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ニューヨークに滞在20時間で戻る出張,豊かさについて考える

久々に海外出張が復活していっている.ニューヨーク行ったりドバイ行くとかオースティン行くとかミラノ行くとか,毎日が濁流である.飛行機は良い.長い思考時間をくれる.人生は短く,やれることは限られている.オンライン上で永遠の繋がりの中にいると忘れてしまうものも多い.

20時間の出張でニューヨークから日本に戻りながら,人生の豊かさ,すべての瞬間に潜むチャンスと可能性のことを考えたりする.

確かにニューヨークは豊かで,過剰で,無限の可能性を秘めた都市だ.GDPの高いアメリカの,そしてそれを象徴とする街の一つだ.眠らない街,常に動き続ける街,常に変化し続ける街,常に進化し続ける街,だと人々が信じる場所.街を歩くと,日常生活を営む人々の喧騒,街を縦横無尽に行き交う車やタクシー,バス,頭上にそびえる高層ビル群が目に飛び込んでくる.

2014年のデータだから今はどこが一番なのかわからない.

私は東京は世界一の街だと思う.私は日本が好きだ.東京も好きだ.生まれ育った六本木が好きだ.青春を過ごした秋葉原が大好きだ.私が秋葉原にアトリエを構えるのは私が好きな日本のほとんどはこの街にあって,私が好きなそれ以外の日本は私が旅して向かういくつかの日本の素敵な場所にあるからだ.ホームと日本のあちらこちらを往復しながら考え続ける人生が好きだ.短い人生の中で,美しいものを眺め,美味しいものを食べ,素敵な音楽とバイブスの中に,喜びを共有したい.ゆったりとした夜の時間を火を囲みながら過ごしたい.素敵な時間を彩る音楽も映像も光も匂いも風も熱も土も全ては計算機自然につながる仲間たちだ.京都が好きだ.高山が好きだ.十日町が好きだ.ニセコや知床が好きだ.大阪が好きだ.こうやって自分のホームと往復できる様々な場所の中で人生を消費して行きたい.移動する時間で自己に向き合えば1日1日きちんと死に向かって歩いていることを実感する.人生という計算処理の実行時間はあまりに短く,ハードウェアが完全動作する時間は全実行時間の8割に満たない.自律的に行動し始めるのに3割くらいの時間を使い,4割の時間を何かに使い,3割の時間に微睡んで失われていく.崩壊も忘却も美しい帰結である.構築的には描けない機微を生み出す計算だ.

メディアアーティストとして生きることは,自分にとって計算機自然と人間性の交差点に興味を探し続けることなのだろう.それは計算機自然と民藝,そして計算機自然に代わる次のパラダイムを意味深く美しい形で結びつける新しい方法を探求することだ.その興味の変遷が人生であり,長い一つの巻物は周回を続けながら続けている.

時は円環を成し,旅は質量を超えていく.計算に病んで,夢は枯れ野を駆け巡る

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落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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