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映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督日記:128 バリアフリー版完成

2023/11/24 快晴 9月から制作していた本作のバリアフリー版が完成し、上映会や映画館でお使いいただけるようになった。

バリアフリー版とはなにか。
視覚障害・聴覚障害をお持ちの方、また眼の病気が原因で視野が狭い方、加齢などの要因で聴こえづらい方にも映画を鑑賞していただくためのバージョンだ。
見えない・見えづらい方はスマホアプリUDCastとイヤホンを使い、劇中のセリフや環境音に加えて場面の状況を解説する音声ガイドナレーションを聴きながら鑑賞していただける。
聴こえない・聴こえづらい方は日本語字幕でご覧いただける。この字幕はセリフやナレーションはもちろん、環境音やどんな感じの音楽が流れているかの説明も表示される。そして、このような障害を持っていない方も一緒にご鑑賞いただけるので障壁なし・バリアフリーというわけだ。

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バリアフリーという言葉は、ほぼ一般化されていると思う。建物で車椅子移動に障害がなかったり、点字案内があったり、手すりやスロープがあったりなのだが、映画のバリアフリーというのは自分が思っていたほど認知されていないのかもしれない。

バリアフリー版を作り始めてから、会う人会う人に「今、バリアフリー版作っとるんですわ」と言いふらしてきたのだが、7割の人は一瞬「?」と目が点になってお分かりにならなかった。説明すると「それは素晴らしい」と言ってくれるのだが、こんなやりとりを重ねると本作を広めることに併せて映画のバリアフリーを広めねばならんと思い始めた。

それで昨日から早速バリアフリー版宣伝作戦を開始した。手始めにこれまで上映会を開いてくださった主催者さん約100名にメールでバリアフリー版の完成報告をした。もちろん流行りの”丁寧な説明”を添えてだ。
すると、「待っていました」「仲間にも伝えます」「来春上映会を計画している団体に伝えます」etc、というお返事が来るわ来るわ。また、すでに来年1月、2月の上映をお申込みいただいている主催者さんは早速バリアフリー版に変更してくださった。たった1日で作ってよかったと手応えを感じている。

ところで、自分は「障害者」を「障がい者」と書くことにぼんやりと違和感を感じていた。自分自身も障がいと書くこともあったが何かこう、ひっかかりを感じながら書いていた。ひらがなで表記する理由は、”害の者”ではないという考え方を表したのだろうと思うのだが、それは適切なのだろうか、言葉の綾ならぬ文字の綾の領域で自分に馴染まないものを感じていた。そして、しっかり認識しているわけでもないが、ここ数年、いろいろな印刷物やサイトで障害と表記するところが増えているようにも感じていた。

音声ガイドナレーションの録音風景

そんな思いがあったのでバリアフリー版専門の制作会社Palabraで音声ガイドナレーションを録音した日、スタッフのみなさんと昼ごはんを食べながら自分のモヤモヤを話してみた。すると「当事者の人たちは、『障害というのは社会の側にあるわけで、ひらがなで書いても私のなにかが変わるわけじゃない』とおっしゃる人がいる」ということを話してくれた。

なるほど。社会に障害があるというのは合点がいったし自分自身は社会に障害を感じていないことがわかった。大事なことを教えてもらえた。そしてバリアフリーという言葉は実にうまいこと表現してると思えた上に日本語でもなんとかならんのかいとも思えた。
とまぁ、自分にとってバリアフリー版制作は多くの学習の機会であった。

さて、さらに本作を広めていこう。自分はホントにしつこい野郎で幸せだ。

<上映会サイト(上映スケジュールもご確認いただけます)>
https://saibancho-movie.com/wp/

<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com

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