【整形外科専門医が解説】腰痛について
腰痛とは?
確立した定義はありませんが、一番下の肋骨(あばら骨)からお尻までの領域に生じた痛みを腰痛と定義することが多いです。
痛み出してから4週間未満を急性腰痛、4週間から3か月未満を亜急性腰痛、3ヵ月以上持続するものを慢性腰痛と呼びます。
原因は?
原因の明らかな腰痛と明らかでない腰痛(=非特異的腰痛)に分類されます。
原因の明らかなものとして以下があります。
脊椎(背骨)由来
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、骨粗鬆症、がんの骨転移、脊椎感染症、脊柱靭帯骨化症、脊柱変形など
神経由来
脊髄腫瘍、馬尾腫瘍など
内臓由来
腎・尿路結石、腎盂腎炎、子宮内反症などの婦人科系疾患、妊娠、腹腔内病変、後腹膜病変など
血管由来
腹部大動脈瘤、解離性大動脈瘤など
心理性
うつ病、ヒステリーなど
一方、明らかな原因がない腰痛を総称して非特異的腰痛と呼びますが、実は大多数が非特異的腰痛であると言われています。
なお、筋・筋膜性腰痛などが非特異的腰痛に含まれます。
どのような人に起こりやすい?
職業によって頻度が変わってきます。
事務職では42~49%、看護職では46~65%、介護職では63%、技能職では39%、保安職では42%、運輸業では71~74%、清掃業では69%、建設業では29%と報告されています。
一定姿勢での作業や体への負荷が大きな作業が腰痛発症の危険因子と言えるでしょう。
また、職場でのストレス、人間関係の悩みなどの心理的要因も影響があると言われています。
特に心理的要因は腰痛が慢性化することにも影響してきます。
また、その他にも運動不足や喫煙も危険因子と言われています。
診断は?
まず十分な問診を行い、緊急で治療が必要な危険な腰痛かそうでない腰痛か判断します。
危険な腰痛(骨折、感染、腫瘍など)の場合は画像検査や血液検査などを追加し診断していきます。
危険でない腰痛であっても神経症状(おしりや脚にひろがる痛み・しびれ、脱力感など)を伴う腰痛も画像検査などを追加していきます。
その他、非特異的腰痛に関しては画像検査は必須ではないため後述の治療へ移っていきます。(もちろん適宜画像検査を追加することもあります。)
画像検査としてはレントゲン検査やCT検査、MRI検査などが一般的に行われます。
私の場合は骨の形態を把握するためにまずはレントゲン検査を行い、必要に応じてCT検査やMRI検査を追加するようにしています。
治療は?
薬物療法、ブロック注射療法、装具療法、理学療法(リハビリテーション)、手術療法などがあります。
薬物療法
頻用されるのは一般的な鎮痛剤ですが、神経痛に対する薬、抗うつ薬、麻薬性鎮痛薬なども使用します。
ブロック注射療法
神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射する方法です。
装具療法
腰椎ベルトやコルセット等を装着し腰部を保護します。
理学療法
ストレッチや筋力強化訓練などの運動療法、温熱療法、電気療法、牽引療法などを行います。
手術療法
原因の明らかな腰痛で、上記治療の効果が乏しい場合は各々の疾患に応じて手術療法を選択します。
腰痛が出現した場合、痛みを軽減させるため安静にすることが多いと思いますが、不必要に長期間安静にすると逆効果となってしまいますのでご注意ください。
我慢できる範囲内での活動量を維持することが重要です。
予防は?
腰痛の予防には運動療法が効果的です。
日本理学療法士協会の資料がとても参考になるので添付しておきます。
腰痛予防には運動習慣をつけることが重要となります。
ウォーキングなど無理ない範囲で継続できる運動を行っていきましょう。
※腰痛を来す疾患についてマガジン「腰痛」にまとめていきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?