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夏の造花、音韻と火焔

夏の造花が咲かない花火を想い、嗤う――

鮮明に映された網膜のオアシス
不可視の砂塵に喉を引き裂かれ
街はアルファベットの影に怯え
跫音、跫音が足跡も無く忍び寄ル__
心臓零れ落ちる旋律
施錠の無い出血に
暗いドアが緩やかに開かれた
転がる空き瓶
打擲されし薬瓶
青磁色の薬水、夕暮れに染まる街から乖離して――
彼方に唸る、炭化した雲に
化学式の救済を与えることもなく
その色が剥離するまで、傍観者でいた
「水色の街、夏色」
火焔の波紋で炭化した金魚が、間断なく降り注ぐ
海の無い街にもたらされた猟奇の跡
__或いは狂気のパノラマ
全ての波が過ぎ去った時
其処にあるのは無機質な熱砂だけだった
……此処は極彩色の鬼灯に暴かれる
揺れて揺れてゆれてゆれる草花
或いはありがちな終末論を踏みにじる南京猫は
「逆行する針時計」を愛でていた
全てが収斂の灼熱に覆われる時
遺されたセダンとブランケットは凍りついたままで__
再び錆びついた時計が
途方も無い熱病に揺るがされて唸る
輪廻する針時計
定かならぬ夕刻の水彩に
音韻と炎を焼べるのは
いつも夜に震えるカナリアだった
__誰もが飛び去った後
遺失物は緩やかに身を焦がし
やがて朽ち果ててゆく

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