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#162:早坂吝著『探偵AIのリアル・ディープラーニング』

 早坂吝著『探偵AIのリアル・ディープラーニング』(新潮文庫, 2018年)を読んだ。新潮文庫の中の「新潮文庫nex」というシリーズの1冊という位置づけ。カバーのイラストや装丁、造本も、本家の新潮文庫とは一線を画している。「ライトノベル以上、一般の文芸書未満」という感じのコンセプトという印象。

 著者の作品は、過去に『○○○○○○○○殺人事件』(講談社文庫, 2017年)を読んだことがあるのみ。「題名当てミステリ」(?)として一部で話題になった作品で、まあ、よくもぬけぬけと(笑)このような作品を長編で書けるものだなあと、感心半分、呆れること半分というのが私の感想だった。

 本作を読んでの感想は、ティーンあるいはヤングアダルトをターゲットとした、ミステリ仕立てのキャラクター小説といったところ。エラリー・クイーンとその諸作品に対するオマージュや、先行諸作品からの引用的な設定や展開など、ミステリマニアならニヤリとさせられる部分もあるのだが、そうした部分的なモチーフはともかくとして、一つの作品として見た場合には、「大人」の読書には少し辛いかなというのが、私の率直な感想である(「あり」か「なし」かで言えば、正直なところ「なし」というのが個人的な意見)。メインキャラであるAIの「探偵」に最初に「ディープ・ラーニング」させる方法と、敵役(?)に「ディープ・ラーニング」させる方法など、まあ、何というか(脱力)。

 とは言え、こうした作品を入り口に、国内外のミステリ作品の広大な世界に歩み入る読者が現れるなら、それはそれで素敵なことではあると思う。しかし、なかなかそうは問屋が卸さないか(笑)