父

父を、父の愛をずっと探している。たぶん一生。父と絶縁したい
母が亡くなった時、私は30歳だった
葬式の間ずっと父が来たり、連絡が来るのではと怯えていた
少し経って生きているうちに一度会ってみようと思った
弁護士の友人に、どうしたら父の現在地が分かるか教えてもらい
役所で手続きをし、発見したので連絡して会うことにした
祖母には言わなかったし、父に祖母に言わないように頼んだ
会った時に、知らない男性だと思った
少し弟に似ているが、見ても声を聞いても記憶になかった
父の家に行った時、父方の祖母もいて、祖母がもっぱらしゃべっていたが
はっきり名言しないが、自分の子供や家族は愛しているが、私の母を「弱い人」と言ったり母や祖母を嫌っているのがわかって恐ろしくなった
母や祖母を憎んでいる人が弟以外にもいる、というのが怖かった
父は「そうかなあ、そうだったかなあ」と曖昧だった
私は恐怖でハンカチとケータイ（いつでも110番できるように）を握ってうつむいていた
それからたくさん写真を見せてもらった
それらを見て両親は離婚するまで少なくとも愛し合っていたこと、父なりに私と弟を愛していた事がわかった
母の結婚写真を1枚もらい、他の写真は何枚か写メらせてもらったが、後に機種変した時に消えてしまい泣いた
父にはもう会わない
たとえ葬式でも
プラスもマイナスも引き継ぎたくない