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コンパッション 慈悲心を持つ勇気が人生を変える

「コンパッション  
 慈悲心を持つ勇気が人生を変える」(仮題)

という本の出版準備中です。

英語の原題は『A Fearless Heart』。

去年からコマラ・ローデと取り組んでいる、
「コンパッション 育成トレーニング」(CCT)の
メイン創設者のひとりでもあり、

ダライ・ラマの専属通訳を30年務めている
トゥプテン・ジンパ博士の著作です。

慈悲心といえば、宗教的な概念だと思われがちですが、

このCCTでは、

慈悲心は、人間の本性として持っているものだということを
科学的にも検証しながら、

みんなが慈悲心を持って生きる世界を目指しています。

そのための本でもあります。

コマラ・ローデ の「トランスパーソナルコーチング」や、
「自分の直感と繋がる」などを受講し、

その翻訳原稿を読んでいただいた、薮口さんが、
その本の紹介を書いてくれましたので、ご紹介します。


ー『A Fearless Heart』(仮題「コンパッション 慈悲心を持つ勇気が人生を変える』)が私たちに教えてくれることー

『A Fearless Heart』
(仮題「コンパッション 慈悲心を持つ勇気が人生を変える』)は、CCTの筆頭創設者であるトゥプテン・ジンパ博士 によって2015年に上梓された感動的な著書であり、その邦訳が2022年春、OEJ Booksより出版される運びとなりました。

コンパッション育成トレーニング(CCT)は、
スタンフォード大学のCCARE(慈悲と利他主義の研究と教育のためのセンター)で2009年に開発された8週間のトレーニングです。

同書ではCCTのプログラムがつくられるに至った経緯と、その背景となるジンパ博士の人生の物語が語られており、『慈悲心』について今、私たちが改めて考える機会となる良書となっています。

私たちは慈悲心について、意識や行動の両面で十分理解しているにも関わらず、日々の暮らしや社会の中心に置くことができていないーそうジンパ博士は現代社会に生きる私たちの状況について述べています。

同書では、今日私たちが直面する様々な困難や課題についての丁寧な考察が語られます。

私たちは、合理的な現代社会を送る中で、個人の心の問題から家族、友人、組織での関係性、また地域や社会での様々な場面とスケールにおいて、思いやりの欠如がいかに私たちを鈍感にし、苦しめているのかを認識はしながらも、実際にはその影響については軽視しているようにも思われます。

慈悲という、言い換えるなら思いやり、共感、異なる価値観への理解や親切心、そうした誰しもに備わっているはずの最良の資質をその場において欠けたままにしていることで、私たちは様々な意味で自らを困難な状況に置いているのかも知れません。

それは日々、当たり前に目の前にあるために、私たちはどの様にそれらに気づき、より良い対処をして行くことができるのか、それを考えるには、心理学、哲学、社会学、神経科学などあらゆる最新のエビデンスを絡めながら、改めて丁寧にみて行く必要がある様に思われます。

著書の中でジンパ博士は、CCTを創設するに至った背景として、その数奇な人生において直面した様々な場面、慈悲心や勇気をもつことに深く思いを傾けたエピソードを語っています。

そこから啓発された、本来誰もが持ち合わせているはずの思いやりの心を今思い起こし、表に出して行くこと、『慈悲心の筋肉』を育てて行くことの大切さ、小さな慈悲の行動はあなたが考えるよりずっと大きな影響を発揮するとして、慈悲心を実践することが私たちに与える様々な良い影響とその素晴らしい可能性について、様々な項目を取り上げ紹介しています。

ジンパ博士の数奇な人生の一部をここにご紹介します。

中国の侵攻によりインドに亡命したダライ・ラマ法王の後を追って国外脱出したチベットの人々は88万人以上に上り、その大勢のチベット難民の中にはジンパ博士の両親の姿もありました。

難民の多くは、インドとの国境沿いに仮設小屋を移動しながら過酷な道路建設作業に従事することとなります。
幼い子供たちはイギリスの慈善団体が運営するホームに暮らし、時折は両親と過ごすことができました。
ジンパ博士は幼い頃の印象的な思い出として、煤けた仮設小屋の中、母がチベット式バター茶をかき混ぜる音と共に唱える、うねる様な抑揚の四無量心の祈りを聴きながら目覚めるのが好きだったことを覚えています。

慈悲の心はチベットの人々に伝統的に根ざした身近なものであり、ジンパ博士が聞いていた四無量心と呼ばれるチベットの伝統的な四つの祈りでは、慈悲の心についてこの様に書かれています。

『生きとし生けるものが苦しみとその原因から解放されますように』

他の三つは、慈愛、喜びの共感、そして平常心であり、これら四つはいくらあっても多すぎることのない資質だと仏教心理学では言われており、私たち人間に備わっている最良の部分であって誰もが理解できるものであるとジンパ博士は言います。

