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「月の影 影の海」小野不由美

十二国記シリーズの1作目。
講談社X文庫ホワイトハートという少女向けの文庫シリーズで発刊され、その後、現在は新潮社から一般文庫として発刊されている。

十二国記は2019年に最新刊が出ている息の長いシリーズ。
日本のファンタジー小説の中で、このシリーズと上橋菜穂子の守り人シリーズが二大双璧だと思っている。

この異世界について、詳細を書かせていただく。
「ー」に挟まれているとこはネタバレになるので、読みたくない人は飛ばして欲しい。

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十二の国がある世界、神が現実に存在する世界、十二国の各王は、各国にいる聖獣麒麟(人間の姿に成れる)が指名することで王になれる。
王がいると国は安定、王は不老不死となり死ぬまで国は安定する。
王が人道に悖ることをすると国も傾く。
麒麟が病にかかり死ぬ、死ぬと王も死ぬ。
そしたら人々は新たな麒麟の誕生と、王の選別が終わるのを待たなければならない。

そこにはもともとの住民たちの他に、中国や日本から人が流れ着く、逆に生まれる前の子供が中国や日本に流れてしまうこともある。
そんな世界観。
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本作はこのシリーズの1作目、主人公の女子高生「陽子」、陽子が突然学校にあらわれた謎の男にいきなり「主人」だと認定され、異世界にむりやり連れていかれるところから物語がはじまる。
読者はまだ世界観がわからないので、陽子と一緒に戸惑いながら、世界感を理解しながら読み進めていく。

異世界で陽子は、様々なつらい目に会っていく、その中で人間として成長していく。
はじめはつらい経験からやさぐれてしまうのだが、楽俊(楽俊)というネズミの姿の青年と出会い、彼のまっすぐな性格と触れ合うことで、今までのつらい経験が化学反応をおこし、彼女を成長させるのだ。

この楽俊、作中では一番の人格者だと思っている。
「風の万里 黎明の空」にも登場し、素晴らしい役割を担ってくれる。
ひとの良心が服着て歩いているような人なのだ!!
ネズミだから服は着てないけど。。

なんでしょう?
異世界を舞台にしているので、その世界観の面白さ、現代日本を舞台にしたら出来るはずがないシーン等の面白さはもちろんあるのだが、一番の見どころは登場人物たちが成長し、精神的に自立し、人を助けることが出来るような人間になっていくところだと思う。

どんな世界に放り込まれても、人がいる以上、起こる出来事や葛藤などはこの世界と変わりがない。
それをどう折り合いつけて納得していくか、どう乗り越えていくか、は不変的なテーマだ。

読んでいて感動を覚える。
非常に残念なのだが、ここまで書いておいて、全然魅力を紹介しきれてない気がする。
未読な人はうらやましい。
何も知らないでこの世界を読めるなんて、変わって欲しいくらいだよ。

作者、小野不由美はすごいよね。
本格推理小説やホラー小説、ファンタジー小説まで書く、非常に多彩な人。
これからどんな本を出してくれるのか。
楽しみでしょうがない。

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