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「計算機と自然・質量と有限性への偏愛・床の間にメディアアート を」 / メディアアンビショントウキョウ2020(前編)

落合陽一です.今回は開催されているメディアアンビショントウキョウに関する自作品の解説を中心に.

↑イベント中止になった方,オンラインコンテンツもありますのでどうぞ.

さて,メディアアンビショントウキョウが開催されている.

3月8日までだけど,コロナウイルスの動向によってはどうなるのか分からないので,確認してから来て欲しいなぁと思いつつ,皆様のご来場を心よりお待ちしております(コロナ対策はきちんとお願いします)

今回のコンセプトステートメントと展示解説は下記の感じ.

質量に保存する,制約を与える,有限の存在にする.
質量に保存する,制約を与える,有限の存在にする.
物理的制約のないデータの世界と制約ある質量の世界の越境を繰り返した末に,
存在が物化を繰り返せる可能性を意図的に喪失させる.
質量のある装置はやがて壊れ,質量のない装置はやがて忘れられる.
物質の制約から自由になったデータに有限の身体を与え直す作業に集中する.
デジタルの世界とアナログの世界から切り取った有限性のあるメディア装置の箱庭を作る.
別離への可能性を孕む存在になったデータは愛おしい.
この有限性を与えることへの偏愛を味わうために,
やがて壊れゆく形にデータを記録するメディア装置を蒐集家の目線で眺めていたい.

この辺の質量性の議論は質量への憧憬以後も考えてきたテーマでもある.

奇しくもオンラインと質量性の間の議論はコロナ移行の世界では随分議論されるようになってしまったので,このフィジカルに集まれないけれど集まりたい欲求も質量への憧憬かもしれない.

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そこで展示の方法としては以下の感じ.

計算機自然のしつらえ
質量への保存をテーマにメディア装置で空間を構成した.過去から今年までのいくつかの落合陽一の作品,コロイドディスプレイ(2012-2018)や計算機円窓(2018-2019)などを中心に2020年の新作をちりばめることで,自然と呼応する生活空間を構築し,生ける,眺める,座る,聴く,などの所作に伴う装置を作品化している.また記録すること,保存することと質量性との対話も鑑み,長期保存可能なプリントや磁気テープなどを使うことで,保存への思考を空間の中に内包させている.そういった20世紀的なメディア装置が生まれた背景,伝統的な生活の中の風景にメディア装置を用いた創作が組み入れられている.接続的なコンテクストとともにメディアアート とどう空間の中に調和させ存在させ,維持し,ともに生きるのかを鑑賞者に考えて欲しい.

今日はこんなテーマを考えながら展示を見ていきたい.(現場に行けない人にも伝えたいと思いながら.

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落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

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