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独立ビフォーアフター

会社から独立して3か月が経ちまして、少し気持ち的にも仕事的にもペースが掴めてきた中で感じる事、考えた事を書こうと思います。

そもそも会社員でありながらイラストレーターという経歴の人が珍しいため、この文章全体を直接参考にしてもらえる人は少ないかもしれませんが、やはり不確かものにしないように100%自身の経験から、当てはまりそうなところだけ参考にしてもられば、というスタンスで書こうと思います。


独立して良かった点
まず会社にいた時点での不便が改善された部分を書きます。

クリエイティブ周りの仕事をしている人にとってはよくある話だと思いますが、会社側が仕事の金額感をルール化しづらい結果、見積もりの出し方から評価に至るまで「何時間稼働したか」という、「誰しもが分かるルール」の中に押し込められてしまいがちではないでしょうか?

そして本来なら成果物そのものに加えて乗るはずの「この人でないと出来ない」や「技術的難易度」といった付加価値的なものが場合によっては度外視されてしまったり、更に「仕事が速いという人材的価値」に至っては、まかり間違うと逆に「それしか時間をかけずに済む程度の仕事」と受け止めらえる危険すらありました。

以前にもちらっと書いた気もしますが、会社には色々な職種の人がいて、その中でも多数派であったり、「力を持つタイプ」の職種が出来てしまう事はある程度仕方なくて、「平等に考えた結果の不平等」を受け入れないと組織にいられない事は分かっていますが、自分の知る限り、取り分けクリエイティブな職種の場合、イラストレーターに限らずそこに類するものと認識されるケースが少ないという印象を受けます。

今後また別記事で改めて書こうと思いますが、職種による大雑把な考え方の違いというのは、恐らく連綿と文化というDNAとして先輩から後輩へと受け継がれていく根強いものなので、恐らく「せーの!」で社内全員が意識改革を行うくらいの気概がなければ、意識の高い人がほんのちょっと歩み寄っただけでは焼け石に水で、時々同じような問題意識のある人がいてもまず何も変わりませんし、問題意識を持つ側というのは大抵「弱い方」なので、強い側の職種の人に関しては気にも留めていないケースも多々あります。

結果、昇給のペースは勿論としてその土台となる社内の評価制度に関しても、「自分の目指すキャリア的成長に必要な課題設定と成果」と「会社側がそれを承認出来る課題設定と成果」にくい違いがどうしても生まれ、前者を尊重すれば評価を、後者を尊重すれば哲学をそれぞれの度合いで犠牲にしなくてはいけない、というストレスがありました。

僕個人の事だけで言うならこれに加え、
・自分の比較対象になる人物が社内にいない
・評価する側の人は便宜上近い職域の中から選出されるものの、「イラストレーター上がり」ではない
といった条件も存在するため、評価者も扱いあぐねている事が理解できてしまう点も重ねてストレスでしたが、このねじれと苦悩から解放された事が、自分の感じる独立の最も大きなメリットだったと思います。

今は、手を動かした分お金に還元され、経験が増すごとに自分のプレゼンや説明にも重みが増すためお客様との関係性が良くなり、成果を含めコミュニケーションを大事にした分次に繋がる、と、仕事周りの一挙一動に一貫した意味が生まれた事で、自己評価がシンプルになり、努力のベクトルと哲学が強化された実感があります。

さらに言うと、これは性格にもよるでしょうが、「生活していく」という基準でいくら必要か、いくら稼げば黒字になるか、税金はどれくらいかかるか、といった、会社にいると実はかなりの所までフォローされていたお金周りの事を改めて勉強する機会を得た事で、少しまともな大人になった気もしています。

そしてこれも大きな喜びの1つですが、会社にいる場合には肩書となる職種からはみ出た役割に関して、話が来る以前に自動的に排除されてしまいますが、例えば僕の場合は言葉が達者な点に目を付けてくれた友人がコピーライティングの仕事をくれたり(勿論、普段イラストを描くような額は請求できませんが)と、ルール的拘束が緩くなったおかげで努力とチャンス次第ですが、新たな可能性にチャレンジする周囲からのハードルがぐっと下がった感触があり、おっかなびっくりではありますが、現在41歳の自分の今後にとてもワクワク出来ています。

空いた時間を使ってこのブログを書けているように、自分の裁量の及ぶ範囲が大きくなった事も良かった点です。

最後に、外出がある時以外は基本的に家で作業できるため、満員電車や移動中にある人的トラブルといったストレス源から解放された点を加えると、全体として今のところメリット側がだいぶ優勢で、「独立して良かったか否か」と問われれば、間違いなく良かったと言えます。


大変な点
基本はほぼ、上記の内容と結局は表裏一体のような話ですが、いくつかは予想していなかったものもありました。

よく独立した人から聞く話の中に、「社内コミュニケーションの煩わしさからの解放」「クライアントを選べる」というような「自由のメリット」をよく聞きますし、実際それを目指して独立する人も多いと思います。

ただ僕の手応えとしては、それらは恐らく独立した時点で手に入るものではなく、そこスタートで努力して、それが実を結ぶという形で獲得されるものといった印象ですし、恐らく「社内のコミュニケーション」を煩わしいものとして遠ざけてきた人にとっては殊更難しいのでは?感じます。

また、「良かった事」で書いた内容は全て、基本「仕事がもらえている前提」の話なので、会社から出て自分一人しかいない、後ろ盾のない状態の心細さは常にありますし、仕事に空きが出来た時には積極的に営業活動を行う準備と、営業活動がものになる実力も鍛えておく必要があります。

さらに独立前の僕は「稼働時間=作業時間」として、「独立したら毎月いくらくらいもらえるかな?」と楽観的に考えていましたが、実際には会社時代に別の人に任せていたクライアントとのコミュニケーションを、メールのやり取りだけでなく外出しての打ち合わせも含め「誰にも頼れない」という事は、全て「自分の時間を消費してそれに当てる」という現実が、それこそ仕事の量に比例して増していく事を理解していなかった点が大きく予想外でした。
※ここは単に僕が抜けていた、という話かもしれませんが・・

そしてお金周りに関しても自分の納得感的には充実しましたが、やはり管理に時間がかかります。

僕は友人にもアドバイスをもらい、
・お金の処理をしている時間で手を動かす事で、税理士さんにお金を払っている以上の収入になる
・分からない事があったら聞けるので、不安の解消という意味でも機能してくれる
・個人事業主なので(法人でないので)、料金も割安で済む
といった理由で税理士さんに付いてもらっていますが、それでも仕事の見積もりを出したり、月毎の収入について考えたり、税理士さんに送る書類をまとめたりといった時間は馬鹿になりません。

それと最後に、毎日家で作業する事で意識しないと致命的に運動不足になる危険を感じています。

と、いうのが僕が独立から3ヵ月かけて感じたもの、考えた事です。

読んでくれた方の参考になるかならないかは分かりませんが、結局誰しも自分と同じ人はいないので、まとめてどうこうというお話ではなく、それぞれの段落毎を実例の1つとして見て頂ければと思います。