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自己信頼とは何か?

前回の記事では、個人と組織の関係が変わりつつある中、自己信頼の重要性が高まっているという話をしました。私自身、自己信頼が弱いことに気づき、どのようにすれば自己信頼を持つことができるのかを模索するようになった経緯もご紹介しました。

自己信頼とは何でしょうか?文字通り、自分を信頼することではありますが、自分を信頼している状態と、信頼していない状態の違いは何か?自己信頼と自己信用との違いは何かと考えると、よくわからなくなったりします。この記事では、自己信頼とは何かについてお話しします。

社員からの問いかけ

まずは、自己信頼の定義をしておきましょう。

自己信頼の定義(落合の考え)
「無条件に自分を信じること」

とてもシンプルな定義ですね。私自身、この定義をとても気に入っています。シンプルでありながらも、本質を突いているという確信みたいなものを持っているからです。

無条件というのは、平たく言えば「どんな場面、どんな時でも」ということです。「ある特定の場面、特定の条件が満たされた時」ではないということです。「無条件」の反対は、「条件付き」です。すなわち、無条件というのは、いかなる条件もついていないということになります。

私自身、この意味を深く知った出来事があります。お客様との打ち合わせの後、一緒に案件を手がけていた社員のNさんと食事をしていたときに、Nさんが聞いてきました。

「社長は、自分を信頼していますか?」

お客様との打ち合わせの中で、職場における人間関係や、相互信頼ということをテーマに議論をしていたので、信頼というテーマがでてくることは自然な流れでしたが、自分自身に問いが向けられたことに少し驚きながら答えます。

「そうだね。信頼しているよ。やろうと思えばできるという自信を漠然と思っているよ」

そのときに、Nさんがこのように言ってきたのです。

「もし、落合文四郎が、アルーの社長でなくて、BCGの出身でもなくて、大学院卒という学歴もないとしても、同じことが言えますか?」

ドキっとする質問であったと共に、多くの気づきを貰えた問いかけでした。その答えは「No」であることに気付かされた問いでした。自分が自分を信頼していると思っていたのは、自分が大学院まで勉強をしてきたこと、BCGで一人前のコンサルタントとしてやっていくことができたこと、起業をして一定レベルまで会社を成長させてきたことに依拠していたことは明らかでした。

私が、その当時私自身を信じていたのは、そのような条件が揃っていたからであり、無条件ではなかったのです。それは、自己信頼ではありませんでした。(詳しくは、今後の記事でお話ししますが、条件付きで信じることを自己信用と呼びます)

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意識の意識化にヒントがあった

前回の記事でご紹介した友人のKさんとの会話、社員のNさんとの会話を通じて、自分の自己信頼は弱いことに気づき、「自己信頼とは何か?自己信頼を持てるようになるにはどうすればいいのか?」ということが自分の長年の問いとなっていました。

意識の意識化というテーマで1000時間以上の探求を行ってきたことは以前の記事でご紹介致しました。私自身に問いが立っていたこともあり、自己信頼とは何か、自己信頼を生み出すメカニズムとは何か、についてもそのプロジェクトにおける探求対象となりました。

自己信頼が弱いことに気付かされ、それが場面によってネガティブなインパクトを与えることにも薄々気づきながら、どうすればいいのかわからない日々が続いていた状況でした。

そのような状況の中、意識の意識化を探求している中で着想を得たのです。それは自分にとって、貴重な発見でした。暗闇の中から新しく日が差してくる瞬間を見たような、それでいて、その光はまだ弱々しく、本当に日が昇ってくるのかがわからないような感覚でした。

その日から、その一筋の光を頼りに、自分の中で実践し始めます。その一筋の光とは、「自分をありのままに捉える」ということでした。

日の出

自分が考えていることは、自分の全てではありません。考えていることと、感じていることが異なることがあります。例えば、本当はやりたくないという否定的な気持ちがあるにも関わらず、周囲からの期待や慣習やルールからすると、自分はやるべきだと思うという場面が当てはまります。

