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「ひとりぼっちの私たち」 (ドキュランドへようこそ)

イスラエルで、捨て子や育児放棄などの理由で親がいない赤ちゃんの世話をする女性・ラヴィッドに密着したドキュメンタリー。

このラヴィッドさん、赤ちゃんの世話に加えてホームレスへの食事支援など、常に他人の為に働いている。しかもボランティアで。高校卒業後イスラエル軍人として25年間勤め、その後ボランティアひとすじの生活を送っている事が番組内で語られる。

独身で、既に母親は無し。病身で老いた父親の世話もしているが、番組内でその父親も亡くなる。天涯孤独となった彼女は、養子を迎えようと動くのだが、結局はそれを断念しひとりで生きる事を選ぶ。

見れば見るほどせつなくなるのは、彼女と私が同い年で、父親を亡くすタイミングが似ていたからかもしれない。

ボランティア経験の豊富さから、養子縁組の担当者からも「あなたなら2人の養子でも任せられる、大丈夫よ」と太鼓判を押されるラヴィッド。なのに、踏み切れなかったのは何故だろう?

また、それとは別にこの番組を見ていて驚いたのは、身なしごの赤ちゃんを世話するボランティアの存在だ。日本にもそういうボランティアは存在するのだろうか?

番組の冒頭、泣いている赤ちゃんの映像と共にテロップが流れる。「食べ物や水を十分に与えられても、スキンシップがないと、赤ちゃんの成長は妨げられる。触られない状況が数週間続くと、赤ちゃんは死亡しやすい 進化心理学者 A・ランパート」と。

かつてどこかで目にした文章に「赤ちゃんは保護されるために愛らしい姿で生まれてくる。そんな赤ちゃんに周囲が手を出さずにはいられなくなるのは、自然な状態だ」というのがあった。私はその通り、当然だと思った。しかし現実はそうではない、という事件が頻発している。

このドキュメンタリーでも、出産後赤ちゃんを置いて行方不明になる母親が出てきた。望まない妊娠や金銭的な理由など、様々な事情があるのだろうが、赤ちゃんを放棄するのはやはり信じられない。

そんな捨てられた赤ちゃんを優しく抱きしめ、ミルクを与え、話しかけ、子守唄で寝かしつけるラヴィッド。身体の大きいラヴィッドに、安心して抱かれている赤ちゃんはより一層小さく見える。

「赤ちゃんは自分が捨てられたと分かるらしい。他の子より夜泣きも激しく、抱っこしてほしそうなそぶりを見せ、そしてボランティアが自分の母親ではないと気づいている」ボランティア同士がそんな会話を交わすシーン。誰もが誕生を祝福されるべきではないのかと、悲しくなった。

後半、ラヴィッドは父親を亡くした後ホームレスの食事支援に行く。その場で彼女は「これからはここにいる男性を父だと思うことにします」と言う。私も同じ事を思った。

このドキュメンタリーは、原題を「ALONE TOGETHER」といい、イスラエルが2019年に制作した。

国は違っても、女性たちの置かれた現実は似たようなものだと実感させられた50分の佳品だった。

https://www.nhk.jp/p/docland/ts/KZGVPVRXZN/episode/te/7MZG1PVRLY/

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