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花よりもなほ (2006年 映画)

父の仇討ちを果たすべく信州から江戸に来た侍・青木宗左衛門(岡田准一)。人情溢れる汚い長屋で暮らすうちに、仇討ちの是非を考え始め葛藤する宗左衛門が出した結末は...。

是枝裕和監督の時代劇。どんな風に物語が展開していくのか、やっぱり真面目な作りかな?と予想して見始めた? 出だしから漫画チックというかコミカルなシーンも多く、是枝監督はコメディも撮れるのかと意外だった。

しかしやはり社会派の是枝さん。底辺を生きる人々の描写はピカ一。「長谷の子どもが貧乏をネタに、金持ち侍の子息に虐められる → とにかく仕返ししたい」という単純な話は、今も通用する差別の典型例である。そこから話が展開していく様も見事である。

この映画には、岡田くんや宮沢りえ、そして香川照之に古田新太、浅野忠信に原田芳雄など豪華キャストが揃っている。さらに、上島竜兵などお笑い芸人も多く出演している。中でも少し足りない孫三郎を演じたキム兄が、俳優に負けない存在感で勝負しておりとても良かった。

加瀬亮演じる、そで吉というキャラクターも素晴らしかった。貧しさを骨身に染みて生きている悲哀は、是枝監督ならではのスパイスだったのだろう。

そして、この長屋には主君の仇討ちの為に赤穂浪士が潜伏している。その設定には膝を打った。こういう風につかうのか、と。

クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)』を思い出させる手法が心憎かった。待てよ、こっちの方が10年以上先に出来ているということは...パクられた?

何にせよ面白い一本だった。

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