あるいは、自分の心の底から願っていることと、現実を目の前にして問題に対処しようとしている自分の思考が違っていることもあります。

私の例でいえば、事業撤退の決断時期が遅れてしまうということがありました。

ある事業の立ち上がりが悪く、携わっているメンバーのエネルギーが十分にでているとは限らない状況を心の底では感知しながらも、これまでの経緯や自分の発言との一貫性や、株主などへの約束、撤退するときにメンバーがどのように思うかなど、様々な不安や恐れから、事業存続が正当であることについて思考でいろいろなロジック付けをしてしまい、事業撤退の決断が遅れてしまったことがあります。

当時の私は、「自分の頭で考えていることが自分のほぼ全てでした」。心の底の願いや、無意識に感じていることは、十分に捉えることができていませんでした。

肯定と否定

自分をありのままに捉えるというのは、自分が頭で考えていることだけではなく、感情や五感や直感などの自分が心や身体感覚で感じ取っていることを否定したり、無視したりせずに捉えることです。

先ほどの事業撤退の例でいえば、私の中に次にようなことが浮かび上がっては、消えて行くような状況でした。

頭の中で考えていること(思考)
▼この事業は、自分が思い入れをもって始めたものであり、初志貫徹したい
▼株主にも、この事業で成長を加速させていくストーリーを語っており、その約束を果たしたい
▼事業部のメンバーには、この事業の有望性を語ってきており、話してきたことの一貫性を保ちたい
▼事業の現状は、必ずしも当初の想定通りになっていないが、ピポットする仮説はあり、それがうまくいくことを示す事象もでてきている(理屈は一定程度成り立つ)

心の中で感じていること(感情・身体感覚)
▼株主や事業部のメンバーに対して、これまで話したことと翻意するのは、自分の一貫性が疑われる気がして嫌だ。怖い。
▼自分が思い入れをもって始めた事業が撤退するとなると、何となく自己否定されている感覚がある
▼事業の進捗状況を確認したり、報告したりする場面では、心がざわつくことが多い

直感していること(直感)
▼心の底からやりたいことは、多くの人に選択肢を提供すること(この事業は1つの形態ではあるが、それだけが唯一の形態でもない)
▼事業部のメンバーが、一人ひとりの主体的真理につながりながら、イキイキと働ける環境を創りたい(この事業は、その1つの形態であったが、現状はその理想とギャップがでてきている)

この中には、お互いに相容れない、矛盾している要素があります。そして、相容れないこと、矛盾していることを自分の中に抱えておくことはとても辛いので、無意識的にどれかを選択して、どれかは無視する、なかったことにするということをやってしまいがちです。

私の場合は、頭で考えていることが優先され、心の中で感じていることや、直感的に捉えていることを陰に追いやってしまうことが多くあります。このケースの場合もそれが当てはまっています。

自分をありのままに捉えるということは、このような相容れない、矛盾している要素も含めて、その全てを否定せずに捉えるということです。「そう考えているんだ」「そう感じているんだ」ということを全て許容して、矛盾していることも許容するし、受容するという感じになります。

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全てを否定せずに捉えるという感覚に慣れてくると、その次に「これらの全てを捉えているのは誰だろう?」ということに意識が向くようになります。それがメタ的な自己です。すなわち、相矛盾する要素全てを捉えている自分が、いまここに確かにあることに気づきます。

メタ的な自己から、ありのままの自分を捉える感覚

このメタ的な自己から、ありのままの自分、すなわち、自分の中にある相矛盾する要素全てを捉えることを自己一致と私は呼んでいます。ありのままの自分と、意識下にある自分が一致しているという意味合いになります。

そして、自己一致を積み重ねていくことが自己信頼につながります。

自己一致というのは、瞬間瞬間の感覚であり、「いまここの瞬間において、自分の中にある全ての要素をありのままに捉えている」という感覚ですから、自己信頼という「無条件に信じること」とは違うものの、お互いに密接に関連しています。

瞬間瞬間の自己一致という感覚を積み重ねていくことによって、「いつでも自己一致することができる=いつでもありのままの自分を捉えることができる」ことが、自己信頼につながるのです。

いつでも自己一致することができる

いつでもありのままの自分を捉えることができる

自己信頼(無条件に自分を信じること)
自己信頼 = Σ自己一致
(Σは、「総和」という意味です)

私自身、このことに気づいてから、自己一致をするように心がけてきました。特に、自分の中に相矛盾した感覚を感じたときや、感情的な起伏がおきているときに、自己一致することによって、自分の中で何が起きているのかを捉えるようにしてきました。

最近では、いつでも自己一致できるような感覚を持つことができ、その感覚の積み重ねとして、自己信頼は以前に比べて、違う質のものになってきている実感を持っています。自分の中での自己信頼に関する問いに、心の底から納得できる答えを見つけた感じでした。

本日の問いとなります。(よろしければ、コメントにご意見ください)

・思考と感情が一致していない場面、直感と思考が一致していない場面など、自分の中に矛盾する要素が並存している状況があるとすれば、それはどのような場面でしたか?

