に乗り込んでもまだぶつぶつ言っていた。どうも映画も観ていないようだった。多分、悪い噂は広まると思う。だってこういう腹立物語って、わたしもそうだけど、つい話したくなるじゃない。
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