見出し画像

「ヘウレーカ」岩明均

ヘウレーカとは?
アルキメデスがアルキメデスの原理を発見した時、”発見した!!”と叫んだという。
そのギリシャ語が”ヘウレーカ”なのだ。

岩明均は多才だ。
「風子のいる店」も面白かったが、「寄生獣」で話題をさらい、その後「ヒストリエ」がずっと続いており、続きが気になってしょうがない。
本作はきっと、作者がギリシャの歴史に興味を抱き始めた最初の作品なのかと思う。

歴史物だ。
歴史物は基本的に戦争ものだ。
結局ずっと戦争している。
平和に感じる現代でもどこかで紛争は起こっている。
本作でもそんな戦争ばかりしている人間の馬鹿馬鹿しさ、儚さをテーマにしているところがある。

あらすじは。。1巻完結なのであまり多くを語らないようにしようかと。

古代ギリシャ時代の話。
主人公と彼の恋人が住んでいるのは歴史的に代表となるような都市ではなく、その為にローマとカルタゴの戦争において、親カルタゴ派になったり親ローマ派になったりと揺れ動く。
物語の舞台となった時代では親カルタゴ派の勢力が強く、ローマ軍に攻められる。
この町には天才アルキメデスが住んでおり、アルキメデスが考案した装置が町を守っている。
ちなみにアルキメデスはもうかなりの老齢で、少しボケも来ている。

主人公はこの戦火の中、アルキメデスの家に身を寄せることになる。
そこで弟子と勘違いされ、学術的な話をされるのだが、だんだんと知的探求に興味を覚える。
そんな中戦況は変化し、彼はそれに巻き込まれていく。

どことなくライトなテイストで描かれているが、そこは戦争なので敗者達には残酷な運命が待っている。

思い返してみて気づいたが、これは人間の破壊と創造の話だ。

最後に歴史年表が出てくるのだが、そこで読み取れる事実は、勝者は次の戦争では敗者になり、の繰り返しだということ。
栄枯盛衰、はかない歴史の流れによって命を落とす人々と命を奪う人々、それとは反対にどんな民族・どんな国が勢力を持とうとも揺るぐことがない真理とそれを追求する人々。

人間は賢いが愚かで、愚かだが賢い。
こんな小さい都市の攻防戦1つで、人間の業を描いている。
しかも1巻で完結。
すごい作品だ。

https://amzn.to/3pzjEGe


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?