・相矛盾する要素全てをありのままに捉えるという自己一致ができたとすると、あなたはどのような感覚・感情を持つことができそうでしょうか?

What is self-trust?

In my last article, I talked about the growing importance of self-trust as the relationship between individuals and organizations is changing. I also introduced how I myself realized that my self-trust was weak and began to search for ways to have self-trust.

What is self-trust? Literally, it means to trust oneself, but what is the difference between the state of trusting oneself and the state of not trusting oneself? When we think about what is the difference between self-trust and self-credit, it can become unclear. In this article, I will talk about what self-trust is.

A question from an employee

First, let's define self-trust.

Definition of self-trust (Ochiai's idea):
To put unconditional reliance on oneself.

It's a very simple definition. I myself like this definition very much because I feel confident that it is simple yet essential.

"Unconditional" means, in layman's terms, "any situation, any time". It doesn't mean in a particular situation or when a particular condition is met. The opposite of unconditional is conditional. Therefore, "unconditional" means that there are no conditions attached whatsoever.

There was an experience that made me deeply aware of this meaning. After a meeting with a client, I was having dinner with Ms. N, an employee who was working on a project with me, and she asked me a question.

"Do you trust yourself, Bunshiro-san?"

In the meeting with the client, we had been discussing human relations and mutual trust in the workplace, so it was natural that the theme of trust would come up, but I was a little surprised that the question was directed at myself.

"Yes, I do. I have trust in myself. I'm somewhat confident that I can do it if I put my mind to it."

It was then that Ms. N said this to me.

"Would you say the same thing if Bunshiro Ochiai was not the president of Alue, did not come from BCG, and did not have a graduate degree?"

It was a frightening question, and one that gave me a lot of insight. It was a question that made me realize that the answer was "No". It was clear to me that my confidence in myself was based on the fact that I had studied until graduate school, that I had been able to become a full-fledged consultant at BCG, and that I had started my own company and grown it to a certain level.

My reliance on myself at that time was not unconditional, because those conditions were there. It wasn't self-trust. (More on this in a future article, but conditional belief is called self-credit.)

A clue was in the ISHIKI(consciousness) management

Through the conversations with my friend Mr. K mentioned in the previous article and with the employee Ms. N, I realized that my self-trust was weak and asked myself, "What is self-trust? What is self-trust? How can I learn to have self-trust?" These were questions that I had been asking myself for many years.

In a previous article, I mentioned that we had been working as a team on a 1000+ hour quest project on the topic of ISHIKI(Consciousness) Management. As a result of my own questioning, what is self-trust, and what are the mechanisms that create self-trust, were also explored in that project.

Finally, I found a clue about self-trust in the ISHIKI(Consciousness) Management. It was a valuable discovery for me. I was aware that my self-trust was weak and that it had a negative impact on me in some situations, but I didn't know what to do about it.

I was in a situation where I was aware that my self-trust was weak, and I was also dimly aware that this could have a negative impact in some situations, but I didn't know what to do about it.

Finally, in the midst of all this, I had an idea that I was questing for in that project. It was a valuable discovery for me. It was as if I had seen a new moment of daylight coming out of the darkness, yet the light was still faint and I was not sure if the sun was really rising.

From that day on, I would rely on that ray of light and begin to implement it in my own life. That ray of light was "to perceive myself as I am."

What we think is not all that we are. Sometimes what we think and what we feel are different. For example, this applies to situations where we have negative feelings that we don't really want to do something, but according to the expectations, customs and rules of the people around us, we think we should do it.

Alternatively, what we hope for from the bottom of our hearts might be different from our thoughts as we try to deal with the problem in front of our reality.

