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スペインでU-13サッカー大会を観て感じた「育成の思想」のはなし

息子が参加したU-13向けのサッカー国際大会を観に行くことができました。

International Carnival Cap 2020
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バルセロナ、バレンシア、セビージャ、ベティス、エスパニョール、レアルソシエダ、イングランドのチェルシーなどなど、スペイン国内のクラブチームを中心に世界トップクラスの選手と試合をたくさん観戦しました。(優勝はバレンシア!)

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プレー技術のことは僕は素人なので解説できることはないのですが(とにかく凄すぎた〜!!)、大会を通してヨーロッパでの育成対象年代に対する愛が溢れる「育成の思想」みたいなものを垣間見たので、僕なりに感じたことをちょっと書き残してみます。

まず、ボール

4号球と5号球の間くらいの大きさで軽量です。表面も柔らかくヘディングもまったく痛くない。しかも、よく飛ぶように反発力があります。

これ、なんでだろう?って最初は思ったんですよね。プロのボールは国によって多少の違いがあれど国際マッチのボールはまあまあ一緒。一昨年にMICというU-12の国際大会を観たときも同様だったけど、日本より明らかに軽くてソフトでよく飛ぶ。息子も「蹴りやすいし、すごい飛ぶ!」って言ってました。

次に、ピッチサイズ

日本では、U-13以降は大人同等の105m-68m、少年用はちょうど半分の68m-50m(60-40も一般的かな?)。今回の大会会場は、その中間くらい。(小学校高学年で11人制をやるときと同じようなサイズ)ゴールサイズは日本と同じで大人規格。もちろんフカフカの人工芝のコートです。
※今回の会場がたまたまかもしれないので、一般論でなければご容赦下さい

つまり、ボールやピッチが「育成年代に最適化」されてるんですよね。これはとっても素晴らしいことだと思いました。この配慮があることで、子供たちは思い描いたプレーイメージをそのまま表現できるんです。まさにプロと同じスタイルのサッカーができるといっても過言ではない! (その理由は以下に書きます)
※参考までに日本のコートサイズは大雑把に2種類のみ↓

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最適化されていることで出来るようになること

育成年代の子供たちの体のサイズや筋力やスピードにぴったりなんです。ボールは軽くてよく飛ぶし、コートは少しコンパクトになっている。

そうするとプロと同じようなサッカーが実現できるんです。(プロと一緒と言っても技術的な差は歴然ですが)ゲームの組み立て方など「考え方が一緒になる」ってことが極めて重要だと思いました。

・シュートエリアが広がる
・パスの距離や球種の幅が広がる(距離も高さ[3D]も)
・ピッチを十分に広く使えるようになる
・ディフェンスにいくときのプレスのスピードが上がる(距離が縮まる)
・1対1 / 1対N / N対N になる局面のバリエーションが多くなる
・縦幅も横幅も大人感覚でポジショニングの選択肢を探す機会が増える

つまり、U-13世代の子供の時から、プロと同じプレーをイメージしながら、「正しい11人制」の経験がつめるんですよね。これならば育成年代の大事な時期に日本とは全然違う経験がつめるのではないかと思いました。

↓の写真は僕が一番好きなパサーのデ・ブライネの例なのですが、この距離感や軌道やタイミングを育成年代から実践させられるのか〜と、唸りながら今回の大会に見惚れていました。

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日本と世界の育成思想の差分

日本では中学生になったら、一気にフルサイズのピッチと重たい5号球になります。いままでは小学生のジュニア年代から一気に切り替わるのって当たり前だと思ってたので、なにも考えていませんでした(思考停止)。。。
でも、よくよく考えると、とんでもない差が出るんじゃないかな?と気付きました。まだ日本では成長の過程である「あいだ」を考慮できていません。

