#011. イタリア代表、LIONVILLEが体現したAORの伝統。
はじめに
イタリア人で知らない人はいないと言われるジュゼッペ・ガリバルディ。
簡単に言えば、1860年に赤シャツ隊という私設部隊を率いて両シチリア王国を滅ぼした功績により、イタリア統一を果たした英雄とされている。
恐らく、彼がいなければイタリアの統一はもっと遅かったかも分からないが、母国では空母の名前に使われるなど、歴史上の偉人としても名高い。
時は2022年、同じくイタリア出身のLIONVILLEが発表した5作目「So Close To Heaven」を聴いて、彼らこそ現代におけるAORの英雄ではないかと思った次第。
正直なところ、ここ数年のLIONVILLE作品においては、楽曲のアレンジやメロディの展開がいまいち突き抜けていないと僕は感じており、誤解を恐れずに言えば、1stデビューアルバム以上の感動を覚えることがなかった。
しかし、この最新作ではキーボードの存在感が特に強調されたことで、キラキラとしたヨーロッパ由来のAOR感が巧みに表現されており、バンドの看板でもあるVocalのLars Säfsundの声も違和感なく溶け込んでいた。
今回はこのLIONVILLEの最新作について、率直な感想を残しておきたい。
まずは最新のMVをご覧頂きたい。
キーボードソロまで用意されたこの曲は、間違いなく本作を代表する1曲である。
また、こちらの楽曲ではサックスのソロパートまで用意されている。
明らかに、本作のアレンジに関するクオリティが突出している証左である。
一体、バンドに何が起こったというのか。
これについてはまだインタビュー記事などを拝見する機会に恵まれていないこともあり、単なる憶測になってしまう恐れもあるため、言及は避けたい。
個人的には、コロナ禍が良い作用をもたらしたのではないかと考えているのだが、果たして真相はまだ分からない。
兎にも角にも、正直なところ、捨て曲が全く見当たらないのだ。
アルバムの構成(曲順)も良く、決してリスナーを飽きさせない。
率直に言って、隙のないアルバムとも言えるだろう。
この曲を聴け!
その中でも、僕が驚嘆したのはタイトル曲「So Close to Heaven」である。
この曲はぜひチェックしてもらいたい。
AOR、特に産業ロックと揶揄されていた時代から、ポップとロックの融合は永遠のテーマになっていたと思う。
そうした中で、この曲は現代AORに対する1つの模範解答である。
特に、中盤のプログレッシブな展開などは彼らにとっても新たなチャレンジとも言えるし、何よりもこれが次回作への大きな布石となっているのだ。
彼らがこの曲をラストに位置付けた意味は、恐らくきっとそこにある。
その昔、イタリアの隣国、オーストリアで活躍した作曲家のグスタフ・マーラーは以上のような名言を残している。
LIONVILLEの最新作と対峙した時、僕はこの言葉を真っ先に思い浮かべた。
彼らほど、伝統の意味を理解しているバンドは他にいないのではないか?と。
ちなみに、この衝撃と余韻はWork of Artの「In Progress」の時にも感じたのだが、要するに、Lars Säfsundは天賦の才に恵まれているという事実だ。
言わずもがな、AORシーンにおける彼の功績は大きい。
そして彼がLIONVILLEにいる限り、将来に向かって、このバンドの魅力が毀損されることはないだろう。
本作「So Close to Heaven」は10年に1枚出るか出ないかの傑作なのだから。
総合評価:95点
文責:OBLIVION編集部
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