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映画「リスペクト」感想(ネタバレあり)

「リスペクト」見てきました。恥ずかしながら、モデルとなったアレサ・フランクリンは知らずに見に行きました。聴いたことがある曲は「Think」だけ。それもタイトルは知らなかったです。でも見終わったときには涙と鼻水でマスクの中はぐちゃぐちゃ。一人のクイーンの生き様に圧倒されていました。

アレサについては私なんぞが語るより上記のページをご覧ください。

1.ジェニファー・ハドソンの圧倒的な歌唱力

2時間半の映画の間中、ジェニファー・ハドソンの圧倒的な歌声が響き渡ります。「貴方を愛して」「Think」「リスペクト」「アメイジンググレイス」…どの曲もパワフルなんですが、その奥に言いようのない悲しみや哀切が感じられて胸を打たれました。映画の最後にオバマ大統領の前で歌う実際のアレサ本人の映像が流れるんですが、そこまでのジェニファーが演じていたアレサとの違和感がなさすぎて驚きました。生前のアレサ本人から彼女がこの役に指名されていたそうですが、それも納得です。

そして子ども時代のスカイ・ダコタ・ターナーの可愛らしく、でもパワフルな歌声もまた素晴らしいです。しかも、歌っているときの表情が輝くようで。本当に歌が好きなんだな、と感じさせてくれました。

2.絶対的なシンガーである前に一人の女性である。

唯一無二の声をもって生まれたアレサ。牧師であり、有名な公民権運動の指導者と親交の深かった父のおかげで、たぶん当時の黒人家庭の中ではとても恵まれた生活を送っていたと思います。そんなアレサですが、その父からの強権的な支配を受け、自分の意思では物事が進まない生活をずっと送っていました。物心ついたときから母とは別居で、その理由は父から母への暴力でした。さらに、父親の知り合いからの性暴力による妊娠、出産。成長し、父とは離れたものの、今度はマネージャーであり夫でもあるテッドからのDVや支配。そして、アルコール依存症。

常に男からの支配や暴力を受け続け、自分の行動を制限され、想いを打ち砕かれ。レコード会社に所属できても、思うような歌は歌わせてもらえず、ヒットも出ない。自分の歌いたい歌を歌いたい。私を解放して。彼女はずっとそう叫び続けているように見えました。会社を移籍してヒットを出し、カリスマのような存在になっても、ずっと心は窮屈なまま。周りの人に当たり散らし、お酒に逃げ、ついには歌えなくなる。

でもそのままでは終わらなかった。彼女の原点であるゴスペルのライブアルバムを出し、最大のヒットとなり復活。ラストの教会での「アメイジンググレイス」は凄すぎました。

この映画を見て、アレサは素晴らしいシンガーである前に、一人の女性である、ということを強く感じました。苦しい体験をし、もがいて苦しんで、それでも歌い続けた一人の女性。私たちと変わらない。世の中にいるアーティストやカリスマと呼ばれる人たちもきっと内面はそうなんだろうな、と思えました。世界中の人が、性別や国籍、人種、職業など関係なく、個人の尊厳を守られる世の中になることを願います。

自分自身のアーティストであれ。そして、自分のやっていることに常に自信をもて。(公式サイトより:アレサの言葉)





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