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「鬼切り十蔵」せがわまさき

漫画の紹介。
本作は完結している。

魔女や魔法使いはヨーロッパの伝承。
実際に魔術を研究していた歴史はあるそうで、錬金術は化学のはしりになったとされる。
アフリカなどではシャーマン、呪い師などがそれにあたるのだろう。

日本も近代化される前は、医者という職業に免許・資格は存在しなかった。
誰でも今日から医者をする!!と宣言すれば医者になれて、治療法は漢方を飲ませる他には呪い(まじない)によるものだったらしい。

そんな医者以外で魔女や魔法使いのような存在といえば、日本では陰陽師が有名だ。
映画化もされた夢枕獏の「陰陽師」が一般的には有名かと。
安倍晴明はこういったストーリーが好きな人なら必ず知っている有名人だ。
作品によっていろいろな描かれ方をされている、善人だったり悪人だったりと様々だ。
逸話も多く、狐に育てられた、みたいな話もあってフィクションの題材にするには最適な人物。

本作も安倍晴明が出てくる。

あらすじをご紹介。
主人公の十蔵の兄はどうしようもない人物で、ばくちでは負けっぱなし。
彼が先祖代々受け継いできた宝刀を売り払ってしまおうとしたのが話の発端。
弟の十蔵は実は血がつながっておらず、このどうしようもない兄とは腹違い。
この兄の下にいる可愛らしい妹とは血がつながっていない。
二人は想い合っているのだが、、、

ぼんくら兄が宝刀の封を破ったとたん、中から鬼が出てくる。
この鬼は晴明と闘い封印された蘆屋道満が怨念のあまり変化したもの。
鬼は兄の体をのっとってしまう。
兄のほうはというと、押し出されて妹の体に入ってしまい、なお悪いことに妹の魂は道満に連れ去られてしまう。
また、刀には道満封印の為に妖狐(メス)も一緒にいるのだが、それも解き放たれてしまう。

兄の体を取り戻す為、十蔵と兄(体は妹)、そして狐は道満を追う旅を続ける、という話。
伝奇小説の漫画版って感じがした。

とにかく、和風ファンタジーが好きな人にはたまらない要素がたっくさん出てくる。
十蔵が会得している剣術は、鞍馬の天狗に教わった魂を切る術だったり、犬神が出てきたり、かつての陰陽師合戦が臨場感たっぷりに描かれたり、河童が出てきたりとフルコース。

そして実は主人公達の運命は。。。という壮大な仕掛けが用意されており、驚愕の真相も明らかになる。
その運命をぶち破ることが主人公達に出来るのか?

巻数もそこまで多くなく、きれいにまとまった作品だった。
あと特徴としては、所々で男女の関係が描かれるのだが、昨今の青年漫画のようないやらしさが無いので、物語を純粋に楽しむことが出来た。

このいやらしさの無い書き方のおかげなのか、作者は山田風太郎の忍法帖シリーズの漫画化を手掛けている。
風太郎のエロエロシーンがいやらしくなく描かれているので読みやすい。
これが、山田風太郎ファンも納得の傑作となっているのでぜひ読んでみて欲しい。

これからもどんどん風太郎作品のビジュアル化をして欲しいが、本作のようなオリジナル作品も読みたいのだ。

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