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『Troppo』久しぶりの投稿

鋭意制作中の新作1人用デッキ型カードゲーム『Troppo(トロッポ)』の、テストプレイ用マニュアルが出来ました。ルールの説明以外に、世界観に沿った漫画や文章も掲載される予定です。
今回はその中の、主人公(それは貴方です!)がこの世界の“異様”に気付いた時の一節を載せさせて頂きます。



森の中や洞窟を彷徨い。幾つかの成果をあげて私はまた町に戻ることができた。しかしそれは、こんな短い言葉で語りつくせるほど単純なものでは無かった。

ここは異様だ。

通りの角を曲がった時、丘を1つ超えたとき、そしてほんの一瞬の瞬きの後でさえ私の居場所は不確かなものになる。次の瞬間には自分が何処にいるのかさえ分からなくなるのだ。極めて不可思議なことと言うしか無いが、ここでは空間がねじれ、場所と場所が不確定な繋がり方をしているのだとしか考えようが無かった。これが、町の人たちが私を引き留めた理由だったのだ。
町に戻った私は(確信の無い足取りで)町長の家へと向かった。町長に私の考えを告げ、もっと詳しくこの世界について聞いてみることにした。町長が代々伝え聞いている限りでは、少なくとも数百年のあいだ人々はこの町やその周辺から外に出ていないということだった。それどころか、外界とのつながりも全く無く、彼が知る限り私のような来訪者が訪れることも無いのだという。だが、私と違って町の人たちは町なかなら自由に往来できる。町から遠く離れなければ再び町まで戻ってくることも出来る。その理由は町長にも分からないということだったが、色々と聞くうちに私は町の人たちが“代々受け継いでいる物”を大事に使っているということに注目した。それは資源に乏しい暮らしの知恵ともとれたが、私はそこにこの世界を生き抜くための秘訣があるように思えた。

そこで私は、町長が持つ古いものを1つ譲ってくれるように頼んでみた。想定通り町長は大変に難色を示したが、「鉄くず40となら引換えても良い」という少々無茶な提案で(ここでは本当に鉄が貴重なのだ)『ギルドの証』を頂戴できることになった。また、森には古くから棲む魔女が、盗賊のアジトの奥には彼らの頭目『ミノス』が居るということも教えてもらえた。彼らからも何かの古い『証』を手に入れれば、この世界を自由に移動できるようになるかもしれない。そして、この世界の果てのその先に故郷への出口が見つかるかもしれない。一縷(いちる)の望みではあるが、今の私にはこの仮説に賭けてみるしか術が無い様に思えた…

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