選手個々の成長の差こそあれ、小中学生の間ってプロみたいにフルコートを縦横無尽に走れないし、ボールを自由に扱えないですよね。誰もが大きなサイドチェンジを一発で狙えたり、距離のあるクロスやロングシュートを蹴れる選手って限られますよね。だいたい中1で5号球がちゃんと飛ぶようになるまで、最初のうちは股関節が痛くなりながら練習するイメージです。(僕の経験ではthe修行だったw)

日本の育成年代の基本って(勝手な解釈だけど)、じっくりと大人の骨格と筋力を育てていく、もしくは早熟な選手を起用していく、はたまたダイナミックなサッカーは無理があるからショートレンジのプレーを組み合わせていく、あたりが選択肢かなと。育成年代の選手に対して大人の規格を適用して、選手起用やプレースタイルを適合させるのが、いまの日本の育成年代の取り組みだと思います。(これはこれで成長過程を見るのが大好きだけど)

ヨーロッパ → 選手の身体的成長過程に合わせてピッチとボールを最適化
日本 → ボールとピッチに合わせてプレーや戦術や選手起用を最適化

ちょっと極端ですが、これ↑が「育成思想」の根本的な「違い」に思えました。これがもし事実だとしたら、ヨーロッパはものすごく「players first」ですよね。日本の育成手法だと、大人になったときにやるべき本来のサッカースタイルと違うことを、この貴重な育成期間に費やさなければなりません。

正しいサッカーを理解する(ちょっと極端に言うとプロがそのままお手本) → 理解したイメージを実践する

この当たり前のことを育成年代からちゃんと実現するためには「環境条件」が必要だったんですね。

いらぬこだわりを捨てたい

そんな簡単には日本でこのような環境が整うとは思いませんが、僕の孫のころにはヨーロッパスタイルが当たり前になっててもらいたいな〜w 

いまからでも、キンダークラスや小学校低学年クラスは軽量ボールを使ってあげることなんてできるんじゃないかなーと思ったりしています。ちゃんと蹴れる感覚を養ったり、硬いや痛いみたいな苦しい体験を避けることもできるんじゃないかと思います。なんで「JFAの検定球」に今までこだわっていたのか、意味がないことに気がつきました。
(とはいえ公式戦が検定球ありきなので僕が勝手に変えれませ〜ん)

検定球

おまけ的な話ですが、ヨーロッパのスローインは超テキトーですw。U-13になっても平気でジャンプしながら投げたり、両足がラインオーバーしているのは当たり前です。もちろんノーホイッスル。重要じゃないことには寛容というか、全く気にしてないようです。
育成年代に対して目を向けるべきポイントがすごく研ぎ澄まされています。

そのかわり、最適化によって高度なプレーが実践可能になっているからこそ、戦術レベルや激しさはちゃんと選手に求めています。質も強度もそれはそれは凄まじかったです!ボールもピッチも芝も高次元のサッカーを実現するための条件が用意されているからこそ、高いイメージレベルのサッカーに取り組めているいるように見えました。

そして最後に、観客の観戦姿勢が素晴らしい

観客といってもみんな親兄弟です。 家族からの全身全霊の応援によって会場の雰囲気が絶好調に素晴らしかったです!

「バモス!(がんばれ)」を大声で連呼して、チームチャント(応援歌)を大声で歌って、チャンスやピンチにバカでかいリアクション。そして試合が終わったら息子を抱きしめてキス。

この、サッカーの条件設定もコーチングも応援も育成への思想が成熟している証しだと思いました。選手を育てる環境や思想が、歴史であり文化なんでしょうね〜。日本との差というか世界の壁を感じましたが、ますますサッカーの奥深さが垣間みれて、サッカー愛が深まりました!

いままでは指導方法やプレー機会の創出などに全ての目がいっていましたが、今回は育成そのものの「設計思想」に愛を感じる体験ができました。選手のためにできることって、俯瞰したら幅広く考えられるんですね!

・・・

またサッカーのnote書いちゃった。次は仕事ネタにしますw
長文にお付き合いをいただきまして本当にありがとうございました!

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