6歳の頃、ダライ・ラマ法王がホームを訪問した際の出会いは、やがてジンパ博士が幼くして僧侶に心惹かれる要因となり、その後11歳の時、将来の働き手を期待した父の反対を押し切って僧院へ入ることへとつながりました。

その後10年以上を僧院での観想的修養の日々を送りつつ、英語と欧米文学に親しむ機会を得ます。その習熟の飛躍的な成長にはひとりの婦人の深い親切心がありました。
その出会いがなければ英語が切り開いた今の人生はなかっただろうと振り返っています。

それはやがて運命の導きの様に、ダライ・ラマ法王の筆頭通訳者となる経緯へと繋がって行きます。
ダライ・ラマ法王は、ジンパ博士の才能を思い、あえて専任職員ではなく自分自身の研究に集中し、学び続けて独自の道を歩む様にと慈しみ深い配慮をしてくれました。

こうしてダライ・ラマ法王のすぐそばに仕えることによって、慈悲心という人の資質を心から信じて生きることの意味について最前列で観察するという貴重な経験と、海外出張に同行し、マインド&ライフ・ダイアローグなど主要な科学集会を含む学際的探求分野のイベントで英語圏の聴衆に向けた通訳や出版・翻訳などの仕事に30年以上に渡り携わることになりました。

時と共にジンパ博士は、やがて自分の運命とは古典的チベット仏教の伝統を現代の世界に伝える伝道師となることだと考えるに至るのです。

その後、この役割をよりよく満たしたいという思いから、36歳にして惜しまれつつも還俗しイギリスのケンブリッジ大学への進学を決断します。
それは、家族や友人として慣れ親しんだコミュニティとの別れであり、大きな勇気を伴いました。そこにも周囲の人のあたたかい親切心がありました。

そしてケンブリッジ大学で博士号を取得し、スタンフォード大学の教職を得て、哲学・心理学・宗教学の学士・博士号を取得し、現在ではモントリオールにあるマギル大学での助教授の職に就き、また還俗後からは妻と二人の娘と共に暮らし、日常の生活を送っています。

ジンパ博士の数奇な人生の軌跡の中で出会った様々な経験から醸成された願い、それは、東洋の伝統的な仏教の教えと西洋科学との架け橋となることでした。

その先に広がるより大きなビジョンは、
ー宗教を超え、文化を超えて、私たちすべての人間として共通の言語とも言える『慈悲の心』を改めて見つめ、とらえ直すことにあり、義務感からではなく自然な欲求として日常に根付かせるプログラムへと育て、世界へ広げて行くことを目指しています。

修道的な経験と、俗世的な生活の両方を経験することによって、ジンパ博士は私たちに地に足のついた視点から、包括的な素晴らしい方法を示してくれました。

その豊富な経験と知識をもとに、最新の研究に裏付けられた慈悲心を育むことによる様々な恩恵が紹介されており、この素晴らしいトレーニングについての明晰なガイドとなっています。

…………

【目次】

PA R T I  慈悲心が大切な理由
第一章 幸せの隠し玉:慈悲心
第二章 自己受容のカギ:自分に向ける慈悲心
第三章 怖れから勇気へ:抵抗を乗り越える

P A R T II 意識と心の訓練
第四章 慈悲から行動に:意志を動機に変える
第五章 慈悲へと向かう道:意識を集中させて軌道に乗る
第六章 不自由からの解放:自己中心の牢獄から脱出する
第七章 「私が幸せでありますように」:自分自身をいたわる
第八章 「私と同じように」:気づかいの輪を拡げる

P A R T III 新しい生き方
第九 章 さらなる幸福へ 慈悲の力で:より健康で強くなる方法
第十 章 勇気が増すほど倍増、ストレスが減少し自由が拡大する:慈悲心を基本姿勢にする
第十一章 ひとつであることのパワー:世界を慈悲の心で満たすために

…………

『慈悲の心』
それは自身と他者を尊重し、共感し、受け取り、送り合うもの。
一人の思いやりはより多くへと伝播します。
たった一人の変化がその周囲へと波及して行くのです。

この私たちの世界に今、どれほど慈悲が必要とされているでしょうか。

著書の冒頭、ジンパ博士をこんな言葉を引用しています。

「時機を得た考えほどパワフルなものない
(Nothing is more powerful than an idea whose time has come) 」
   ヴィクトル・ユーゴー

ひとり一人の学びと気づき、実践がこの世界をより良くすることへ繋がります。

『A Fearless Heart』
(仮題「コンパッション 慈悲心を持つ勇気が人生を変える』は、きっとあなたの中の優しさと勇気を励起し、力づけてくれるでしょう。

藪口祥子
Sachiko Yabuguchi


OAU
えたに


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