見出し画像

『2022 fromis_9 concert LOVE FROM. IN JAPAN』からコンサートを学ぶ

fromis_9のコンサートに行くことが出来たので感想を綴ります。メンバーに対する感想は他のプロバに任せて、私は一つのコンサートとしてどのような感想を持ったのかをひたすら述べていきます。ちなみに推しメンはナギョンです。

セットリスト

- OPENING VCR
01. Somebody to Love 
- JUNCTION
02. Glass Shoes(LOVE FROM. ver.)
03. DM
- MC 1
04. FUN! (JP ver.)
05. Miracle

- BRIDGE VCR 1
06. Starry Night
07. 0g
- MC 2
08. WE GO
09. LOVE BOMB(JP ver.)
10. Airplane Mode
11. FLY HIGH

- BRIDGE VCR 2
12. Love is Around(セロム、ハヨン、チェヨン)
- BRIDGE VCR 3
13. Hush Hush(ジウォン、ジソン、ソヨン、ナギョン、ジホン)
14. Cheese
15. Up And
16. Stay This Way 

- BRIDGE VCR 4
17. Feel Good (SECRET CODE)  (Jazz ver.)
18. Escape Room 
- MC 3
19. Rewind(Dance Break ver.)

- ENCORE VCR
E01. Blind Letter 
- MC 4
E02. Mulgogi
E03. Think Of You

※以下、タイトルではなく曲順で進めていくことがあります


要点

  1. コンセプトの提示・表現に多くの楽曲を使用する必要はない

  2. ”楽しくなれる曲”をコンサートの軸として複数用意し、均等且つ要所に配置する

  3. 曲の並びは、気持ちの良い繋ぎよりも楽曲が持つ世界観や物語を重視した流れを作り、コンセプトと別軸で表現する

  4. 歌唱力のあるメンバーの存在は、コンサートにおいても大きな要素になる

  5. キャノン砲の複数回使用(日本と韓国の違い)


0.『LOVE FROM.』が楽しかったのは、楽曲がセットリストのどこに配置されても”正解”になり得るから

まず、このコンサートは他のアーティスト・他のコンサートと背景が異なることを確認しなければなりません。

  1. 初めての単独コンサート(たくさんの楽曲が初めてコンサートに落とし込まれる=1つの正解が提示される)

  2. ステージ初披露の楽曲が多い(イヤホンから聴いているイメージとは違う視覚的なイメージが生まれる)

2017年9月結成・2018年1月デビューということで、結成・デビューから約5年経って初めての単独コンサートになります。音楽祭やカルチャーフェスティバルでの数曲披露とは全くの別物です。世の中の動きが変わったとはいえ5年もコンサートを開催していないわけですが、逆にこれは大きなチャンスです。

このnoteでも取り上げている日向坂46は1年に何度もコンサートを開催します。しかしコンサートの開催頻度と新曲発表の頻度が嚙み合っていないことと、頻繫なコンサート開催にも拘らず制作陣による「定番」という名の思考停止が、セットリストや演出のマンネリ化を生み出しています。普段そんな状況を目の当たりにしている私からしたら、約5年のうちに発表された約40曲がコンサートでどのように扱われるのかという正解が初めて提示されるわけです。「この曲はこういう使われ方をするのか!」「その曲の後はそれだよね、分かる」など、ワクワクしないはずはありません。だからこそオープニングの『Somebody to Love』には衝撃を受けましたね。この選曲はコンセプトまたは世界観から成るものですが、セトリ考案屋やセトリ予想屋の中にこのような使い方をした人はいなかったのではないでしょうか。それぐらい精巧で綿密に作られた完成度の高いコンサートであること、そして5年間の集大成として位置付けされていることが伺えます。

また、以前考察した「メインの使い方」に関してですが、強いて1曲挙げるなら『Rewind』でしょう。次点で『Feel Good (SECRET CODE)』でしょうか。活用法としては「クロージングブロック(≠ クロージング)」の応用ですかね。

1.コンセプトの提示・表現に多くの楽曲を使用する必要はない

このコンサートは、アンコールを除いて大きく4つのブロックに分けられます(本稿冒頭のセットリストでの空白行が区切りを表しています)。クロージングブロックは「カッコいい」に振り切ってるので、それまでの3つで「楽しい」という満足感を高めておきたいところです。またブロックの作りとしては、まずコンセプトを表現したVCRをブリッジとして流し、それに付随する楽曲を披露します(もしくはその楽曲に合わせたVCRを制作)。そこからはコンセプトや世界観にこだわりすぎない選曲で、「コンセプトまたは世界観」と「コンサート本来の楽しさ」を共存させ、パッケージとしてのバランスを取っていきます。

