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【虎に翼 感想】 7/10 針のむしろな寅子

週の真ん中水曜日。そろそろブーメランが戻ってくる頃だ。
「何がダメだったのかしら?」
穂高先生を「どうにもなりませんよ」と突き離した寅子が、今日は、各方面から詰められる回となっている。



花江との言い争いの直後の夜。

今までずっと、直明をもどかしく感じていた。実の弟の彼にしかできないことがあるはずだと。もっと寅子に言ってやってほしいと思っていた。
養ってもらっている遠慮や、頑張っている姉を応援したい気持ちがあった。
それにきっと、寅子に自分で気が付いてほしいと思っていたはずだ。
ここまでこじれてしまったのは残念でならない。だけど、新米教師、猪爪直明の特別授業により、寅子は今まで見えていなかったものが、ようやく見えてきたのだ。

あの答案……34点を84点に直しただけかと思ったら、元は31点のみならず、一つ一つの答えもマルに直していたのか……優未(脚本)、なかなかやるな。


数日後。

憩いの場、竹もとで寅子は昼休憩を過ごす。今まで団子を土産に持って帰ったことなどなかったのに。ここでもありがちな “父”、“夫” 像を見せてしまう。

先日の記事で、「取材後に竹もとを解散した女子修習生たちの会話がいくつも浮かんでくる」 と書いたが、まさかの寅子ご本人に聞かれてしまう展開になるとは。

家庭裁判所の裁判官は出世しない……ラジオの一件以来、彼女たちは、佐田寅子に憧れて法曹を目指した事実は封印しているのだろうな。
山本長官に吠えた佐田寅子に憧れるということ、同じ家裁の裁判官になるということが、今や奇異に見られ出世コースから外れるだけにすぎない事実。そして、価値を下げたのが、“家庭裁判所の母” である寅子本人であること。

そして、修習生たちにとっては、”女性が裁判官になる” ことは、ハードルではなくベースになっている。だから、裁判官としてどのポジションにまでいけるかが、関心事として普段の会話に出てきている。
大正生まれと昭和生まれのジェネレーションギャップ。そうやって時代は移ろいでいく。

あのとき、梅子が寅子の明律大学の同期だと紹介しておけばよかったな。そしたら修習生たちも気をつけただろうに。法曹資格者予備軍として、“佐田さんがいるかもしれない” と考える慎重さは必要だったと思うけど。梅子は自分からは言わないだろうし、寅子も本人の許可なく話す人じゃないから。梅子のことを給仕のおばさんくらいにしか思っていないから、聞かれること承知で話している。無意識の選民意識。
悪気がない梅子が、「悪気がないことは、彼女たちにも伝わっていると思うから」と、悪気のない者に怒り続けてきた寅子にフォローをする無限ループの昼。


午後。

東京家庭裁判所に、福田瞳が現れる。
福田夫妻の調停は、数日前の調停期日に瞳が現れなかったため不成立となり、地方裁判所での裁判に移ることが決まっていた。なお、今では、裁判も家庭裁判所で行われている(いきなり裁判を起こすことは不可ー調停前置主義)。
夫妻の離婚は決定的だ。連絡が取れておらず、瞳に調停不成立の意思を確認できなかったのだから、期日をあともう1回入れればよかったな。

女性裁判官、しかもあの佐田寅子が担当となったことによりもたらされた性別バイアス。期待値が大きかっただけに、その振り幅も大きいものとなってしまった。勝手に距離を詰め、相手が応えてくれないと分かるや、それが憎悪に変わり、ナイフを向ける。まるで、長文のコメントを送ったのになかなか返信がなく、返ってきても数行だったことにキレて、過去につけた “スキ” を全部外すかのような行為だ。

ビビリの小橋が、一番危険な位置で瞳から寅子を助けていた。こうやって、本作は人間の成長を丁寧に描いてくれる。
裁判官や弁護士は恨まれるおそれがある。殺人事件にでもなればニュースになるが、ニュースにならない話はそれなりにある。


いろいろありすぎた日の夜。

「犬も歩けば棒に当たる」
「ちりも積もれば山となる」
「知らぬが仏」
直明の明るい声が嫌味だ。

ここで優三さんの回想はズルいぞ……。
新しい時代を象徴する日本国憲法そのものの優三さん。その優三さんの言葉を芯として持ち、頑張ってきたのに、どこでどう道がそれてしまったのか……。
自分が帰ってきた途端、子どもたちが「シーッ」と声をかけて静まり返る疎外感よ……。
姫だなんだと甘やかされたまま優未が大きくなってしまうのは、一抹の不安がある。向き合うなら、今しかない。


「虎に翼」 7/10 より

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