#59:小森収編『短編ミステリの二百年 2』

 小森収編『短編ミステリの二百年 2』(創元推理文庫, 2020年)を読んだ。私は読み始めの頃からミステリはほぼ長編しか読まないという偏りぶりで(お気に入りの作家の短編は例外)、短編を心から楽しんで読むようになったのは40代に入った頃からではないかと思う。なので、こうしたアンソロジーの収録作の大半は未読の作品であり、個々の作品に対する好き嫌いや質の評価とは関わりなく、読むのが楽しくて仕方がない。実際、本書に収録されている11作品は、すべて未読であった。

 本書の中で私が好むのは、ダシール・ハメットの「クッフィニャル島の略奪」とロイ・ヴィカーズの「二重像」。レイモンド・チャンドラーの「待っている」は世評が高いようだが、私はそれほど好まない。

 本シリーズの特徴の一つは、収録作品に加えて、編者による長編評論が各巻に分載されていることである。これが私にはとても面白く、勉強になる(ネット上のレヴューを見ると、文句をつけている読者も少なくないようではあるが)。特に、私自身とは異なる視点や、評価のポイントが述べられていると、「そういう読み方、評価の仕方があるのか」と考えさせられるのが楽しい。単に作家たちや作品の時代背景が述べられるばかりでなく、ところどころでわが国におけるそれらの受容史とそれに対する編者の見解が述べられているのが興味深い。

 作品を読むことを楽しんで、さらに編者の評論を読むことを楽しめるという、「一粒で二度美味しい」好アンソロジーだと思う。第3巻以降、続きを読むことが楽しみである。