ここで重要なのが、「(全てのコンサートと差別化するための)コンサートコンセプトを表現するには、BRIDGE VCR後の1曲ないし2曲で十分」だということです。そしてそれらを均等に配置することで世界観を壊さない、つまりコンサート本来の楽しさの裏にはしっかりとしたコンセプトが存在することを示すことが重要で、でもそれはブロック内でクドいくらい表現する必要はない、ということです。またこれが今回機能していた大きな要因として、VCR直後の楽曲にバラードが多く起用されていたこともありますね。このおかげで「楽しい曲」を欲し、緩急として効いてくるわけです。もちろんこれは、ステージセットや映像、照明、メンバーのパフォーマンスや容姿、「実際に存在したんだ」という紛れもない事実…etcによる補正も関係してくるでしょう。

コンサートは、①コンセプトや世界観の表現、②音楽の基本である「楽しい」の表現、この2つで構成されていると考えます。大きなコンセプトがあるのは当然、それを打ち出さなければいけないものの、全ての曲で抜かりなく映画のように表現することは難しい。また、コンサートの基本である「楽しむ」構成も、特にオフラインでは感情を共有出来るのでさらに重要。そのバランス・塩梅が非常に上手いコンサートだったなと感じました。


2.”楽しくなれる曲”をコンサートの軸として複数用意し、均等且つ要所に配置する

fromis_9は、量産型ガルクラ路線(ヒップホップ路線)に意地でも擦り寄りません。私はそのような「非現実的な非現実」っぽい、日常の隣にはそぐわない楽曲が好きではありません。対してfromis_9は、ヨチンを意識したデビュー初期から、近年すっかり定着したディスコ路線まで、日常の一部として隣にいてくれる楽曲がとても多い。メンバーの容姿や仲の良さ、ナチュラルで着飾らない姿だけでなく、楽曲が好みであることもプロミを推す理由です。

そんな日常の一部としていつも隣にいてくれる楽曲たち、特にBPMの高いテンションの上がる楽しい曲は、当然コンサートでも大活躍します。そういった楽曲がプロミには多いので必然的にコンサートも楽しくなります。私はこれらがどのように扱われるかを注目していました。そして今回「楽しい曲で楽しくなる」時間に起用されたのは『FUN!』、『WE GO』『LOVE BOMB』、『Stay This Way』でした。

「楽しくなれる曲で楽しくなる」ことはコンサートの基本です。それを(クロージングブロック以外の)全てのブロックで用意したことは、「会場の広さ」や「フルサイズで進めるかライブサイズで進めるか」によってセトリの作りが変わってくることも関係していますが(この記事の第3章を参照)、メンバーのパーソナリティや仲の良さ、また「明るい楽曲が多い」ことや「日常の一部として隣にいてくれる」などというグループの特長を活かしたセトリとして大きく機能していました。

歌えるメンバーが多いことによってバラードを積極的にセトリに組み込めて前面に押し出せる(後述)。その"静"に振り切れば振り切るほど、プロミの特徴である明るい楽曲、つまり"動"が活きてくる。この「コンサートにおいて観客を飽きさせない」ための緩急がグループの特長と掛け合わさると、コンサートの完成度も高まりますし、観客の満足度も高まります。クロージングブロック前の12を踏まえた13〜16の流れと層の厚さは本当に素晴らしいと思います。


3.曲の並びは、気持ちの良い繋ぎよりも楽曲が持つ世界観や物語を重視した流れを作り、コンセプトと別軸で表現する

このコンサートのセットリストは、「流れが気持ち良いDJプレイのような作り」ではなく「役割に無駄のないそれぞれに意味を持たせた作り」でした。例えば、『Starry Night』→『0g』は歌詞の内容やテーマが似ていますし、『Airplane Mode』→『FLY HIGH』は「飛行機で空高く飛び上がった」という意味で(少し安易ではありますが)繋がっています。もちろん2章の「楽しくなれる曲で楽しくなる」ために起用された4曲(『Cheese』と『Up And』も近い役割)も、コンセプトまたは世界観を表現するためのバラードも、BRIDGE VCR1に繋ぐための『Miracle』も、『Feel Good (SECRET CODE)』を活かすための『Escape Room』も、全てセットリストにおいて無駄がありません。

こういう作りは、特に"意味の強い"コンサート(冒頭で説明した通り)においては力を発揮します。初めての単独コンサートという「楽曲がコンサートでどのように扱われるのかという正解が初めて提示される」中で、これ以上ないセットリストではないでしょうか。また、「楽曲先行型ではなくコンセプトが後に決まってそれに合わせて作るコンサート」としても満足度は高かったです。なぜなら1章で説明した通り[BRIDGE VCR→1曲ないし2曲]で世界観を表現することが可能だったからです。このおかげで本章冒頭の4曲(0607、1011)もこのような組み方をする事が出来たのです。

