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【マガジン・エイトデイ】「君たちはどう生きるか」と見つめられるスクリーン


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映画をスクリーンで観る機会が
やってきた。
観るというより、宮崎駿さんに
会いに行くというのが感覚として近い。

夏の公開からソワソワしていたのに
今の私で、受け取れるだろうか。
集中力が続かない脳になってるから
座席にずっと座っていられるだろうか。
と、もにょもにょしていた。

前評判が聞こえてこない。
宣伝も目に入らない。
私には必要ないのかな?
とか、思いながらも
評価が聞こえてきそうになると
踵を返すということをやっていた。

夏が冬になっていた。
入ったカフェのテラスに
アオサギがいる。
首をぐにゅっと曲げて
こちらをギロっと見る。
一度首をすっと伸ばしてから
羽根に埋める。
あとは、無関心にうたたねしている。

大きな鳥をこんなに近くで見るなんて。
ドキドキした。
映画を観ていないことを
見透かされたのも、
ドキドキした。

インスタのおすすめがインコに占拠される。
かわいいなあと見てるとますます増える。

5歳が最近は滅多に取り出さなかった
積み木で遊んでいる。

人に会うと、これをどうぞと
石をもらう。

ジャム瓶半分を塗りたくったトーストで
顔をベタベタにする5歳。

何気ない日常が続いて、ある時に
「今なら映画を観に行ける。」と
はっきりとわかった。

映画を観て、出てくる場面にずーっと
呼ばれていたことにようやく気づいた。
だいぶ待ち合わせに遅れた気分で
スクリーンに「ごめん」と呟く。

スクリーンに表現される
宮崎駿(敬称略)は、
すっかり若返っていた。
要所要所に醸し出される
歴代の映画のニュアンス。
少女ではなく
だいぶリアルな男の子が主役。
基本不機嫌な主人公。

守られていたことを知って
「ごめんね」と心を和らげる。

作りこまれた世界の、ひとつ手前の
ラフさが、とても躍動的でリズムを
大切にされていた。
そのかわり異常なほど、
耳に入る音のデリケートなこと。

前情報が入っていたら
これほど聴覚で受け取らなかった。
シャットアウトありがとう私。
まだやっててくれて
ありがとう映画館。

何より会えて嬉しいよ、
宮崎駿(敬称略)

自分の世界の構築を
うやむやスルーとかしてる
時間はさっぱりないのだね。

世界をよくすること
向上させること
洗練させること
暮らしを豊かにすること
目に見えるものばかりに
基準を置かないこと
多角的に捉えること
頭で考えるより感じること
たっぷりの茶目っ気と
必ず差し込む光を見つける

完璧主義の駿(敬称略)が
完璧主義を手放し委ねている。
「これはこれでいいんだ。」と
声が聴こえる。


軽やかに次を見据えている風を
浴びながら、エンディングが
流れる。バグパイプに共鳴し
また、涙で前が見えにくい。

時折混ざる現実の風景は
知識が足りず、全部汲み取ることは
できないけれど、世界のわたしの
理(ことわり)をみせてもらい
駿(敬称略)の歩く道を感じた。

深い闇の中の一路の光と共に。

さっきもまた、アオサギが目の前を
すーっと横切ってこう言った。
「で、お前はどうするんだ?トモダチ」

勝手にバトンをもらい
風切りの7番を手にしていた。
プランはないけど、私も
ワクワクは持ってるのさ。

私も放つよ。

では、また。

果歩


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