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#290:小森収編『短編ミステリの二百年 4』

 小森収編『短編ミステリの二百年4』(創元推理文庫, 2020年)を読んだ。本書は全6巻のシリーズの第4巻にあたる。13編の作品に加えて、第1巻から連載されている、解説を兼ねた編者による大長編評論(本書では約300ページ分)が収録されている。

 これまで読んできた第3巻まででは、個人的には感銘を受けなかった作品も少なくなかったのだが、本巻に収められている作品は、私にとっていずれ劣らぬ魅力的な作品であり、個人的には満足度が大変高い巻である。編者による連載評論も、これまでと同様にとても興味深く読ませてもらった。

 そんな平均的に高水準の作品の中でも、個人的にまず推したいのは、ウィリアム・P・マッギヴァーンの「高速道路の殺人者」。短編というよりは短めの中編といった方が適切だと思われる分量の本作は、間然とするところのないサスペンスが見事。1950年代の作品だが、原作に忠実に映像化しても現在でも十分に通用する傑作だと思う。きっと、実際に何度か映像化されているのではないだろうか?

 シャーリー・ジャクスンの「家じゅうが流感にかかった夜」は、ともかく愉しい。実体験が元にあるのではないかと思われるお話で、読んでいるうちに、ニヤニヤ笑いが止まらなくなる。ところで、この作品の「謎」は、きちんと読めば解けるようになっているのだろうか?

 リチャード・マシスンの「獲物」は、ひたすら恐ろしい。シンプルなストーリーだが、作者の腕の冴えが光る。本作も映像化に向いている作品だと思われるが、実際に「トワイライト・ゾーン」でドラマ化されたことがあるのでは?とも想像される。現在の技術で映像化しても、引き締まった短編映像作品に仕上げることができるのではないだろうか。

 マージェリー・フィン・ブラウンの「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」は、何とも不思議な作品だが、強烈に心に残る。編者も連載評論の中で指摘しているように、この作品がミステリに分類される作品なのかというと、そういう読み方でいいのかどうかよくわからないところもあるけれど、歴史的事実としては、1970年のMWA賞の短編賞(エドガー賞)に輝いた作品であるとのこと。ミステリであるかどうかはさておいても、インパクトの強い作品であることは間違いないと思う。

 第5巻も、読むのが楽しみである。