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「“ワケあり”りんご」 (Eテレ ドキュメンタリー)

幼い頃に産みの親を亡くし、施設で育ち、18歳で老夫婦の養女になった真由美さん。結婚後は失踪した兄の息子を引き取り、実の息子2人と共に5人家族で暮らしている。

ありがちな大家族モノかと思ったら、真由美さんの養父母はハンセン病患者だった。療養所で断種を条件に結婚した2人にも哀しい過去があり、高度成長期の日本でひっそりと暮らしてきたことが語られる。

どこにでもいそうな、"明るい肝っ玉母さん"そのものの真由美さん。辛い生い立ちなど微塵も感じさせないのは、養父母が慈しんで育ててきたおかげもあるのだろう。

わが子を産むことさえ許されなかった養母きみ江さんは、やんちゃだった頃の真由美さんが今や立派な母親になった事を、心底喜んでいた。血はつながっていなくても67歳にして母親になり、育てた娘が母親として息子たちを育てる姿に、子どもを産めなかった自分を重ねているのかもしれない。

「小学校の運動会を見にきて欲しい」と孫に言われ、嬉しいけれど悩むきみ江さん。醜い自分のせいで孫が虐められてはいけない、と。

そんな彼女のことを、孫は「ばあばを悪く言う子がいたら、その子は友達じゃない」と。「大丈夫だから見にきてね」と、優しい子に育っている時点で真由美さんの子育ては二重丸ではないだろうか。

「私たち、野菜でも果物でも人でも、ワケあり大歓迎です」そう話す真由美さんのたくましさは、素晴らしいと思う。そんな真由美さんに育てたのは、きみ江さんの優しさに違いない。

辛く哀しい思いをしたら、根性が曲がって性格が悪くなるか、その逆にとてつもなく優しくなるか、どちらかに思える。きみ江さんは後者だった。真由美さんにもそれが受け継がれているのは、まさに僥倖といえるだろう。

血がつながっているから家族、なのではない。お互いをどれだけ思いやれるかで、家族になれるかどうか決まるのだな、と考えさせられた良い番組だった。

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