イラストのディレクションVol.1 提案書編
イラストを描くのはイラストレーターの仕事ですが、ディレクションに関わる方はクリエイティブな職種に限らず割と多いのではないかと思います。
そして扱われる側として知る限り、これが上手に出来る人は本当に少ないと感じる事もあり、今回はイラストのディレクションに関して少し書こうと思います。
つきまして、自分の経験からなるべく確かな事を書きたいと思いますので、基本はクライアントと外注業者(イラストレーター)に挟まれた人にお届けする内容で、かつ「イラストレーターの扱い」を含んでしまうと、僕の口から「僕を大事にして下さい」という内容になってしまうため、今回はあくまで「イラストに関するクライアントとのコミュニケーション」に関して少し書こうと思います。
ただ、あくまで「すごく難しい事」という前提ありきですので、これさえ読めば大丈夫という内容ではありませんが、何か少しでもヒントになれば、というものですので、予めご了承下さい。
また、書いていたらとても長くなってしまいましたので全2回に分けたいと思います。
今回は、提案書を作る時のコツについて、お話します。
1.よくあると思しき考え方と結果の経路
企画に対してイラストを「どういったものにするか」「そのテイストが何故望ましいのか」を、クライアントに説明するための提案書作りにおいて、適切な語彙を得るにはまずイラスト領域に対して深く広い知識が必要でそもそもとても難しいものですが、イラストレーターをアサインする以前にこれをしなくてはいけない立場の人は多いと思います。
僕が今まで見た限りの話ではありますが、イラストをそもそも「見た目のイメージ」と強く認識している事で、提案書にサンプルとして載せるイラストを選定する際、まず手順として「○○ イラスト」と画像検索して、「まずなんとなくで先に絵を探してしまう」おかげで、「後付けで絵の説明」という特殊なフィルターを自ら作ってしまい、本来使えるはずの説明的語彙を自分から遠ざけたり、「間違えないように」と消極的な説明になったりしている人がとても多いように思えます。
そこで、この順序を少し変える事でこの難しさをいくらか解消する助けになるのではないかと考えています。
2.手順を変えるだけで得られるメリット
僕は基本的に絵を自分で描きますが、基本姿勢が「何でも描く」なため、どういうイラストを描くか考える所から仕事がスタートする場合もよくありますので、ディレクションという領域も自分の職域の一部だと考えています。
その際、イラストを創造的な対象として見つつも、その都度適切なものを提案するためには「あくまで企画の延長上にあるもの」という前提を重く心がけており、
・対象ユーザーの心理的・社会的属性、年齢、性別等
・情感を大事にするか、説明としての機能を大事にするか
・企画を引っ張るイメージ作りか、あくまで補佐的な立ち位置か
etc..
少しまとまりはありませんが、こういうビジネス的には本当に当然の内容をまず考え、「言葉」にします。
「絵的にイメージ」する以前にこういった「キーワード」を洗い出す事で自分の描くべきテイストを絞り込んでいくのですが、この順序で考えた方がイラストの役割自体が言葉によってはっきりするため、クライアントだけでなくメンバー間も含めたコミュニケーションを進めていく上でも建設的に働く気がしますし、後付けで考えるより説明の抜け漏れも起こりづらいというメリットもあります。
更にここにその時の企画ならではの要素を足したり、競合に当たるサービスがどういったイメージを使っていて、これに対してこちらの違いはどういうものか、そのためにどういったイラストではどう差をつけるか、というようなものを加えていくと、「アート!イメージ!ドドーン!」と思われがちなイラストというジャンルが、割とロジカルなものとして受け止めやすくならないでしょうか。
つまり
✖イラストサンプルを探す→説明を加える
〇どういった説明をするかを考える→イラストサンプルを探す
という順序です。
まずは説明したいコンセプトを明確にし、A案B案必要であればその振り方の理屈も、イラストを探す前に決めてしまい、言葉の上での意味合いを自分の中に刷り込んでから絵を探す事で、恐らく目の精度にも良い影響を生むものとの思いますし、自ずと説得力も上がるはずです。
3.実は普通の事
イラストは描く人の腕前次第である意味何でも出来ますが、それは「万能」という意味ではなく、コンセプトを全く無視してそれでもなおターゲットの心を鷲掴みにするような事は出来ません。
さらに流行りの線もあれば逆に当然「ダサい」が存在し、理論的な考えの及ぶ範疇という事は逆に「的外れ」も存在し、何を言いたいかと言えば、「そう自由なものでもない」と、普段イラストを描いている身としては思う事も多いのです。
また、ここまでに書いてきた考え方の手順というのは、ちょっとだけ上でも触れていますが、「イラスト」という領域を一歩出たと考えた時には実に普通の事で、正直目新しい内容ではないと思います。
実際に「描く」となれば勿論それは特殊技術ですが、適当なイラストを選んだり考えたりの際に頭の中に必要になる要素は一般的なビジネスに関するまっとうな理解だけだと僕は考えています。
よって、「あくまでビジネスの上での作り物の話をしている」という基本構造に気づくだけの事なのですが、イラストと聞いただけで「アート側の仕事」に自分が浸っているような気になって浮足立ってしまう人が殊の外多いという印象を強く感じます。
我ながら大雑把で、あくまで「ヒント」としての説明に留まっており恐縮ですが、割と結果の大きな差というものは、こういうプロセス中の小さな違いによって生まれるもののように思いますので。
冒頭にも書いた通り、基本はここに書いたものを順守した上でも難しい作業である事が前提ですが、難しいからこそ猶更やりやすさを求める事で仕上がりの完成度は上がると思いますし。
興味を持って頂けた場合は、どちらが後半という事もありませんが、こちらの「ヒアリング編」もどうぞ。
https://note.com/obitadashi/n/n3ab85efe009c