このように、曲の繋ぎよりも楽曲が持つ世界観や物語を重視すると、コンサートコンセプトと併せて2本の軸が出来、完成度も厚みも増やすことが出来るのです。

4.歌唱力のあるメンバーの存在は、コンサートにおいても大きな要素になる

楽しむ時間、見惚れる時間、そして聴く時間、『LOVE FROM.』にはこの3つがそれぞれ機能していた素晴らしいコンサートでした。これは制作陣ももちろんですが、紛れもなくプロミたちの実力が十二分に発揮された結果だと思います。

「楽しむ時間」と「見惚れる時間」で高得点を出せるプロミだからこそ、今回の聴く時間として活躍した楽曲(『Somebody to Love』『Starry Night』『0g』『FLY HIGH』『Love is Around』)が機能しました。そしてバラードの雰囲気を引っ張りすぎずにすぐに違うモードに切り替えることも大切だと学びました(もちろん曲間が重要)。歌唱力のあるメンバーの存在は、コンサートにおいては大きな要素になるため、構成や演出の選択肢が増えるというわけです。

5.キャノン砲の複数回使用(日本と韓国の違い)

ここでも書いたのですが、キャノン砲問題に対して個人的に興味があります。日本だと、一般的には本編ラストスパートブロックかアンコールラストに使用されますよね。でも今回は、序盤の『DM』、中盤の『WE GO』、クロージングの『Rewind』の計3回使用されました。これはもしかしたら初めて体験した人やその発想自体がなかった人もいるのではないでしょうか。

キャノン砲が複数回打たれた理由の一つに、「韓国は、音楽番組でもキャノン砲を使用するためハードルが低く、1回だけ使用するものという考えが薄い」ことがあると考えます。つまり「キャノン砲=コンサート」というイメージが日本ほど強くない。打つタイミングはイントロではなく大サビ(イントロで打つところが見たいけど短いイントロが主流なのでしょうがない)なのは、フルで聴いても飽きないように計算されて制作されているK-POPならではの特徴かもしれません。

キャノン砲に対する見解は上述したリンクに書いてあるのでここでは割愛しますが、私はこの「キャノン砲を複数回使った」という事実に感嘆しました。変な言い方をすれば「分かってるなぁ」という感じですかね。コンサートは「いかに観客の予想を裏切って期待を超えられるか」がカギになると思っているので、楽曲をさらに勢い付け、観客をさらに昂らせることが出来たのなら大成功だと思いますし、こうやって私の理想を叶えてくれた(?)fromis_9には感謝したいです。


終わりに

これだけ大好きな韓国のアイドルは初めてですし、これだけ大好きなアイドルも久しぶりなので、ユリグドゥ(もしかしたらオープニングかも)でメンバーの顔が照明によって鮮明に認識出来た瞬間に泣きそうになりました。こんな体験は初めてです。テンションが上がるとかではないんですよね。「確かに自分の目で憧れの彼女たちを捉えている」「確かに彼女たちは目の前にいる」「確かに彼女たちと同じ時間を過ごしている」「"彼女たちにとって日本で初めての単独コンサート"という素晴らしい機会に立ち会えている」など、もちろん登場した瞬間から今までずっと噛み締めていたんですよね。そしてこれは夢のようで夢ではないんだと。紛れもない事実なんだと。本当に幸せな時間でした。

そして「2日後にはなんとさらに近くで会えて且つ、コンサートとは違った形のコミュニケーションが取れるんだ」という楽しみが、帰り道をさらに楽しい時間にしてくれました(さらに2日後は日本の音楽番組に生出演してくれた!)。これに関しては、マネージャー含めたスタッフの皆さまに感謝ですよね。本当にありがとうございます。

コンサートの話に戻ると、私は特に『Mulgogi』が聴けたのが最高でした(しかもアンコールで披露という素晴らしいセンス)。このアフリカン・アメリカンでファンキーでディスコティックな楽曲が私のルーツであり、それらを近年のメインとしてる彼女たちなので、「まだまだ行くぞー!」的な掛け声(実際になんて言ったかは覚えてない)からあのイントロが流れた瞬間の昂り。そしてラストには『Think of You』。思い返すだけでアガりますね。もっと踊ればよかったかな。

1人のプロバとしてもコンサートオタクとしても大満足だった『LOVE FROM.』。次は、ソヨンがMCでも言ってたようにもっと大きな会場でコンサートが開催出来るといいですね(ちなみにジソンもサイン会で直接言ってくれました)。それまでにアリーナクラスのセットリストを考えておこうかな。

fromis_9のみんな、スタッフの皆さま、本当にお疲れ様でした!次の記事はサイン会のレポと感想です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?