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黄昏の境界線、スカートから溢れる薄荷飴は奇麗?

――少女のスカートから滲みでる薄荷飴、あまりにも清涼なる死と憂鬱。番号の無いマクドナルドに置き捨てた青い炎と純真を、MARLBOROの老爺が忘れて。忍び寄る夏は言葉にならない反響に反響に街の狂乱を重ね、どこかのミルクレープと秘密を暴いてしまった。

 車道に転がるミントの亡骸に、「彼と彼女は道を誤ってしまったから」と嘆くのはいつも、傘を持たないカナリアだったから、灰色の葬列は嘆くふりばかりをする。夕暮れ、蜃気楼、夏の記憶はいつもプールサイドに置き忘れられた、少女Aのコンバース。

 「薄荷の緑は偽りだからと、あなたはいつも嘯いていた」

 教室の片隅、カーテンから射しこむ七限目の始まりの夕日。机の上には枯れ果てた造花の痕が揺れて、誰の影もなく、沈黙だけが――

 独り、何者も照らさぬ街灯の下、午前二時の釘が錆びゆく音、薄荷飴砕け散って、その目に光が宿ることはなく――深淵の藍色だけが唯、遥か彼方の鐘の旋律を肯定して……

 閉じた瞳、それとも閉ざされた光。

 私の(ほんとうのなまえ)には希望と平穏があって、それに相反する不穏な心がいつも血飛沫をあげて、ほら、此処にまた、残酷なまでに鮮やかな絶望の血が、薄荷飴溶けた路上に拡がっている。

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