In my example, there was a delay in the timing of my decision to withdraw from a new business.

Although I sensed deep down that the business was not taking off well and that the members who were involved in it did not necessarily have enough energy, I made various logical assumptions about the legitimacy of continuing the business and delayed the decision to withdraw from the business due to various concerns and fears, such as consistency with the past history of the business and my own statements, promises to shareholders and others, and how the members would feel when I withdrew from the business.

At that time, "what I was thinking was almost everything about me". I wasn't able to fully capture my deepest wishes and what I was unconsciously feeling.

To perceive ourselves as we are is to perceive not only what we think with our minds, but also what we feel with our hearts and physical senses, such as our emotions, five senses, and intuition, without denying or ignoring them.

In the example of the business withdrawal I mentioned earlier, I was in a situation where the following things kept coming to my mind and then disappearing.

What I was thinking about in my head (thoughts)
▼This business is one that I started with a lot of passion, and I want to fulfill my original intention.
▼ I have told our shareholders the story of how we will accelerate our growth through this business, and I want to fulfill that promise.
▼ I have been talking to the members of the business unit about the promise of this business, and I want to be consistent in what I am saying.
▼ The current state of the business is not necessarily as we originally envisioned, but we do have a hypothesis that pivots the business, and events have shown that it will work (the logic is somewhat valid).

What I'm feeling in my heart (emotions, physical sensations)
▼ I don't want to change my mind about what I have said to shareholders and members of the business unit, because I feel that my consistency will be questioned. I am afraid of that.
▼ When a business that I started with a lot of passion is withdrawn, I feel as if I am somehow denying myself.
▼ I often feel uncomfortable when I have to confirm or report on the progress of my business.

What I intuit (intuition)
▼ What I want to do from the bottom of my heart is to provide choices for many people (this business is one form of it, but it is not the only form).
▼ I want to create an environment where each member of the division can work energetically while being connected to their own subjective truth (this business was one form of this, but there is currently a gap between this ideal and the current situation).

Some of these elements are incompatible and contradictory to each other. And because it is very painful to keep incompatible and contradictory things inside of us, we tend to unconsciously choose one of them and ignore or pretend that one of them is not there.

In my case, what I am thinking in my head often takes precedence, pushing what I feel in my heart and what I intuitively perceive into the shadows. This was also the same in this case.

To perceive ourselves as we are means to perceive all of these incompatible and contradictory elements without denying them. It's about allowing ourselves to think that way, to feel that way, to allow and accept the contradictions.

When we get used to the feeling of perceiving everything without denying it, we then become aware of, "Who is perceiving all of this? This is the meta-self. In other words, you realize that there is indeed a self here and now that captures all the conflicting elements.

A sense of perceiving oneself as one is, from the perspective of the meta-self

I call it self-congruence, which is the perception of the self as it is, or all the conflicting elements within the self, from the meta-self. The meaning is that the self as it is and the self in consciousness are in agreement.

And accumulating self-congruence will lead to self-trust.

Self-congruence is a moment-to-moment feeling, a feeling of "perceiving all elements within us as they are in the here and now moment," and while it is different from the "unconditional reliance" of self-trust, they are closely related to each other.

By accumulating a sense of self-congruence in each moment, "being able to be self-congruent at any time = being able to see ourselves as we are at any time" leads to self-trust.

Always able to self-congruent.

Always be able to perceive ourselves as we are.

Self-trust (unconditional reliance on oneself)
Self-trust = Σ Self-congruence.
(Σ means "total sum.")

Since I realized this, I have been making an effort to be self-congruent. In particular, when I feel conflicting sensations or emotional ups and downs, I have tried to grasp what is going on inside of me by self-congruence.

Nowadays, I have a sense that I can be self-congruent at any time, and as an accumulation of these sensations, I have a sense that my self-trust is of a different quality than before. I felt like I had found a satisfying answer from the bottom of my heart to my own questions about self-trust.

Here are the quests of the day. (If you'd like, please share your thoughts in the comments.)

・What situations, if any, have you found yourself in where contradictory elements existed side by side, where your thoughts and feelings did not match, or where your intuition did not match your thoughts?

・If you can become self-congruent and perceive all the conflicting elements as they are, what kind of sensations and emotions will you have?

Bunshiro Ochiai

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