非締約国から締約国への住民の追放に関する国際刑事裁判所の管轄権
2024年9月30日、国際刑事裁判所(ICC)規程締約国であるリトアニアが、隣国ベラルーシについての捜査をICCに付託しました。ICCの管轄犯罪にあたるとしたのは、ベラルーシ国内での迫害等の行為によって、ベラルーシ人がリトアニアに追放されていることです。リトアニアは、これらが人道に対する犯罪にあたるとしています。
ベラルーシはICC規程の非締約国ですが、犯罪結果が締約国であるリトアニアで生じていると主張しています。
このような、犯罪結果が締約国で生じている場合に、ICC管轄権があるとした事例が、ミャンマー/バングラデシュ事態です。
以下では、このミャンマー/バングラデシュ事態について、なぜICCの管轄権があると判示したのかについて、2018年9月6日のICC予審裁判部決定の論旨を振り返ります。(決定文はこちら)
I. 事案の概要
2017年8月頃から、ミャンマーに合法的に居住する67万人以上のロヒンギャ族が国境を超えてバングラデシュに追放されているという通報がありました。
ミャンマーはICC規程非締約国であるが、バングラデシュはICC規程締約国です。
2018年4月9日、ICC検察官は予審裁判部門に対して、規程19条3項に基づき、「裁判所は、規程12条2項(a)に基づいて、ミャンマーからバングラデシュへのロヒンギャの人々の追放の容疑について、管轄権を行使できるか」という問題についての決定を求めました。
その他の関係者による見解(被害者の諸団体、バングラデシュ(秘密)、法廷助言(5通))が出されています。また、ミャンマーは非締約国ですが、見解提出の招待が送られました。ミャンマーは協力を拒否し、代わりに条約法条約34条を参照し、ミャンマーは、非締約国として、ICCにおいて検察官との訴訟に参加する義務はなく、ICC書記局から発せられる口上書を受け取る義務さえない、とする旨のプレスリリースを発行しました。
本件の論点
①裁判部はこの問題について決定を出す権限があるか
②ICCは被締約国から締約国への住民の追放に対して管轄権を行使できるか
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