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原子の力を解放せよ (BS1スペシャル)

ドラマ「太陽の子」の原子核実験について、劇中にも登場した荒勝 文策(あらかつ ぶんさく)博士をメインにしたドキュメンタリー。

件のドラマでは、京大研究室の若き研究者たちの実験の様子などがリアルに描かれていた。そもそもその実験は荒勝博士が海軍から依頼され、爆弾を作るというよりは「純粋な原子核物理学の研究」として氏が引き受けたものだった。

だから終戦後に米国側が日本の核爆弾研究の有無を調査に来たとき、荒勝氏は自分たちの研究資料を包み隠さず見せたのだ。

にもかかわらず、米国の調査団は実験設備を破壊し、長年積み重ねた研究資料まで没収した。実直な荒勝氏の落胆は、いかばかりだっただろうか。荒勝氏と直接そのやりとりをした米国担当者は「軍の司令でやむを得なかったとはいえ、その行動を恥じて後悔している」と、後に語ったという。

また、荒勝氏は兵器開発につながりかねない危険な研究を引き受けた理由は「少しでも学生に研究をさせてやりたかった。兵隊にとられる研究者を減らしたかった」という主旨だったそうだ。

番組の中では他にも様々なエピソードが語られるが、印象的だったのは荒勝氏がドイツ留学時にアインシュタイン博士の授業を受け、自宅にお邪魔して語り合ったという事だ。さらに荒勝氏はアインシュタイン博士の事を「研究はもちろん、人格的にも桁違いに素晴らしい方だ」とベタ褒めしたという。

そしてもう一つ。終戦後広島の原爆について調査に行った荒勝氏の教え子たちが、1945年9月の枕崎台風の被害で亡くなったという話だ。せっかく終戦を迎えたのに、自然災害とはいえ巻き込まれて生命を失うなんて酷すぎると思った。

戦争について、原爆について、知らない事はまだまだある事を思い知らされた番組だった。世界中の優秀な科学者たちが力を合わせれば、兵器も作れるが平和も築けるはずだ。後者のために、その優秀な頭脳を活かして欲しいと切に願う。




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