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生命の科学 アーユルヴェーダ ③ 食べ方の科学

緊張せず、リラックスした中で、食べ物に意識をむけながら口を動かし、味わい、舌の上に広がる感覚を楽しむように食べる。そのように瞑想的に食べてこそ、食べ物は正しく身体と心を作っていくのです。
                            ―佐藤眞紀子

薬膳の食べ放題は毒?

 カレーライスの原料であるスパイスには、どれも素晴らしい薬効があります。
 ならば、毎日カレーをたべているインドの人達は健康なのかというと、インドの病院にも病気の人達があふれています。それは、どんなに身体によいものでも、お腹いっぱいに食べてしまうと上手に消化されず、未消化なものが身体に残って毒素のように作用してしまうからなのです。どんなに身体によい薬膳料理であっても、お腹いっぱい詰め込んだのでは意味がありません。
 ですから、アーユルヴェーダでは「ナニを食べるか?」よりも、「いかに上手く消化されるように食べるか?」という、食べ方の方を重要視します。
 消化がうまくいっている時、人は身体に軽さを感じ、けだるさや怠惰さとは無縁で、やる気が湧いてきます。逆に、食べたあとに、お腹が重い、ムカムカする、ガスでお腹がはっている……。これは典型的な消化不良です。
 こういう症状がなくても、お腹が硬くなっている人は少なくありません。お腹を押すと、いつ触ってもソフトで、ゆっくり指が沈みこむようなやわらかさのある状態でこそ、よい消化力が発揮できます。あなたのお腹はどうなっていますか?
 やわらかいお腹で、消化力を正しく働かせるためには、正しい食べ方をすることが必要です。アーユルヴェーダの古典書の中には、食べ方に関して8つのルールがあげられていますので、まずこれを見ていきましょう。

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食事の8つの規則

1:適切な量を食べる
2:温かく、油性を含んだものを食べる
3:食い合わせが悪くない食事をとる
4:前の食事の消化が終わってから食べる
5:早すぎず、遅すぎず、適切な速度で食べる
6:ふさわしい場所によく整えられた食卓で食べる
7:笑ったり、喋ったりせずに、心を集中させて食べる
8:自分の身体に合うように正しく配慮しながら食べる

                 チャラカサンヒターより(Ca.Vi.1:24)


 現代の生活の中で、この8規則の中に少し抵抗を感じるのは7番かもしれません。
 食事は和やかに、笑ったり、お喋りを楽しみながらゆったり食べたいものですね。しかし、古典書の規則では、食事中は黙って、目の前の食べ物に集中して、心をこめて食べる作業をするようにと伝えているのです。なぜでしょうか?

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